【インタビュー】最後に向かうほどラクをしたい! 漫画家・新久千映先生の家飲みの流儀とは?

女性のひとり酒を描き、ドラマ化もされた大人気漫画『ワカコ酒』でおなじみ、お酒が大好きな新久千映先生にインタビュー! 新久先生流の家飲みの楽しみ方や今ハマっているお酒、最新刊『今夜はアレで飲みたい!』のお話など、イエノミスタイルで連載中の泡☆盛子さんがたっぷり伺いました。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:【インタビュー】最後に向かうほどラクをしたい! 漫画家・新久千映先生の家飲みの流儀とは?

この方にインタビューしました

新久 千映(しんきゅう ちえ)先生

広島県出身・在住の漫画家。2006年に『コミックバンチ』増刊号(新潮社)にてデビュー。主な著書に、『ワカコ酒』『ミカコ72歳』(コアミックス)、『新久千映のねこもぐれ』(集英社)、『新久千映のまんぷく広島』『新久千映のお酒バンザイ!』(KADOKAWA)などがある。

新久千映先生のイラスト

家飲みは自分の成長の機会!?

「新刊の『今夜はアレで飲みたい!』もとても楽しく拝読しました。おうちであんなものやこんなものまで作って飲むという、家飲み派にはたまらない内容ですね。新久先生はいつ頃から家飲みを楽しむようになられたのですか?」

新久「“酒心”ついた頃からです(笑)。実家では夕食時の食卓にお酒があるのは当たり前の光景で、20代はオムレツやシチューなんてしっかりした料理で飲んだりしていました。30代になってからはおつまみ的なメニューに移行してまったり飲む…という感じで、40代の今は適量を楽しめるようになりました」

新久先生のご実家は若い頃バーテンダーをされた経験もあり大のお酒好きだった亡き父上、料理上手な母上と姉上という最強メンバーでいらして、本作や『新久千映のお酒の時間です』(KADOKAWA)などにも愉快でおいしそうなご家族エピソードが散りばめられています。飲み終えた焼酎の瓶に水を入れてすすぎ、水割りのグラスに加えて最後の一滴まで余さず堪能するという父上譲りのワザには「その手があったか!」と唸らされました。

「今はどれくらいのペースで家飲みされていますか?」

新久「基本的に毎日飲んでいます。2回休肝日があった月は、聖人君子になった気持ちでしたね〜」

「毎日! なんて頼もしいお答え…!(歓喜) そんなお酒を愛する新久先生の家飲みルールのようなものがあればぜひ教えてください」

新久「私、その日の最後に向かうほどラクになるのが好きなんです。だから、できるだけ全部作り終えてお風呂も済ませてから1杯目のビールを飲むと決めています。あ、その前にお仏壇に手を合わせるのもお決まりですね。料理は朝のうちに下ごしらえをしておいて、仕事が終わってからは焼く、揚げるなどの仕上げをするって感じで」
 

『今夜はアレで飲みたい!』「朝採りたけのこ 2本煮る」より
酔っぱらって記憶をなくしても翌朝にはちゃんとキッチンが片付けされていてメイクも落としてあって…という描写も拝見した記憶があります。新久先生の漫画はどのコマも整然としていていつも「きれいな漫画だなぁ」と感嘆しながら読んでいるのですが、このようにきちんとしたお心持ちが表れているのですね。

「ちなみに、ご自宅にお酒は何種類くらい常備されていますか?」 

新久「ビールは好きな銘柄を24本の箱買いにしています。あとは焼酎に泡盛、ウイスキー、日本酒、ワインなど、なんでもあります(笑)。家で飲むのは焼酎かワインが多いかな。焼酎は大分の『二階堂』が好きで、冬ならお湯割りとか割りものにします。ワインは常時10本ほど揃えていて、ほとんどが白ですね。最近のお気に入りは、『タルスキー』という熊本の樽熟成酒。ナッツなんかをつまみながらロックでちびちびと飲むのが最高なんです」

「タルスキー、飲んでみたいです。お家でも料理もお酒も幅広く楽しんでいらっしゃいますが、先生にとって家飲みの魅力はどんなところにありますか?」

新久「とてもリラックスした状態でいられることですね。お風呂上がりのパジャマにすっぴんで、例えば激辛のものを食べて大汗かいても気にしなくていい。私にとってお酒は“オフの象徴”なんですけど、まさにオフの状態。おしゃれして家では味わえないものをいただくというお店でのオフ感とはまた別なんです。好きなペースで好きなものを飲んでもよくて、かつ、いつやめてもいい。ちょっとだけ予定外のおつまみを足すとか。それだけに自制心が問われます。一昨年飲みすぎて自宅の階段からすべり落ちてから、去年はけっこう抑えられたと思います。そんなこともあって、家飲みは自分の成長の機会でもあると思っています(笑)」

