イタリア人の新発想! もんじゃ焼きに合うワインはこれだ!
イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが、在住していたヴェネツィアをはじめ、イタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、イタリア人が教えてくれた、もんじゃに合わせるとおいしいワインのお話です。
初体験! イタリア人ともんじゃ焼きへ
「もんじゃ焼きに合うワイン?」
みなさん、イタリア人はもんじゃ焼きにどんなワインを合わせると思いますか?
さて、彼の実家はシチリア島。ワイン用のブドウ農園を持ち、食通でもある彼は、午前中に築地市場を見物すると、「寿司以外で、日本らしいものを食べたい」とわがまま(?)を言うので、もんじゃ焼きを提案したところ、オーケーとなったのだ。
ビールをおともに、最初は野菜炒めや海鮮焼きなどを頂いたが、そのうち彼も自らヘラを手に取り、「屋内でやるバーベキューだね」とご満悦の様子だ。イタリアでは家の中で鉄板焼きなどしない。いよいよ「もんじゃ」を焼き始めたときのことだ。ふと英語表示もあるメニューに目を留めた彼が、「ワインを頼もう」と言い出した。確かに、メニューには「ワイン」の項目があるのだが、それは大手メーカーが大量生産する日本製ワインのボトルだった。イタリア人の口に合うだろうか? 躊躇していると、
「日本のバーベキューには、日本のワインがいい。シニョリーナ(お嬢さん)、これをお願い」(私が通訳している)
ところが、
「これ、いける」
思わず声を上げたのは、私だった。
意外にもマッチした日本の白ワイン
「うん、いいコンビだ。セミヨンに合うと思った。バッチリだ」
たまたまワインの説明書きにsémillonと表記があったのだ。「セミヨン」は白ワイン用のブドウの品種だ。このブドウからは「辛口」のワインができるのだが、酸味が軽いのが特徴で、時に辛口でもやや甘めの口当たりになる。ボトルの表示をよく見ると、ほかに日本のブドウ品種もブレンドされていた。それにしても、ブドウ品種をみて、即座に相性を見抜くなんて、さすがワインの国の人だ。
イタリア人が教える、もんじゃ焼きに合うイタリアワイン
「もんじゃ焼きに、イタリアワインならどんなものが合うと思う?」
すると、大変興味深い答えが返ってきた。
まず挙げたのは、Zibibbo(ジビッボ)だ。これはシチリア産の白ワイン用ブドウ品種であるが、別名をMoscato d’Alessandria(モスカート・ダレッサンドリア)。そう、実はあの甘口ワイン(デザート・ワイン)を作るマスカットなのだ。そのブドウをシチリアで栽培したものがZibibboと呼ばれるわけだ。が、シチリアではこのマスカット種で「辛口」ワインを作るのだ。ワイン名もZibibboを使っている。Zibibbo di Pantelleria(ジビッボ・ディ・パンテッレリーア)などが有名だ。
「もう一つ、イタリアではなく、アルゼンチンなのだけど」
そう前置きして挙げてくれたのがTorrontés(トロンテス)だ。これはアルゼンチン産の白ワイン用ブドウ品種なのだが、なんとこちらも実はMoscato d’Alessandriaの自然交配種、つまりは Zibibboと同じマスカット系で、いわばZibibboとTorrontésは親戚同士なのだ。さらに、アルゼンチンでもこのブドウを使って「辛口」白ワインを生産する。
この発想は、大変におもしろいと感心した。「甘口ワイン用のブドウで作った辛口ワインが日本の食事に合う」とは。なるほど、辛口ながらも、そこに秘められた「甘み」をもつワインなら、ちょうどワインを日本酒の雰囲気で飲めることに、あとで私も気がついた。なるほど、これなら和食のテイストにも合うはずだ。ワイン王国の人の味覚と目の付け所に、脱帽する思いだった。
「それにしても、鉄板から直接口に運ぶなんて。初めての経験だ。そんなに熱いものならば、ワインはキンキンに冷やしておくことだ。火傷のためにもね」
彼は笑って、そう付け加えるのを忘れなかった。
※記事の情報は2017年10月10日時点のものです。
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