本場ナポリのピザに合うワインはこれだ!
イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが、在住していたヴェネツィアをはじめ、イタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、日本人も大好きなピザに合うワインについてのお話です。
南イタリア出身者がすすめる、ピザに合う辛口の白ワイン
「困っちゃうな。たくさんありすぎて、選ヴィノが難しいね」
*イタリア語でワインは「ヴィーノ」という。
得意のイタリアン・ジョークをかっ飛ばしていたが、
「どうしても1つ挙げるとすれば」
と教えてくれたのが、こちらのワインである。
Falanghina beneventano[ファランギーナ ベネヴェンタノ]
「ファランギーナ」とは、南イタリアを代表する白ワイン用のブドウの品種。とりわけ、ピザの本場ナポリのあるカンパニア州の土着品種として有名だ。なかでもナポリから車で40分ほど内陸に入ったベネヴェント県の生産量が最も多い。beneventanoとは、その生産地「ベネヴェント産」を意味する形容詞だ。実は、マッテオさんの実家がこのベネヴェントにあり、今回の番組でもその土地を訪れる。乞うご期待だ。
さて、この「ファランギーナ」はちょっと面白い背景を持つブドウである。このカンパニア州を中心としたイタリア南部の土着のものだが、元は古代のギリシャ人が植民したとき持ち込んだとされるブドウだ。それがこの地に見事に根付き、絶品のワインが出来上がったとき、その味に惚れ込んだのがローマ帝国時代の皇帝たちだったという。その古代美酒は「ファレルノ」という名で知られており、それに使用されたブドウこそ「ファランギーナ」だったのだ。(現在、この「ファレルノ」を復活させ、新たなワインとして復興させる動きも盛んに見られる)
そんなローマ皇帝をも魅了した「ファランギーナ」から作り出されるワインのお味はというと。ベネヴェント産の特徴は、何といってもレモンを感じさせる柑橘系の香りと酸味である。こう書くと「酸っぱいのかな」という印象があるかもしれない。が、決して強烈な口当たりではない。塩味さえも感じるほどの充実したミネラル分が同時に含まれているので、爽やかに口に広がり、さっと解けるという感覚なのだ。コクは弱め、渋みもなく、軽い感じ。でもフルーツ感、酸味、ミネラル感が充実しているので味わいは深く、すっきりとした辛口白に仕上がっている。ピザに限らず、魚介系のパスタやメインディッシュとの相性も抜群だ。
カンパニア州の辛口白にベストマッチのピザとは
「このワインだったら、どんなピザでもいいんだけど、あえて最高の組み合わせを言うならば」
とつけ加え、このワインに好相性のピザを教えてくれた。それは、
Vesuvio[ヴェズーヴィオ]
古代ローマ時代の都市ポンペイを飲み込んだ火山として有名なヴェスヴィオ山の名前をいただいたピザである。その特徴は、この山の麓で生産される食材、ミニトマト(赤と黄色)、バジル、水牛のモッツァレラ、ペコリーノチーズを乗せて焼くこと。味の濃いトマトと濃厚なチーズの組み合わせが絶品なのだが、Vesuvioはさすがに、現地に行かないと食べられないピザだ。これをすすめてくれた理由は「トマトソース・ベース」ではないこと。マルゲリータやマリナーラなどはピザ生地にトマトソースを塗るが、そうではなく「チーズ・ベース」であることが、ファランギーナとの相性をよくするようだ。「チーズ・ベース」であれば、日本のピザ屋さんでも食べられるメニューはたくさんある。
- クアトロ・フォルマッジ(4種類のチーズのピザ)
- オルトラーナ(たっぷり野菜のピザ)
- サルシッチャ・エ・ブロッコリ(モッツァレラ、イタリアのソーセージ、ブロッコリーのピザ)
「ナポリはカンパニア州でしょ。カンパニアの食べ物には、やっぱりカンパニアのワインですよ」
最後にそうアドバイスをくれた。なるほど、イタリアの食事の基本、「同じ産地の料理とワインを合わせる」という感覚を、しっかり身につけているのだなと感心してしまった。
※記事の情報は2017年10月17日時点のものです。
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