お酒の味はグラスで変わる! ワインを美味しく飲むためのグラス選びとは?
グラスでここまで味が変わるのか!という驚きが体感できるグラスとワインの相性についてご紹介します。
ワイングラスとお酒の関係とは?
実はワインの味を生かすも殺すもグラス次第というほど重要なグラス選びについて、オーストリアの名門ワイングラスカンパニー 「リーデル社」グラスエデュケイターの庄司さんに、定期的に開催している「 ワイングラス・テイスティングセミナー」の方式で教えていただきました。
驚きの体験! グラスでワインの味が変わった
①一般的なグラス
②リースリング/ジンファンデル用
③オークドシャルドネ用
④ピノノワール用
⑤カベルネ/メルロー用
まずは赤白2種類ずつのワインを、それぞれに合ったグラスとそうでないもので飲んでみて違いを実感するというもの。 用意されたグラスは5種類。まずは、白ワインのリースリングを②のグラスで飲んでみます リースリングらしい酸味や果実味がバランスよく感じられ、さわやかな飲み心地です。
続いて、同じワインをラッパ型のグラスに移し替えて飲んでみます。すると驚きの違いが! 一言でいうとかなり酸っぱい。先ほど飲んだときに感じた果実味がほとんどなく、酸味ばかりが際立っている白ワインという印象しか残りません。本当に同じワインですよね??
庄司 同じ白ワインでも、種類によって相性のよさはグラスの形状によって違ってきます。ボリューム感があり、樽香のしっかりしたシャルドネは、ボウル(グラスの本体)がゆったりと広く、口のすぼまりが緩い③のグラスで飲むことでより味が引き立ちます。
③のグラスは②のリースリング用と比べるとボウル(本体)が広く、グラスを回す「スワリング」を数回行うとグラス全体にワイン行き渡り、顔を近づけるだけでいい香りが漂ってきます。スワリングって何のためにするのか今ひとつ理解できていませんでしたが、グラスの縁にワインの膜ができることで香りがより豊かになるんですね。
香りを十分に楽しんだところで、ワインを飲んでみます。ワイングラスの口がゆるく顔の角度はほぼ水平の状態で口の中にワインが入っていきます。先ほどと同じで舌の中央から横に広がっていき、果実味とボリューム感のあるふくよかな味わい。さらに鼻から抜けていく樽香にうっとりします。これはワインそのものの力もあるんしょうか?
ということで、同じようにシャルドネをラッパ型のグラスで飲んでみると… あら不思議。うっとりするような芳醇な香りが感じられず、特徴がなく、奥行きを感じられない白ワインになってしまいました。
庄司 グラスのボウルの部分が小さいことで香りが十分に立っていないため、 奥深さが感じられないのです。白ワインでもすっきり系や濃厚で骨格の しっかりしたものなど様々です。1種類のグラスしかないと本来の味を感じられないこともあります。
②のようなすぼまりが強く、顔が上向きになるようなグラスは酸味が強いもの、③の顔が上向きにならないタイプは、香りが豊かでしっかりしたボリューム感のあるものに向いています。
”赤ワインは大きいグラスで”は思い込み?
庄司 赤ワインは香りが複雑なので白ワインよりはボウルの部分が大きくなっています。ただ、白ワインと同じで、種類によってボウルの大きさや口のすぼまりなど、最適なものが違ってきます
ということで④のボウルに丸みがあり大きく、口のすぼまりが強いグラスでピノ・ノワールを飲んでみます。すぼまりが強いため顔はやや上向きに。私自身はピノ・ノワールの果実味が好きなのですが、普段よりもしっかりと果実の風味や甘さを感じました。これもワインがいいから…ではないんですよね?
庄司 はい(笑)。こちらは2000円台のもので、高価なものではありませんが、 ピノ・ノワールらしい果実味が感じられ、酸味がきつすぎるということはないですよね。
庄司 ピノ・ノワールの酸味が苦手で…という声を耳にすることがありますが、 これはグラスとの マッチングも影響していると思います。ワインを扱っている飲食店でも、 赤ワイン用に何種類もグラスを揃えるのは難しいので、赤ワインはすべて同じタイプのグラスで提供されることも少なくありません。⑤のタイプのグラスは見慣れた形だからなのでしょうか、こちらを使っているお店が多いようですね。ピノ・ノワールを⑤のグラスで飲んで、「ピノは酸っぱいので好きじゃない」と思ってしまっているケースもあります。これは残念ですよね。
庄司 ワイングラスで大切なのは見た目のデザインよりも形状です。ボウルの大きさ、形、口のすぼまりなど微妙な違いによって味に大きな差がでます。今日ご紹介したワイングラスを見ていただくとわかりますが、口が開いたラッパ型はありません。ボウルの部分で広がりを持たせても縁の部分は締まっている。ワインの香りを逃がさないで封じ込めるためにはこの形状が必要なんです。
庄司 万能グラスは…はありませんね、残念ながら。自分の好きなワインの味わいに合わせて、選ぶのがいいと思います。大切なのはボウルの形状。ステム(脚)があるかないかで値段が変わってくるので、ステムなしのカジュアルなタイプでもボウルの形がワインと合っていれば十分ですよ。
ピノ・ノワール好きとしては、汎用性はなくても専用グラスを持っていたほうがいいのか、と悩みまくりました。(その後、ピノ・ノワール用を1個購入したら何度か購入したことのあるワインの味が劇的に変化してびっくりしました) 論より証拠…なのでみなさんも家にあるワイングラスで違う種類のワインを飲み比べてみるとその違いにきっと驚くと思います。
日本酒をグラスで飲むという楽しみ方
庄司 最初に作ったのが大吟醸用グラスで形はリースリングなどに合う白ワイングラスに近い形です。口のすぼまりが強く、顔の角度が上向きになるので、お酒は下先から喉の奥に流れていきます。舌の上で広がらないので、日本酒のアルコール感が苦手な人でも飲みやすいと好評です そして、純米酒ならではの旨味をより感じられるようにと作ったのが 2018年に発売した純米用グラスです。大振りで横長、口が広いタイプです。ワインの時と同じで、顔の角度が水平になり、舌の中央から全体に広がります。これによって純米酒のふくよかな米の旨味を感じることができるんです。
飲みやすい=たくさん飲んでしまいそう…という心配もあますが、吟醸香を楽しむ日本酒も増えているので、グラスで日本酒もぜひ試してみたいとこいろ。 ちなみに日本酒用のグラスの開発は、リーデルの10代目の当主が来日して日本酒の蔵元や専門家と“ワークショップ”をして開発したものだとか。グラスで日本酒も一度試してみる価値はあるかなと思いました。
グラスとワインの相性がここまで大切…とは驚きの連続でした。割れてしまうともったいないから…と手頃なグラスですませているはもったいない!ぜひ、お酒の味が何倍も美味しくなるグラスのマリアージュ、試してみてください。
この方にお聞きしました
庄司大輔
塾講師、レストラン勤務などを経て、1998年に日本ソムリエ協会公認ソムリエ呼称資格取得。1999年にボルドー地方サンテミリオンの「シャトー・トロットヴィエイユ」で学ぶ。2000年リーデル・ジャパン入社、日本人初の「リーデル社グラスエデュケイター」となる
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