プリン体の新常識!「ビールをやめて痛風予防」は間違いだった!?
テレビでも人気の管理栄養士・森由香子さんによる連載コラム「老けない人は何を飲んでいる?」。今回はビール党なら誰もが気になる「プリン体」ついて。プリン体の少ないお酒を選べば痛風予防になる、と思っていませんか?
痛風の原因「プリン体」は体の中でも作られていた
たとえば、「プリン体」カットをうたった発泡酒。血清尿酸値を気にする方に大人気です。
「プリン体」は体の中で利用された後、最終的に「尿酸」となり腎臓と腸管から排出されますが、「尿酸」が体の中にたまりすぎると痛風の原因となります。
とはいえ、いくら飲んでも血清尿酸値を上昇させないとは言いきれませんのでご注意ください。なぜなら実は、体の中でアルコール(エタノール)が代謝される際にも「プリン体」が生まれるからです。 ですので、血清尿酸値を正常値に保つには、ビールなどのアルコール飲料に含まれる「プリン体」ばかりでなく、体内での「プリン体」産生量と「尿酸」排泄量についても考慮しなければならないのです。
しかも近年の研究から、血清尿酸値の上昇は、体内での「プリン体」産生量や「尿酸」排泄量のほうが、アルコール飲料からの「プリン体」摂取量よりも影響を及ぼすことがわかっています。
ビールを控えれば大丈夫!というわけではない
「プリン体」産生についてですが、アルコール(エタノール)は、代謝される際に、ATP(アデノシン三リン酸)が過剰に消費されます。その時に、「プリン体」が生まれます。ATP(アデノシン三リン酸)とは、高エネルギー化合物で、体のエネルギー源となっているものです。
次に「尿酸」排泄について。アルコール(エタノール)は代謝されると乳酸を生じますが、乳酸は尿酸の排泄を阻害する働きをし、血清尿酸値を押し上げてしまいます。
また、アルコール(エタノール)を摂取すると、抗利尿ホルモン(尿の排泄を抑制するホルモン)の分泌が抑制され、多尿となり、脱水傾向になることで尿酸が濃縮されます。
このようなことから、お酒の種類に関わらず、アルコール(エタノール)そのものの摂取量にも気を付けなければいけないことがおわかりいただけたでしょうか。
アルコール飲料に含まれる「プリン体」量
- 地ビール(350ml)16.0mg~58.3mg
- ビール(350ml)11.6mg~34.2mg
- 発泡酒(350ml)3.9mg~13.7mg
- 日本酒(180ml) 2.2mg~2.8mg
- ワイン(200ml) 0.8mg
- ブランデー(60ml) 0.2mg
- ウイスキー(60ml)0.1mg
- 焼酎25%(60ml)0.0mg
注意すべきは「プリン体」よりも「飲酒量」
『臨床栄養Vol135 No2 2019.8』によりますと、「低脂肪乳や低脂肪ヨーグルト、スキムミルクは痛風リスクを低下させる。低脂肪でない牛乳は痛風リスクに影響しない。コーヒーは血清尿酸値を低下させ、痛風リスクを低下させる。」
また、「卵の卵白が血清尿酸値を低下させることが実験的に示されていたが、疫学データにおいても卵の摂取に尿酸値低下に関連することが示された。しかし、卵の摂取は体重や動脈硬化への影響も否定できないので、週に6個程度までが目安とされる」と記載されています。
ただし、これらの食品で血清尿酸値のコントロールを完全におこなうことは不可能ですので、ご自身の健康を食品に委ねることは避けてください。
また、『2019年版改定 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』に、血清尿酸値への影響を最低限に保つ1日の摂取量の目安が、「日本酒1合、ビールは販売元によって350ml~500ml、ウイスキー60mlとされている。また、ワインは148mlまでは血清尿酸値を上げない」と記載されています。
最も大切なことは、お酒にどれくらいの「プリン体」が入っているのか気にするよりも、何よりも飲みすぎないことでしょうか。健やかに飲酒ライフを楽しみましょう。
※記事の情報は2019年10月16日時点のものです。
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