イタリア人ジェラート職人が教えてくれた! アイスに合うお酒はこれだ(1)
組み合わせポイントは、「ポリフェノール」と「チョコレート・リキュール」にありました。
イタリアでは、ジェラートにお酒を合わせるのは常識だった!
「イタリア人に直接教えてもらう料理やワインは、やっぱりひと味違いますね。ほんとに美味しくて、驚きの組み合わせなんですよ。教えてもらったパスタは週1で作っています(笑) それにどんなワインを合わせようかなって、最近は悩むぐらい」
その真剣な表情は、もう玄人はだしです。
「でも、毎回思うんですけど、ワインのおつまみって、だいたい塩っ辛い系のものですよね。オリーブとか、チーズとか、生ハムとか。甘いものって、やっぱり合わないんですかね。デザートとか、ジェラートとか…」
はっ、はっ、何を言ってるのリサさん、まだまだ素人だねえ。ワインに甘いものが合うわけがないじゃないか、と笑い飛ばそうとしたとき、私の脳裏にまるでフラッシュバックのように、ある光景が思い出されたのです!
それは、私がトリノに近いアルバという町の、ミシュランで星をもらっているレストランのソムリエさんと一緒に食事をしたときのこと。一通りの食事を終えて、デザートに向かおうとしたとき彼はこんな注文をしたのです。
「今日のシャーベットとウォッカを持ってきてくれ」
そんなメニューは、もちろんありません。ただ、彼の思いつきで言っただけのこと。親しい店員さんなので、洋梨のシャーベットとウォッカを1杯持ってきてくれました。すると、彼はおもむろにシャーベットにウォッカをかけて、ガシャ、ガシャとかき回し、スプーンで一口頬張ったのです。
「じつは、これがたまらなく好きなんだ」
なんともリラックスした、彼の嬉しそうな顔が忘れられません。リサさんの一言で私はそのことを思い出し、「ジェラートとお酒」の発想もありなんじゃないかと思い直したのです。
そこで、私の友人のジェラート職人アンドレアさんにアドバイスを求めました。彼のお店は、上野の不忍池の近く。添加物を一切使わない「美味しくて健康的なジェラテリア」として地元の人たちに愛されています。
アンドレア「もちろん、ジェラートにお酒を合わせることは可能だね。イタリアじゃあ、常識だよ。ただ、組み合わせには注意が必要だ。まずは基本の組み合わせを覚えて、それから自分なりに試してみることだね」
そう言いながら、アンドレアさんは、おすすめのジェラートとそれに合わせるワインやリキュールを丁寧に見つくろって教えてくれました。
そんなアンドレアさんの「虎の巻」をたずさえて私は、リサさんと、もう一人、いつもカメラを担当してくれるカルアさんの3人で、その検証に踏み切ることにしたのです。 アンドレアさんがリストアップしてくれた、ジェラートに合うお酒を揃えて、いざ、実験! じゃなくて、実食!
ジェラートと合わせるなら、この組み合わせがテッパンだ!
虎の巻その1:ポリフェノールを重視すべし
アンドレア「チョコレートやベリー系(ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ等)のジェラートには、その素材にポリフェノールが含まれているものだ。ポリフェノールといえば、赤ワインにも豊富に入っている。そのポリフェノールがおいしさの“つなぎ”になるのさ!」
そこで私たちはまず、チョコレートのジェラートに赤ワインを合わせてみました。
「だんだん慣れて、違和感がなくなってきました。ジェラートが溶けてからの方がよく合いますね。赤ワインの渋みや酸味がチョコでコーティングされたようで、ちょうどウィスキーボンボンの感覚になってきましたよ。これはお酒好きにもぴったりですね」
さて、私もいただいてみることに。なるほど、チョコもワインもしっかりその味を感じるのですが、ちょっとずつ互いに変化しています。特にチョコの甘みが消えているのがおもしろいと思いました。イタリアではよくジェラートにバルサミコ酢をかけることがあるのですが、そのとき、ジェラートの甘みが和らいで、コクと酸味が増し、結構な分量を食べられるようになるのです。それと同じような効果がうかがえました。これ、絶対アリですね!
続いてベリー系のジェラート、今回は「ブラックベリー・シャーベット」に赤ワインを合わせてみます。
私も検証を。まず一口。うん、果実味と柔らかい酸味が口に広がって、爽快感がアップしています。互いに引き立て合っていますね。ワインは果実味を増して、シャーベットにはコクと香りが加わってまさに相乗効果です。リサさんの言う通り、このまま夏向きのカクテルとしても楽しめます。この意外性はおすすめです。
さて、ここでアンドレアさんがおすすめをしなかった、ミルク系のジェラートに赤ワインを合わせてみます。もしかして、意外な発見があるかも!
ワインを注ぐと、混ざり合って、薄いピンク色に。これも見た目いい感じですよ。では、実食!
「うーん、食べられないことはないけど…」とリサさんはこの表情。
私も一口、口に運んでみます。ワインの渋みと酸味がミルクの甘みに溶け合わず、ぶつかっている感じ。酸っぱい牛乳の印象です。これは、おすすめできません。
というわけで、やはりアンドレアさんのアドバイスの通りでした。赤ワインに合わせるなら、チョコレート系、ベリー系のジェラートです。ちなみに、赤ワインは通常、冷蔵庫などで冷やしませんが、ジェラートにかけるならば、冷たくすることをおすすめします。ぬるいと、ジェラートがすぐに溶けてしまいます。
虎の巻その2: チョコレート・リキュールを活用すべし
アンドレア「ジェラートに合わせるお酒なら、チョコレート・リキュールがテッパンだ。チョコレート系、ミルク系、カスタード系なら何でもOK。ただしシャーベット系はやめたほうがいいぞ」
そんなことで続いては、アンドレアさんのイチオシ、チョコレート・リキュールを合わせてみます。チョコレート・リキュールは、イタリア産のものはあまり見かけません。「これはお隣のオーストリア産なんだけど」とアンドレアさんがすすめてくれたのが、こちらのチョコレート・リキュール。イタリアでも、これが多く使われているとか。お菓子やケーキの隠し味として、よく利用されているそうです。
まずは、チョコのジェラートに。「トロッとしていて、かけやすい」とリサさん。
私もいただいてみることに。本当だ、大人のチョコに変身しています。チョコにチョコを足しているので、まずはコクが増していますね。さらにリキュールのアルコール感が加わって、本来のジェラートにはなかった風味や爽快感が生まれています。食後の満腹感でデザートは無理かな、と思った人、この組み合わせならあっさりいけそうですよ。テッパンと言うだけあって、これはアタリです。
さらに、このチョコレート・リキュールをミルク系ジェラートに合わせてみます。
私も試食してみますと。先ほどはチョコとチョコを合わせて相乗効果が出た感じですが、ミルクとチョコの組み合わせは、互いを引き立てている感じです。いずれの場合も、お酒を加えると、ジェラートが「食べやすくなる」という共通点が見られます。アンドレアさんのアドバイス通り、チョコレート・リキュールは様々なジェラートに「食べやすさ」というメリットを与えてくれますよ。甘いものは苦手という方こそ、ぜひお試しください。
さて、ここまで赤ワインとチョコレート・リキュールで試してきましたが、さらにアンドレアさんは「虎の巻」ならぬ「秘伝」を教えてくれていたのです。それは「イタリアならではのお酒」を使うこと。これが驚きの味の変化を見せてくれるのです。次回、じっくりレポートしますよ。どうぞお楽しみに。
※記事の情報は2018年9月4日時点のものです。
- 1現在のページ