イタリア男子に学ぶ、モテる家飲み(2)
いかにもモテそうなイタリア男子に、モテる家飲み術を伝授してもらいたい! NHK-Eテレの「旅するイタリア語」に出演中のマッテオさんにお願いして、イケタリアン(イケてるイタリア人)によるイタリア流おもてなしを体験させていただきました。
男性専用の形容詞galante(ガランテ)とは?
イタリア語にgalante[ガランテ]という形容詞があります。普通の辞書を引くと「親切な」とありますが、実は正確ではありません。というのも、日本語にはない限定的なニュアンスが付くからです。詳しい辞書を引くとこうです。「女性に対して親切な」。なんと、男性専用の形容詞なのです。男性が女性に対して「親切な」ことをgalanteというのであって、その逆では使われません。
このようにイタリアの男性は、小さい頃からgalanteであることを教えられます。「男の子は女の子に優しく」、「母親を大切に」、そして「好きになった女性には命をかけて(こりゃ、ちと古いかな)」のように躾けられ、やがて「家族への愛」、「他者への思いやり」、「弱者への施し」と、より広範な「優しさ」を身につけて大人になるのです。このような、老若男女、すべての人への「優しさ」は、gentile[ジェンティーレ]と形容しますが、これは英語の「ジェントルマン(紳士)」の語源。なんとなく「優しさ」の微妙なニュアンスの違いが、わかりますよね。
さて、マッテオさんもこのような「優しさ」の伝統の中で育った男子の一人。今回のテーマである「イタリア流粋」のおもてなしも、確かにこのgentile、かつgalanteな気配りや愛情が根本にあるようです。そう思うと、次はどんな風にもてなしてくれるのか、益々楽しみになりますね。
ラディッキオという野菜を使います
イタリアで「ラディッキオ」といえば、何といっても北東部のヴェネト州産。中でも、トレヴィーゾという地域のものが有名で、それが「トレビス(仏語)」という名の由来です。このトレヴィーゾ産ラディッキオは、イタリアの冬の風物詩とも言える味覚で、ちょうどこの2月に入って収穫のピークを迎えます。現地ではその収穫風景が毎年テレビのニュースでも取り上げられるほど親しまれています。こうしてヴェネト産のラディッキオは、この時期一斉に各地の市場に出回りますが、最近では日本にも輸入され、結構手に入るようになりました。
そこでマッテオさん、次の料理にはこのイタリアの「旬の味」を用意してくれたというわけです。
「ラディッキオは、生でも食べられるよ。でも、ちょっと苦味があるんだよね。その苦味が、リゾットにするとコクが出て、美味しくなるんだ。ちょうど今日は寒いし、温かいリゾットで和んでほしいな」と、マッテオさん。その心遣い、「優しさ」にあふれていて、いきなりうれしいです。
作ります!
