イタリア人の食卓訪問! マンマの家飲みおもてなし(1)
映画に出てくるような、豪快で愛情たっぷり、料理上手なイタリアのお母さん。マンマは子供たちがすっかり大人になっても、家に友だちを連れ帰ったら、ササっと素敵な料理を作ってもてなしてくれるのです。
おもてなしの達人、マンマ・エレナの食卓へ
「こんな時間に、何よ! 急に言われたって、何もないわ」なんて、怒っちゃいます? それとも、
「電話一本くれればいいのに!」と、愚痴ったり、
「その辺で買ってきて!」なんて、コンビニに行かせたり。わかります!
しかし、イタリアのマンマ、ひと味違います。「よし来た!」と腕まくりして、あり合わせの物で、チョチョイと1品、また1品とこしらえて、
「さあ、いい日に来たわよ。このごちそうで、ゆっくりしていって」、なんて飲み会を始めちゃいます。この懐の深さ。えー、本当? なんて思うかも。ですが、この「友達」って、実は僕のこと。そしてその「娘」は、僕の親友クラウディア・ベルジェズィオさんのことなのです。
17年前、日本人男性との結婚を期に来日。その後、在日イタリア大使館に赴任したマンマ、エレナさんとも同居しながら、日本で二児の母となったクラウディアさん。その頃、イタリア語学校の同僚だった私を、ある日の授業後、麻布の自宅マンションに招いてくれたのです。それも急な出来事。なのに、そのときのマンマ・エレナの何事にも動じないおもてなし。感動ものでした。
マンマの手料理の基本、リピエーネの作り方
まずは材料、4人分。
材料
- 大きめのナス 2個
- モッツァレッラ 200g
- パン粉
- バジル
- ホールトマト缶(または湯むきトマト) 300g
- オリーブオイル
- ニンニク 1片
- 塩
- コショウ
「日本人もナスはたくさん食べるから、きっと気にいるわ」とマンマ。料理の仕込みはクラウディアさんが手際よく進めてくれます。
まずはナスを半分に切り、その実の部分に切れ目を入れておく。ここでいきなりマンマのひと工夫。それを茹でます。鍋のお湯に塩を少々して10分ほど。「揚げたりするパターンもあるけど、ここで油を使わないことで、食べ心地が軽くなるのよ。仕事後の疲れた胃にもやさしいわ」とは、泣けるマンマの心遣い。
続いて、茹でたナスを取り出し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。そのナスから、実だけスプーンでくり抜きます。コツは、皮から1cm幅ほどの実は残し、土手を作ること。こうすると、あとで具材を詰めたとき、土手がしっかりして崩れません。(このナスの皮の部分は、あとで器にするので別に取っておいてくださいね)
それから小鉢を用意し、具材を混ぜます。炒めたナスの実、パン粉、賽の目に細かく切ったモッツァレッラ、潰したトマト、刻んだバジル。最後に軽く、塩とコショウをします。すると、こんな感じに。
さらなるマンマ・エレナのひと手間。オーブンに入れる前、リピエーネの上から、残ったパン粉をパラパラと振りかけていました。「こうしておくと、焼いたあと香ばしくなって、もっと食べやすくなるのよ」。はい、こんなさりげない気配り。グッと心、持っていかれます。さらに今回は、特別にシチリア産のドライトマトもトッピング。もう、生でかじりたいです。
もてなし上手なマンマの秘訣
すると、「お客さん来るの、好きだから」。
なんとシンプル。そんな包容力が素敵だ。さらに、それだけではなかった。
「いつ来客があってもいいように、レシピを用意してあるのよ」と。この日、特別に秘蔵の虎の巻を見せてくれた。それがこちら。
ウルウルしていると、
「それより、早くワインを開けましょ」
あっけらかんとマンマ、飲む気、満々。
「このリピエーネには、白でも、赤でも合わせられるわ。白ならば、果実味のあるしっかりしたものがいいわね。今回はシチリア産の白。南のワインはブドウがしっかり熟しているから、軽めでフルーティー、でもコクがある。それに安いのよ」と、ワインのアドバイスもいただいた。日常のテーブルワインの中から、より適切で、良質なものを選んでくれるところが、さすがだ。
そんなことに感激していると、さあ、リピエーネもでき上がったようだ。ちょっと焦げたモッツァレッラとパン粉が、実にいい香り。
Buon appetito! [ボナッペティート]「たくさん召し上がれ」
久しぶりのマンマの料理に、すっかりイタリアに戻った気分の僕。懐かしい話題で盛り上がり、幸せいっぱいです。
そんな素敵なマンマのレシピは、次回も続きます。お楽しみに!
記事の情報は2018年1月9日現在のものです。
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