お酒好き必読! 知られざる「ごまパワー」に迫る

各メディアをはじめ本サイトの人気連載コラム「老けない人は何を飲んでいる?」でもおなじみの管理栄養士・森由香子さんに、今回「家飲みごま部」が特別取材! ごまの魅力やカロリーについてのお話しなど、気になるごまのアレコレについてお聞きしました。

ライター:家飲みごま部家飲みごま部
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「ごま=健康にいい」というイメージは、誰しもが何となくでも持っているのでは? 実際、あの小さな粒の中にたくさんの栄養素が含まれ、肝機能の強化やアルコール分解促進などさまざまな効果があると言われています。そんなごまの魅力について、イエノミスタイルでも健康コラムを連載している、管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の森由香子さんに「家飲みごま部」がインタビュー。カロリーや摂取量の目安など、気になるごまのアレコレについても答えてもらいました!


家飲みごま部とは?

ごまは元祖スーパーフードだった!

—ごま塩、ごまだれ、ごま和えなどなど、ごまは日本の食卓になじみ深い食品ですが、大昔から世界中で食べられていたようですね。

「数千年前に、原産地の熱帯アフリカから世界に広がり、日本では縄文時代後期の遺跡からごまが出土しています。日本でごまが食用として利用されるようになった背景には、6世紀中頃の仏教伝来が大きく影響しているという話ですね。仏教では動物の命を絶つ殺生が戒められているので、その代用として栄養価の高いごまを精進料理や懐石料理に使い、栄養をとっていたようです」

—古来の健康食、今で言うスーパーフードとして注目されていたんですね。具体的には、どのような成分がごまに含まれていますか?

「たんぱく質に脂質、食物繊維も若干入っていて、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン……いろいろな栄養素が入っています。ビタミンAが少なくて、ビタミンB12とビタミンC、ビタミンDがほとんど入っていない、くらいでしょうか。他の種実類に比べてもカルシウムは特に多く、カルシウム、マグネシウム、ビタミンKといった、骨粗しょう症予防の成分になる栄養素が比較的多く含まれているのが特徴的です」

—ごまというとセサミンのイメージが先行してしまい、カルシウムのイメージはあまりありませんでした。

「大さじ1杯のごまで108mgのカルシウムがとれます。カルシウムは1日650mg以上とることが推奨(30~49歳男女)されているので、大さじ1杯でその6分の1がとれるのは大きいですよね。1年に一度行われている国民健康・栄養調査で、日本人は毎年カルシウムの摂取が足りないという結果が出ているのですが、カルシウムって体内の知らないところで意外と活躍しているんです。例えば、アクの強い野菜やコーヒー、紅茶、緑茶などには、尿路結石の原因となるシュウ酸という成分が入っていますが、シュウ酸はカルシウムと結びつくとシュウ酸カルシウムになって外へ出ていきます。でも食事からのカルシウムが足りないと、シュウ酸が体の中に吸収されやすくなるので、尿路結石になりやすくなってしまいます。コラーゲンやビタミンCも、とりすぎると体内でシュウ酸になることがあるので、カルシウムは非常に重要です」

—他に重要な成分とは?

「抗酸化酵素の成分であるセレンも多いですね。遺伝子を傷つけて老化を早める活性酸素の毒性を消去してくれるので、アンチエイジングの効果も期待できます。抗酸化作用のあるビタミンEもあり、セサミンと共に働いて強力に活性酸素を取り除いてくれます。あとは脂肪酸ですね。ごまの成分の半分を占める脂質のほとんどが不飽和脂肪酸、特にオレイン酸とリノール酸が多いんです。コレステロールを上げにくい、と言われていますが、リノール酸についてはとりすぎるとアレルギーの発症につながったり、善玉と言われるHDLコレステロールまでも下げてしまうので、とりすぎには注意です」

セサミンが二日酔いに効く理由

二日酔いイメージ
—ごま、健康、と聞くとやはりセサミンが有名ですが、そもそもセサミンにはどのような効能がありますか?

「ごまの抗酸化成分を総称して“ゴマリグナン”と言いますが、その50~60%を占めるのがセサミンです。セサミンは胃腸で分解されず、肝臓とつながっている門脈で吸収されるため、直接肝臓に作用します。肝臓はいろいろな栄養素を代謝している“化学工場”で、老化現象や生活習慣病の原因につながる活性酸素の発生率が高いとされていますが、セサミンはその活性酸素を除去する働きをするので、肝機能の強化に有効と言われています。また、コレステロールにも作用し動脈硬化予防にも効果があるほか、脂質代謝改善作用もあります」

—お酒好きにうれしい作用もあるんですよね。

「お酒を飲んだ時にも、アルコールを無毒化するために肝臓で代謝が行われますが、その時にどうしても活性酸素が生まれるんです。その活性酸素をセサミンが除去してくれるという働きがあります。あと、セサミンにはアルコールの分解を促進する作用もあります」

—それで二日酔いや悪酔いしにくくなると言われているんですね。栄養学的に、ごまと相性がいいとされるお酒はありますか?

