日本ワインの礎マスカット・ベーリーA~川上善兵衛の夢を継ぐ者たち①
注目度は高まるばかりの「日本ワイン」。日本独自のブドウ品種「マスカット・ベーリーA」が農村を豊かにするブドウと言われる理由は?
盛り上がる日本ワイン
日本ワインを特徴づけるマスカット・ベーリーA種
日本ワインの品質向上を目指して2003年にスタートした日本ワインコンクール(Japan Wine Competition)は、今年で17回目、最大かつ唯一の日本ワインのコンテストです。日本ワイナリー協会や日本ソムリエ協会、各県のワイン酒造組合などで構成する実行委員会が主催し、昨年は12の部門に787点が出品されました。
このコンテストの出品数を部門毎に見ると、日本ワインを特徴づけるのがマスカット・ベーリーA種であることがわかります。出品数がもっとも多い部門はシャルドネ種やソーヴィニョン・ブラン種など欧州系のブドウを使った白ワインの部門で147点ですが、マスカット・ベーリーA種のワインが対象となる国内改良等品種の赤ワイン部門は142点と肩を並べています。そしてこの部門で入賞した59点のうち、主としてマスカット・ベーリーA種を使っているワインは49点、およそ8割を占めています。日本ワイン、特に赤ワインはこの品種を抜きに語れません。
目指したのは農村を豊かにするブドウ
善兵衛は祖父と親交のあった勝海舟の元に足しげく通い海外の情報を得ます。そして次第にワインに関心を寄せていきます。農耕に向かない荒れた土地でブドウを栽培しワインをつくって販売すれば小作人たちの暮らしを豊かにできる、ブドウから酒をつくれば米を食料に回せると考えたのです。そして1890年に岩の原葡萄園を開園します。
リーズナブルでおいしい『深雪花』
こうして「日本のワインブドウの父」と呼ばれるようになった善兵衛ですが、農村を豊かにするという当初の目的を忘れることはありませんでした。全国からブドウ栽培やワインづくりの助言を求めて訪れる人々を受け入れ、求められるままに苗木を提供しました。今、青森から熊本までマスカット・ベーリーAが栽培されているのはそのためです。
※記事の情報は2019年4月18日時点のものです。
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