うまさ溌剌! 日本酒ソーダ割り

ウイスキーをソーダで割ったハイボール、焼酎ならチューハイ、白ワインならスプリッツァーがあるのに、日本酒はソーダで割るとルール違反のような気がするのはこれいかに? 普段の家飲みで試してほしい、日本酒ソーダ割りの世界へいざ!

メインビジュアル:うまさ溌剌! 日本酒ソーダ割り
ビールはもちろん、レモンサワーやウイスキーハイボールの人気ぶりを見ていると、炭酸ガスを含んだ冷やしておいしい酒が求められているのは確かです。日本酒でも『一ノ蔵すず音』や『松竹梅「澪」』のようなスパークリングSAKEがよく売れています。ただ、このタイプは少し甘いので食事中に飲むには料理を選びます。それに缶チューハイのように安くはないので、パーティやイベントでならいいのですが、毎日の晩酌で気軽に飲むというわけにはいきません。

そんなとき一度試して欲しいのは日本酒のソーダ割りです。冷やした日本酒を冷たいソーダで割るだけで、から揚げや餃子など脂っこい料理もおいしく、カジュアルに楽しめる、日本酒ソーダ割りの出来上がりです。

日本酒をソーダで割ってもいいんだよ

ウイスキーをソーダで割ってハイボール。おいしいですね。 焼酎にレモンを搾ってソーダで割ってレモンサワー。ワインのソーダ割りはスプリッツァーというカクテルで、日常的にワインを飲む欧州ではポピュラーです。ですがなぜか日本酒はソーダで割りません。なんとなくルール違反のような気がして、「杜氏が心を込めてつくった酒だ。そんな乱暴な飲み方をしちゃあいかん」なんて言われそうです。

でも、日本酒のアルコール度数はスタンダードなもので15度前後、水を加えて度数調整をしない原酒には20度近いものがあります。こんなにアルコール度数が高くては、酒豪でなければたくさんは飲めません。ビールは5%、居酒屋で飲むウイスキーハイボールやチューハイも同じくらいで、濃いめでも10度です。巷で人気のストロングチューハイはストロングと言ってもせいぜい9%、日本酒に比べたらかわいいものです。

にもかかわらず昨今の日本酒は濃いものが人気です。理由は、ひと口飲むだけならおいしいからです。デパートの酒売場の試飲販売では、アルコール度数も含め、濃厚なインパクトの強い酒がよく売れます。たくさんの日本酒を飲み比べできる試飲イベントでも、濃い味のものがおいしいと言われるのが常です。

ところがこうしたお酒は、毎日の夕食の時に軽く飲むには重すぎます。多くの方は小さなグラスで2杯(60ml)も飲めば十分と思うのではないでしょうか。そんなあなたに提案です。試しに日本酒をソーダで割ってみてください。すっきりと軽やかに楽しめて、日本酒の料理との相性の広さがさらに広がり、苦手なものがなくなるほどです。
微炭酸がチリチリとほのかな日本酒の味を支える
微炭酸がチリチリとほのかな日本酒の味を支える

軽いタイプ『松竹梅 天』は「日本酒3:ソーダ2」

ソーダ割りの飲み比べ用に選んだ酒は4種類です。 軽いタイプとしてリーズナブルな『松竹梅 天』。香りの高いタイプとして『菊正宗ギンパック』、濃い酒として『日本盛 生原酒ボトル缶』、そしてにごり酒は『桃川にごり酒』です。

では順番に味を見ていきましょう。まずは『松竹梅 天』。渡哲也さんのコマーシャルでおなじみのこの商品は、スーパーで2Lパックで900円くらいで売られているお酒です。ワインでいえば1本500円のチリやスペイン産のものより、もう一段お安いクラスに相当します。アルコール度数は13度~14度と低めで香り穏やか、味わいは柔らかい口当たりと軽やかな飲み口でよくまとまっています。価格を考えるとたいへんよくできた酒です。

これをソーダと1:1で割ってみると、口当たりは丸いものの、炭酸ガスの刺激でほとんどソーダ水のよう。日本酒らしさはあまり感じられません。これでは今ひとつなので、少しソーダを控えめにして酒3にソーダ2で試してみます。すると今度はいい感じです。ソーダの爽快感、さらっとキレて後からうま味が戻ってきます。ガス感はあまりなく舌にチリチリと刺激がある微炭酸というところ。この酒は3:2くらいがおすすめです。
『松竹梅 天』『白鶴まる』『月桂冠つき』などアルコール度数が13度台のものは、ソーダを控えめにした方がまとまる
『松竹梅 天』『白鶴まる』『月桂冠つき』などアルコール度数が13度台のものは、ソーダを控えめにした方がまとまる

香るタイプ『菊正宗ギンパック』も3:2

以前、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で最高金賞をとったこの酒は、独自の酵母を使った華やかな香りが特長です。アルコール度数は14度~15度と『松竹梅 天』よりも1度高くなっています。華やかな香りにはバナナ、リンゴ、メロンなどのニュアンスがあり、蓋を開けると一気にたちのぼります。それは口に含んでも香りの強さを感じるほどです。

この酒も日本酒3:ソーダ2でソーダを控えめに加えた方が味がまとまりました。1:1では味が薄く、炭酸ガスで香りが強調されすぎる印象でしたが、3:2は香りも味も適度に開いて甘さとうま味がボディをつくっていました。
もともと香りが高い酒はソーダが多いと香りがついよくなりすぎるのかもしれない。『菊正宗ギンパック』は2:3くらいが味わいのバランスがよかった
もともと香りが高い酒は、ソーダが多いと香りが高くなりすぎるのかもしれない。『菊正宗ギンパック』は2:3くらいが味わいのバランスがよかった

生原酒は1:1で十分

さて次は『日本盛 生原酒』です。実は私、酒は毎日3合もいただきますが、濃すぎるのが苦手でふだん生原酒は口にしません。今回久々に飲んでみると、当然ながらやっぱり濃い。私には濃すぎます。すかさず1:1でソーダ割り。もともとアルコール度数は19度~20度ですから、2倍に割っても10度弱です。で、このくらいでちょうどよく、ガス感もあり、ほのかに甘い口当たり、後味もキレてうまくまとまりました。
味わいが濃い生原酒は1:1でも十分なボディ感。もっと炭酸を増やしてもいいくらいだった
味わいが濃い生原酒は1:1でも十分なボディ感。もっと炭酸を増やしてもいいくらいだった

にごり酒のソーダ割りは秀逸

試す前から想像はしていましたが、にごり酒のソーダ割りは絶対においしい。今回選んだのは『桃川にごり酒』です。にごり酒らしいボテッとした口当たりと粕の質感のあと、甘すぎず、くどすぎず、ほどよい味のボリュームです。これを1:1のソーダ割りにすると酸味が増したように感じて、ドライな印象が強まりました。香りは立ちませんが、粕がボディをつくってくれるので、ガッツリ系の肉を持て余すこともなさそうです。肉料理に辛口にごり酒のソーダ割り。これは新定番ではないでしょうか。皆さんもいろいろ試して好みを探してみてください。
見た目はマッコリですが味はまったく違う。にごり酒のソーダ割りは超おすすめ
見た目はマッコリですが味はまったく違う。にごり酒のソーダ割りは超おすすめ

  

さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

さけ通信
※記事の情報は2019年2月17日時点のものです。
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