赤い封蝋でおなじみ!『メーカーズマーク』の蒸留所を訪れました
小栗旬さん出演のCMでおなじみの『メーカーズマーク』。赤い封蝋が流れ落ちるキャップシールのバーボンで覚えている方も多いことでしょう。スタイリッシュなバーボン『メーカーズマーク』のケンタッキー州にある蒸溜所を訪れました。
メーカーズマーク蒸溜所はどんなところ?
ワイルドターキー、フォアローゼズ、ジムビームと、米国ケンタッキー州のバーボン蒸溜所を紹介してきましたが、今回訪れたのはメーカーズマーク蒸留所。手入れの行き届いた庭園にあるコンパクトな蒸溜所は歩いて見学することができます。
ジムビーム蒸溜所から、ロレットの谷にあるメーカーズマーク蒸溜所までは車で1時間弱、バーボンフェスティバルの会場であるバーズタウンを挟んで、ほぼ反対側に位置しています。蒸溜所が集中する一帯とあって、途中、団地のようなバーボンの大きな貯蔵庫をいくつも目にしました。
ジムビーム蒸溜所では規模の大きさとエネルギッシュな雰囲気に魅了されましたが、メーカーズマーク蒸溜所は対照的に緑豊かな公園のように落ち着いた雰囲気が魅力です。場内には小さな湖があり、ライムストーン・ウォーター(石灰岩層を潜り抜けて湧く水)が湧き出ています。これが『メーカーズマーク』の仕込み水に使われています。
案内にしたがって中に入っていくと高級キャンプ場の管理棟のようなゲストハウスが見えてきました。
『メーカーズマーク』に複雑な味わいをもたらす木樽発酵
私たちの回のツアーガイドは初老の男性。スタートするときに「写真は撮って構わないが、ツアーに遅れないように気をつけてくれ。写真はツアーが終ってから戻っていくらで撮れるから」と言ったと思うと、「さあ行くよ」とどんどん進んで行きます。ゲストハウスを出るとすぐ裏手には蒸溜棟がありました。
ここで原料の穀物を糖化、発酵させ、蒸溜する工程が行われます。
『メーカーズマーク』の特徴は、原料の一部に冬小麦を使っていること。多くのバーボンはモルトとライ麦とコーンを使いますが、ここではライ麦ではなく冬小麦を使うのです。ふくらみのあるまろやかな味わいを生むために、試行錯誤の末にたどり着いたメーカーズマーク独自所配合です。
発酵槽は今では珍しくなった木桶です。木桶には乳酸菌をはじめさまざまな微生物が棲みついており、その作用で発酵液に複雑な味わいを与えると言われます。また、密閉タンクや発酵槽に蓋をして雑菌汚染から守る蒸溜所が多いなかで、『メーカーズマーク』は蓋をせずオープンなスタイルで発酵を進めます。健全な酵母の発酵力を信頼し、できるだけ自然に近い状態で酒づくりをするという方針なのでしょう。
『メーカーズマーク 46』の熟成樽に凝らされた工夫とは?
メーカーズマークでは3年ごとに貯蔵する樽の位置を変えます。気温の高い上段に置かれた樽はどうしてもタンニンが強くなるので、移動することでどの樽もふくらみのある柔らかな味わいになるように仕上げていきます。
また、樽の内側は「アリゲーター(ワニ)の腹」といわれる強く焦がした状態にまでしっかり焼きます。
おもしろいのは上級品の『メーカーズマーク46』の仕上げに使う樽でした。後熟(熟成を終えた原酒をブレンド後に再度熟成させる)に使う樽は、中にフレンチオークの板が10枚据え付けられているのです。これにより一層複雑な木のニュアンスや長い余韻が得られると言います。
『メーカーズマーク 46』や『メーカーズマーク・カスク・ストレングス』など4種類を試飲
ひと通り見学を終えると案内されたのはテイスティングルームです。こうした見学ツアーではショップに併設されたカウンターで試飲することが多いのですが、メーカーズマークは専用の部屋を設けており、セミナースタイルで飲み比べさせます。
用意された試飲サンプルは、ニューメイク(蒸溜したばかりの透明な蒸溜液)、『メーカーズマーク』、『メーカーズマーク 46』、『メーカーズマーク・カスク・ストレングス(樽から出したままの加水していないバーボンウイスキー)』の4点。
ニューメイクとスタンダードな商品を比較することで樽熟成による味の変化を確かめ、『メーカーズマーク 46』と比べることで熟成に使う樽の違いを感じ、『メーカーズマーク・カスク・ストレングス』ではアルコール度数の知ることができるという設計の試飲です。
ツアーガイドは味の違いをしっかり理解してほしいと熱弁をふるい、参加者は真剣に飲み比べます。一般的な見学ツアーでここまでのテイスティングセミナーをおこなうのは、とても珍しいことです。メーカーズマークの生真面目さを感じました。
蒸溜所の美しさは群を抜くメーカーズマーク。まろやかな味わいをぜひ確かめてみてください。