「相性と言いますか、足りない栄養素をお互いに補給し合うということであれば、ごまに含まれていないビタミンC入りのお酒はいいかと思います。今ブームになっているレモンサワーなどですね。ごまにはビタミンEが含まれますが、ビタミンCとビタミンEはお互いに協力し合って働くという効果があります。どちらも活性酸素を除去する働きが強力にある抗酸化ビタミンで、お酒を飲んで発生した活性酸素を、ビタミンCとビタミンEとセサミンが協力してやっつける、肝臓を元気にしてくれる、ということは言えるかもしれませんね」

—おつまみで考えた時、ごまと組み合わせて、セサミンの働きがよりよくなるような食材はありますか?

「セサミンはポリフェノールの一種なので、同じポリフェノールを含む食材(野菜、豆類ほか)と組み合わせると相乗効果があります。ポリフェノールの効果は2~3時間しかないと言われているので、たくさんポリフェノールがあった方がいいかと。細かく言えば、お酒の席では最初と真ん中と終わり、みたいに少しずつ時間差でとった方がポリフェノールの効果が持続するかもしれませんね。ポリフェノールでいうと、赤ワインもいいですね。あとは、ビタミンAやビタミンCやビタミンEが入っている緑黄色野菜などと一緒にとると、アンチエイジングとか抗酸化効果は強まると思います」
\教えて、森さん!/

ごまの栄養、気になるQ&A


Q.ごまのカロリーは高いの?
A.「乾燥ごまは大さじ1杯(9g)で52kcal。ちょっと高い印象ですが、種実類は50%くらいが脂質なので、みんな高いんです。逆に、少量でカロリーがあるので、食欲がなくなって栄養をとりづらいお年寄りや、夏場など食欲がないけど体力をつけたい時にいいと思います」

Q.糖質制限中でも食べても良い?
A.「糖質はあまり入っていないので、食べても大丈夫です」

Q.1日の最適な摂取量は?
A.「カロリーも脂質も高いので、適量がベターです。多くて大さじ1杯~2杯ですね。でも、ビタミンEやカルシウムなどの重要な栄養が手軽にとれるので、少なくとも1日に小さじ1杯くらいはとった方がいいと思います」

Q.ごまの栄養を効率よくとるには?
A.「すりつぶしてから食べることですね。粒のまま食べる場合は、消化されずにそのまま出ていってしまう可能性もあるので、よく噛んで食べましょう。一番吸収にいいのは練りごまです。私は練りごまをよく使いますが、お味噌汁の中に、食べる時にちょっと入れて溶かすとコクが出ておいしいですよ」

Q.体にいいごま料理は?
A.「ブロッコリーのごま和えや、たけのこのごま味噌炒め、魚の利休焼きなどはいかがでしょう。ブロッコリーとたけのこはシュウ酸が含まれているので、ごまと合わせることで尿路結石予防になります。ゴマに入っているカルシウムは、魚に多く含まれるビタミンDがあると体の中への吸収が高まりますので、魚を食べる時にはごまを使うといいですよ」

Q.ごまをとった方がいい時間帯はありますか?
A.「あります。生体リズムでいえば、カルシウムの吸収がいいのは夕方から夜にかけてです」

Q.白ごま、黒ごま、金ごまでどれが一番体にいい?
A.「種子の色の違いなので、味や香りに多少違いはありますが、成分に差はありません。ただ、黒ごまは白ごまに対して種皮の割合が多いので、白ごまよりも脂質は少ないです。また、皮の色が黒いため、白ごまよりもポリフェノールのアントシアニンという成分がわずかに多いです」
 

この方にお聞きしました

森 由香子(もり ゆかこ)さん

管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。クリニックにて栄養指導、食事記録の栄養分析、食事管理業務に従事。フランス料理の三國清三シェフとともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から、食事からのアンチエイジングを提唱している。

森由香子さんプロフィール
あの小さな粒に、人間に必要な栄養素をぎっしり抱えていると知ると、ごま一粒一粒がなんだか愛おしく思えてくるのではないでしょうか。今回の森さんのお話を参考に、ごまを日々の食卓に効率よく取り入れて、生き生きと健康的な毎日を送りましょう!

※記事の情報は2019年4月15日時点のものです。
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