ナッツはダイエット中のおつまみにOK? 食べ過ぎは危険? 管理栄養士が解説します

体に良さそうなイメージのある「ナッツ」。ダイエット中のおつまみにはおすすめできるのでしょうか? ナッツの栄養やカロリー、食べ過ぎるとどうなるのか?などについて、管理栄養士の森由香子先生が解説します。

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ナッツはダイエット中のおつまみにおすすめ?

近年、ナッツの人気はとても高まっており、健康のために食べたり、小腹が空いたときのお菓子の代わりにしているという方が増えています。「太りにくそう」というイメージから、ダイエット中のおつまみに利用しているという方も多いかもしれませんね。  

今回は、ナッツが本当にダイエット中のおつまみにおすすめできるのかを管理栄養士の視点から探っていきます。

ナッツにはどんな栄養が含まれている?

ナッツ
まず、代表的なナッツ(カシューナッツ、ピスタチオ、アーモンド、松の実、くるみ、バターピーナッツ)の栄養について見ていきましょう。

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ナッツに含まれる栄養素

食品名 重量(g) 食物繊維総量(g) カルシウム(g) マグネシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) ビタミンA(μg) ビタミンD(μg) ビタミンE(mg) ビタミンK(μg) ビタミンB1(mg) ビタミンB2(mg) ビタミンB6(mg) ビタミンB12(μg) 葉酸(μg) ビタミンC(mg)
カシューナッツ 10粒 15 1 6 36 0.7 0.8 0 (0) 0.1 4 0.08 0.03 0.05 (0) 9 0
ピスタチオ 10粒 5.5 0.5 7 7 0.2 0.1 1 (0) 0.1 2 0.02 0.01 0.07 (0) 3 (0)
アーモンド 9粒 10 1 24 27 0.4 0.3 0 0 2.2 0 0.01 0.11 0.01 0 5 0
松の実(煎り)20粒 4 0.3 1 10 0.2 0.2 (0) (0) 0.5 1 0.02 0.01 0 (0) 3 (0)
くるみ(煎り)1粒 6 0.5 5 9 0.2 0.2 0 (0) 0.1 0 0.02 0.01 0.03 (0) 5 0
バターピーナッツ 10粒 8 0.8 4 15 0.2 0.2 Tr (0) 0.2 Tr 0.02 0.01 0.04 (0) 8 0

※Trは最小記載量の1/10以上かつ5/10未満の微量、(0)は文献等により含まれていないと推計される値を表し、栄養計算上はすべて0で計算しています。

出典:日本食品成分表(八訂)

全般的に、腸内環境を整える食物繊維、抗酸化ビタミンのビタミンE、動脈硬化や貧血予防に役立つ葉酸や鉄、骨や筋肉の健康維持に関与するカルシウムやマグネシウム、亜鉛、ビタミンKを摂ることができます。

表をご覧いただくとわかるように、ナッツの種類によって栄養素の含有量が異なりますね。カルシウムやビタミンEはアーモンド、ビタミンKはカシューナッツに比較的多く含まれていますが、他のナッツはあまり含まれていないことがわかります。

栄養の偏りを防ぐには、1種類のナッツだけ食べるのではなく、色々な種類のナッツが楽しめるミックスナッツを選ぶと良いでしょう。

ただし、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12、ビタミンCは、どのナッツにもほとんど含まれていません。ですから、ナッツさえ食べていれば健康維持できると考えるのは危険です。

ナッツのカロリーはどのくらい?

ナッツ2
次に、気になるカロリーをみていきましょう。

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ナッツのカロリー

食品名 重量(g) カロリー(kcal) たんぱく質(g) 脂質(g) 食物繊維総量(g) 炭水化物(g)
カシューナッツ 10粒 15 89 3 7.1 1 4
ピスタチオ 10粒 5.5 34 1 3.1 0.5 1.1
アーモンド 9粒 10 63 2.1 5.6 1 1.8
松の実 20粒 4 29 0.6 2.9 0.3 0.3
くるみ 1粒 6 43 0.9 4.1 0.5 0.7
バターピーナッツ 10粒 8 49 1.9 4.3 0.8 1.5
出典:日本食品成分表(八訂)
ご覧の通り、少量でも高カロリーであることがわかります。ナッツを食べ過ぎれば、それだけカロリーが増えていくことは言うまでもありません。

また、ナッツには多少なりともたんぱく質や炭水化物が含まれています。炭水化物を摂っていないつもりでナッツを食べている方には少し驚きかもしれませんね。

ナッツを食べ過ぎるとどうなる?