連載を通して、台所に立つハードルが低くなりました

「続いては、新刊『今夜はアレで飲みたい!』についてお聞かせください。レタスクラブ本誌での連載に描き下ろしを加えた形ですが、改めて1冊の本になったご感想はいかがですか?」

 
『今夜はアレで飲みたい!』
著者:新久 千映
出版社:KADOKAWA


新久「初めて作るものが多かったので、『料理って体力がいる!』と感じました。これまで作ったことがあるものなら2回目以降は手の抜きどころがわかるんですけど、そうじゃないものばかりだったので」

「特に達成感を感じたのはどのお料理でしたか?」

新久「鯛のかぶと割りに大苦戦したりホヤ汁を頭から浴びたりしたのも大変でしたが、達成感という意味では餃子の皮が一番でしょうか。実は私、不器用なもので…」
 

『今夜はアレで飲みたい!』「鯛ずくめのひとり大宴会」より

『今夜はアレで飲みたい!』「ホヤ☆ホヤ☆トゥナイト」より
「丸いはずの餃子の皮がねこちゃんやうさぎちゃんの形になったと描いておられましたね(笑)。レシピを選択する段で、『(粉を)ふるうかふるわないかの選択肢があれば迷わずふるわないのがちえぞうという人間だ』と断言されているのにシビれました! この連載を通してご自身の家飲みに変化はありましたか?」
 

『今夜はアレで飲みたい!』「皮から作るよ 焼き餃子」より
新久「台所に立つハードルが低くなりました。アレ(鯛の頭など)に比べたら簡単♪って感じで、野菜なんかスイスイ切れちゃいます。魚屋さんでもカットされたお刺身じゃなくて皮付きのサクで買うようになったりしたのも連載のおかげかな。それから、ワニや丸ごとの魚など普段なかなか触れることがない食材を使うことで、あらためて命をいただいていることや、これらを食材として食べやすくしてくださっている職人さんたちへの感謝を実感しました。自分で体験してみて『こんなことをしてくれていたんだなぁ』としみじみ思いましたね〜」

「数々の“アレ”で家飲みの経験値がぐいぐいアップされたのがまばゆいです。タイトルの通り、普段もまずおつまみから決めるスタイルが多いですか?」

新久「そうですね。食べたいもの、季節のものを中心に、できるだけ和と洋が交互になるようにしています。買い物に行くのは1週間に1回と決めていて、その前には空になった野菜室などをきれいに拭き上げてリセットするんです。で、買い込んだ食材の中からその週食べるものを大体決めておくという感じですね」

「週イチでリセットってすごい! ちなみに昨夜はどんな献立でしたか?」

新久「昨日はブリの塩焼きと千切りキャベツ、ナスの胡麻油焼き、茶碗蒸しでした。そして茶碗蒸しを温めたお湯で熱燗をつけましたよ、ふふふ」 

「無駄なくおいしく、で最高すぎます。夜に“アレで飲む”ために心がけていることは何かありますか?」

新久「実は甘いものも好きなんですけど、お酒を優先したいので(キリッ)、おやつは基本食べません。朝はフルーツなどで軽めに、昼食は遅めにして夕方にお腹が空きすぎないようにしてますね」 

「健康管理もバッチリで酒飲みの鑑ですね!」

新久「健康管理といえば、某食事管理系ダイエットサポートアプリを利用していて。毎日の酒量を正直に報告していたら、あす◯んの女を泣かせてしまったことがあります(笑)。多めかな、の段階では困り顔だったのが最終的には泣いちゃって」
※食事管理アプリに登場するAI栄養士の通称

「彼女、泣いたりするんですね(笑)。とんだ武勇伝をお聞きしたところで、最後に読者へのメッセージを頂戴できますでしょうか!」

新久「この本にはレシピを詳しく載せているわけではないのに、『作ってみました』『コレ作ってみたい!』などのコメントをいただいてとっても嬉しかったです。『今夜はアレで飲みたい!』という気持ちが1日のモチベーションになってくれたら最高ですね。晩酌の価値付けって人それぞれだと思うんですけど、1日の終わりに誰もがゴキゲンに過ごせるように、この本が参考になれば何よりです。この人おバカなことやってんなぁなんて笑いながら読んだり飲んだりと、お好きなようにお楽しみください」


※記事の情報は2024年1月19日時点のものです。
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