歩いて楽しむ酒⑦バーボンTOPブランド『ジムビーム』

歩いて楽しむバーボン第4弾。ビームサントリー社の基幹商品『ジムビーム』の蒸溜所を訪れました。

メインビジュアル:歩いて楽しむ酒⑦バーボンTOPブランド『ジムビーム』
キュートなローラさんのコマーシャルでおなじみの『ジムビーム』は、ケンタッキー・ストレートバーボンを代表するウイスキーです。甘く華やかな香り、すっきりした飲み口の『ジムビーム』の生まれ故郷は、緑豊かな大草原のなかにありました。

これぞアメリカ「ジムビーム・アメリカン・スティルハウス」

むかし、人気テレビドラマ「大草原の小さな家」で見たような延々と牧場が続く道を走ること30分。ようやくジムビーム蒸溜所の案内看板が見えました。案内にしたがって進むと、遠くに白い壁に「Jim Beam」と書かれた小屋が見えてきました。思わず正面に回ってカメラストップ。広々とした草原にポツンとある小屋は絵になり、記念写真をしたくなります。
素朴で古き良きアメリカを感じさせるウェアハウス
素朴で古き良きアメリカを感じさせるウェアハウス
まもなく「アメリカン・スティルハウス」と命名されたゲストハウスに到着。アーリーアメリカン風の建物の前には、ジムビームの中興の祖といわれるCOLONEL JAMES B. BEAM(ジム・ビーム)氏の銅像がありました。恰幅のいい体躯で、颯爽とハットを投げようとする姿は迫力満点、ひ孫にあたり現在のマスターディスティラー フレッド・ノウ氏を髣髴とさせます。
ジム・ビーム氏は禁酒法が終わると120日間で蒸溜所を建設、『ジムビーム』の製造を開始。以来トップを守り続けている
ジム・ビーム氏は禁酒法が終わると120日間で蒸溜所を建設、『ジムビーム』の製造を開始。以来トップを守り続けている

厳選したコーンをオリジナルの酵母で醸す

ガイドツアーは参加料14ドル。専用バスで工場を巡り試飲もできます。10時からの回に参加したのは20人ほどでしたが、9時半にゲストハウスに到着した時には、すでに中に大勢の人がいて人気の高さがうかがえました。確実に参加するにはネットで予約していくことをおすすめします。
https://www.jimbeam.com/en-us/visit-us/book-a-tour

バスに乗り込んで最初に醸造&蒸溜棟を見学します。 最初の部屋は原料のコーン・ライ麦・モルトの説明から始まります。どの素材も手にとることができるようになっています。

次は酵母の説明です。大きな桶にコーンスープのような色の液体が入っていますが、酵母を培養した発酵液です。酵母はジムビーム独自のもので、昔から使い続けてきたものだそうです。穀物を細かく砕いて煮沸、モルト由来の糖化酵素で澱粉を糖に変えて、適温に冷まして酵母を培養します。
専用の大型バスで見学ツアーに出発
専用の大型バスで見学ツアーに出発
バーボンの原材料を前にガイドが説明を始めた
バーボンの原材料を前にガイドが説明を始めた
原材料の説明が終るとたらい桶に入った黄色味を帯びた粥状の液体を引っ張り出す。これが酵母を培養した発酵スターター
原材料の説明が終るとたらい桶に入った黄色味を帯びた粥状の液体を引っ張り出す。これが酵母を培養した発酵スターター
実際の酵母の培養タンクはこのサイズ
実際の酵母の培養タンクはこのサイズ
酵母の説明が終ると次の工程は発酵です。この工場で使っているのは大きなステンレス製の発酵タンクです。たくさんのタンクが並んでいました。コーン・ライ麦・モルトを破砕して煮沸して糖化液にした後、適温に冷まして培養した酵母を投入すると発酵が始まります。

その先には2種類の小さな蒸溜器が展示されています。バーボンの蒸溜に欠かせないビアスティルという連続式蒸溜器の小型のものと、仕上げの精溜に使う単式蒸留器のダブラーです。このサイズは特別なバーボンを蒸溜する時に使用しているのではないでしょうか。一般品の製造にはもっと大型の蒸溜器が使われています。
密閉式のステンレス発酵タンクが並んでいた
密閉式のステンレス発酵タンクが並んでいた
小型のビアスティル(連続式場蒸溜器)
小型のビアスティル(連続式場蒸溜器)
丸みを帯びた瓢箪のような形状のダブラー。ビアスティルで得た蒸留液を精溜する
丸みを帯びた瓢箪のような形状のダブラー。ビアスティルで得た蒸留液を精溜する
一般製品の蒸溜で使われているのはこの大きな蒸溜器
一般製品の蒸溜で使われているのはこの大きな蒸溜器