ナッツの食べ過ぎは、カロリー過多により体重増加をもたらす原因をつくりますが、他にも健康を阻む懸念があります。

あまり周知されていませんが、ナッツにはLDL-コレステロール値をアップさせる飽和脂肪酸が意外に多く含まれているのです。

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ナッツに含まれる飽和脂肪酸

食品名 重量(g) 飽和脂肪酸(g) 一価不飽和脂肪酸(g) 多価不飽和脂肪酸(g)
カシューナッツ
(フライ・味付き) 10粒
15 1.5 4.16 1.21
ピスタチオ
(煎り・味付き) 10粒
5.5 0.34 1.7 0.9
アーモンド
(フライ・味付き) 9粒
10 0.43 3.48 1.17
松の実
(煎り)20粒
4 0.23 0.81 1.66
くるみ
(煎り)1粒
6 0.41 0.62 3.02
バターピーナッツ
10粒
8 0.82 1.88 1.26
出典:日本食品成分表(八訂)
ナッツの脂質には、血管疾患のリスクを下げる不飽和脂肪酸が豊富に含まれることで有名ですね。そのため、体に良い脂質を摂るつもりでせっせとナッツを食べている方が多いのですが、もれなく飽和脂肪酸も付いてくるので、その摂取量も増えていきます。健康のために食べていたはずが、知らず知らずのうちにLDL-コレステロールの上昇、ひいては動脈硬化の危険因子を作ってしまうのです。

栄養指導に来られた患者さんにこちらの表をお見せすると「知らなかった!」と驚かれます。食べ過ぎて、マイナス要因がプラス要因を上回るような食べ方は避けたいものです。

ナッツを食べ過ぎてしまうのには理由があった!

ナッツを食べる
ナッツが高カロリーであると分かっていても、どうしても食べ過ぎてしまう…という声を多く聞きます。

ほんの少しだけ食べるつもりでいたのに、ポリポリ、カリカリという軽快な咀嚼音やリズミカルな口の動きも手伝うためか、どうにも食べることが止まらず、気付けばすべて食べ尽くして罪悪感に苛まれる…という経験をお持ちの方も多いかもしれません。

あの「食べ尽くさないといけない」という一種の使命感のようなものは、脳の「報酬系」という神経回路の働きによるものです。

脳の中の中脳「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」から前脳「側坐核(そくざかく)」へ伸びるドーパミン神経系の働きによって、「もっと食べたい、もっと欲しい」という感覚が生まれるのです。

また、この脳内回路と連動して「βエンドルフィン」という物質も分泌されます。「βエンドルフィン」とは脳内で働く神経伝達物質のひとつで、鎮痛効果、気分の高揚、幸福感などが得られることから、脳内麻薬とも呼ばれています。これによってさらなる幸福感がもたらされ、どんどん食べ続けてしまうのです。

ナッツの適量はどのくらい?

ナッツ3
結論を申し上げますと、ナッツは適量であれば、ダイエット中のおつまみにもOKと言えます。

お酒の力が入ると、上述した脳の報酬系が暴走しがちになります。あらかじめ、大さじ1杯程度の量、あるいは100kcal以内と決めて食べるのが良いでしょう。

ダイエット中は、徳用の大袋などの買い置きはせず、スーパーやコンビニエンスストアにある食べきりサイズの小袋を利用するのがおすすめです。

ナッツを賢く取り入れて、健康的なダイエットを!

体重の増減は、カロリー摂取量とカロリー消費量の収支バランスで決まります。活動量(カロリー消費量)よりも、食事量(カロリー摂取量)が多ければ体重は増加しますし、逆ならば体重は減少します。そのため、ダイエット中は、なるべく余分なカロリーを摂らないこと、そしてカロリー消費量を増やしていくしかありません。いつもより食事量を減らし、いつもより少し体を動かすことです。

毎日体重を計測しながら、ご自身のナッツの適量をみつけましょう。適量であれば、ナッツが持つすばらしい健康効果も存分に期待できるはずです。

美味しいナッツとお酒で健やかな飲酒ライフをお過ごしください。

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※記事の情報は2022年4月11日時点のものです。
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