材料
- 生米(カルナローリ種) 200g
- 赤ラディッキオ 250g
- 赤玉ねぎ 1/2個
- ゴルゴンゾーラ 50g
- 赤ワイン 1/2カップ
- パルメザンチーズ 30g
- バター 20g
- オリーブオイル 適量
- 塩、コショウ 適量
「お米は、イタリア産のリゾットに合う品種がおすすめ。日本で手に入りやすいのは、このカルナローリ(Carnaroli)という種類。輸入食材店でよく見かけるよ。なければ、日本のお米でもいいけど、アルデンテにしにくいね。日本のお米なら芯を残さずに、柔らかくして、おじやのようにした方が合ってると思う」とは、マッテオさんのアドバイス。
そしてここでも、イタリア流のこだわりが。「玉ねぎは、リゾットの色に合わせて選んだよ。ラディッキオの赤、ワインの赤、出来上がりのリゾットも赤色になるから、玉ねぎも赤にしたんだ。でも、味は変わらないから、なければ無理に赤にしなくていいですよ」。やっぱり色合いを考えています。モテポイントですね。
さて、では早速調理開始か、と思いきや、マッテオさん、いきなりどう見てもサイズ・オーバーな大鍋を取り出してきました。
「リゾットには出汁が必要だよ。時間がなければ、インスタントのコンソメでもいいけど、今日は本場の味をじっくり味わってほしいからね」と、本格的に出汁を取るところから始めてくれました。
◆だしをとるための材料
- 玉ねぎ……2個
- にんじん……2本
- セロリ……1茎
まず、大きめの鍋を用意します。ここに玉ねぎ(半分に切ったもの)、にんじん、セロリを入れたら、鍋いっぱいに水を満たします。それを火にかけ、沸騰してから1時間ほど煮込みます。十分に煮込んだら、ザルで野菜を濾して、出汁を取り出します。塩を少々加えて、味を整えておきます。
このようにだしを仕込んだら、リゾット作りに入ります。まずラディッキを水で洗います。そして、細かく葉を刻んでいきます。こんな感じに。
リサ「材料にムダを出さないってところが、素敵ですね。切り方もきれいで、愛情を感じます」
実際こういうことって、あまり生真面目にやると「細かい人」とネガティブに取られがち。しかしリサさんには、そこがポジティブに伝わっていますね。細かさを「優しさ」として伝わるよう、マッテオさんの仕草はさりげないのです。これが「イタリア流粋」というもの。家飲みの参考にしたいですね。
さて、野菜を切ったら、それを鍋に入れ、オリーブオイルで炒めます。まずは玉ねぎから。全体に火が通ったところで、ラディッキオを加え、塩少々をして混ぜ合わせたら、このまま数分間炒めましょう。
ここで、マッテオさんのワンポイント。
「米は洗わないで。洗うと、米が水を吸ってしまって、出汁が染み込みにくくなっちゃうよ」
なるほど。リゾットは出汁でじっくり煮込む料理ですものね。
さあ、生米を投入したら、野菜と一緒にキツネ色になるまで数分間炒めます。米が色づいたら、ここに赤ワインを加えて、蒸発させます。
「このぐらいの量で大丈夫だよ」と、マッテオさん。
煮込みながら水分が蒸発して、出汁が減ってきたら、減った分だけ残りの出汁を足すようにします。それを繰り返しながら20分ほど煮込みます。その間、定期的に鍋の世話をしながら、過ごします。こんな感じで。
出来上がったリゾットを器にもり、温かいうちにゴルゴンゾーラをトッピングして、溶かし込むようにしていただきます。
マッテオ「このリゾットには、コルヴィーナ種を使ったヴェネト産の赤を用意したよ。イタリアでは、”料理とワインの産地を合わせる”という組み合わせの基本があるよ。このリゾットは、ヴェネト産のラディッキオを使ったヴェネト料理。するとワインもヴェネト産で合わせると、相性がいいというわけさ」
リゾットを作る過程で、「色を合わせる」というこだわりを見せてくましたが、さらにワインとの組み合わせにも、イタリア流の基本があるのですね。モテ料理の秘訣と言えましょう。
モテ料理の出来栄えは?
マッテオ「ゴルゴンゾーラには、ピッカンテ(辛口)とドルチェ(甘口)とがあるんだけど、今日はドルチェを使ってみたよ。ドルチェの方が、溶かしたときにクリーミーさがアップするんだよ」
イタリアでも、リゾットは決して高級料理ではなく、日常の家庭料理です。旬の野菜を使ったり、冷蔵庫の残り物を活用したり…。だからこそ、各家庭の工夫が込められています。そこに人は感動を覚えるのかもしれませんね。すっかりリサさんも、マッテオ流の家飲みの温かさに溶け込んだようです。
さあ、一品目「イカとセロリのサラダ」に続いて、二品目にこのリゾットをいただきました。実は、これでお腹はかなり満たされているのですが、マッテオさんはさらに、三品目を用意。ところが、驚き。これが不思議なほどにスイスイ食べれてしまうのです。一体どんな料理でおもてなししてくれたのか。次回をお楽しみに!
※記事の情報は2018年3月19日時点のものです。
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