新樽の内側を強く焼いて貯蔵熟成

この見学ツアーで説明に重点が置かれていたのは、最初のオリジナルの酵母と貯蔵熟成に使用するバーボン樽でした。バーボンは新樽で熟成させなければなりません。アメリカンオークの樽材は内側を真っ黒になるまで焼いてあります。この焼き加減はバーボン原酒の熟成を大きく左右するため、蒸溜所ごとに独自のレシピがあると言います。

樽の説明が終ると熟成が終ったバーボンを樽から直に汲みだして試飲します。レールの上に置かれた樽を見学者がゆっくりと転がすとダボ穴からバーボンが流れ出します。ツアーガイドがテイスティンググラスで直に受けて、見学者に試飲をすすめ、みんなで回し飲みします。加水していない樽出しのジムビームは、強いキックと華やかで甘い香に満ち、参加者はみな満足そう。それまで見学者の間にあった緊張感が一気に緩みました。
バーボンの甘い香は新樽に由来する。内側を強く焦がして蒸留液を貯蔵する
バーボンの甘い香は新樽に由来する。内側を強く焦がして蒸留液を貯蔵する
ツアーガイドの指示に従ってゆっくりと樽を転がし、バーボン原酒を汲みだす
ツアーガイドの指示に従ってゆっくりと樽を転がし、バーボン原酒を汲みだす
参加者は樽出し原酒のおいしさに大満足
参加者は樽出し原酒のおいしさに大満足

巨大な熟成庫が立ち並ぶ

ここからはバスで熟成庫に移動します。車で数分のところに大きな熟成庫が並んでいました。見学するのは禁酒法解禁直後につくられたもっとも古いスタイルのものだそう。上の階に行くほど熟成は早く進みますが、100年も前に蒸留液のたっぷり詰まった重たい樽を、どのように上の階まで上げたのでしょう。私の拙い英語では聞き取れませんでした。
もっとも古いスタイルの原酒貯蔵庫。こうした建物がいくつも並んでいた
もっとも古いスタイルの原酒貯蔵庫。こうした建物がいくつも並んでいた
中にはバーボン樽がびっしり。ちなみに空き樽はスコットランドなどに送られウイスキーの熟成に使われる
中にはバーボン樽がびっしり。ちなみに空き樽はスコットランドなどに送られウイスキーの熟成に使われる

クラフトバーボンを2杯試飲

最後の工程はボトリングです。一般的な商品はボトリングマシンで詰められていましたが、ジムビームのフラッグシップ商品の『ノブ・クリーク』は手作業で詰め封蝋していました。購入希望者は自分で封蝋してトップに拇印を押したものを持ち帰ることができます。決して安いバーボンではありませんが、ツアーの参加者の半分くらいの方が購入していました。自分だけのオリジナルのお酒を欲しくなるのは、いずこも同じですね。
打栓してキャップシールを封蝋する
打栓してキャップシールを封蝋する
封蝋のTOPに拇印を押す購入者
封蝋のTOPに拇印を押す購入者
通路を進むといつのまにか最初にスタートした「アメリカン・スティルハウス」に戻っていました。試飲カウンターにはジムビーム社の主要な商品がカウンターに並べられ、好きなものを2点試飲できること、試飲は専用のマシンを使うことが説明され、コインを2枚渡されました。私が選んだのは『ベイカーズ』と『ブッカース』、同行したもう一人に『ベイゼルヘイデン』と『ノブ・クリーク』を選ばせて、クラフトバーボン4点をコンプリート。樽出し原酒のほかに贅沢なバーボンを試飲できる約1時間の見学ツアー。人気の理由がよくわかりました。
カウンターにはジム・ビーム社の主要商品がひと通り並ぶ
カウンターにはジム・ビーム社の主要商品がひと通り並ぶ
クラフトバーボン4点が試飲できるテイスティング・マシーン
クラフトバーボン4点が試飲できるテイスティング・マシーン
ショップにはTシャツや小物などオリジナルグッズが豊富
ショップにはTシャツや小物などオリジナルグッズが豊富
■Jim Beam蒸溜所
526 Happy Hollow Rd, Clermont, KY 40110
http://www.suntory.co.jp/whisky/jimbeam/

※記事の情報は2018年11月25日時点のものです。
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