お刺身の栄養は? お酒のおつまみに最適な理由を管理栄養士が解説します

居酒屋のおつまみでも定番の「お刺身」。実はお刺身には、お酒をよく飲む人にとってうれしい栄養がたっぷり含まれていることをご存知でしたか? お刺身がお酒のおつまみにおすすめである理由を、管理栄養士の森由香子先生が解説します。

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お刺身は、魚介本来の味わいが楽しめる日本料理

おつまみとしても夕食のおかずとしても人気の高いお刺身。お刺身は日本オリジナルの生もの料理で、魚介本来の持ち味を楽しめ、「お造り」とも呼ばれていますね。居酒屋ではお刺身の盛り合わせを注文するのがお決まりという方も多いでしょう。

新鮮なお刺身は、肉質に歯ごたえがあり、色合いも透明感があってとてもきれいです。お店で提供されるものを見てもスーパーマーケットで売られているものを見ても、魚の種類や切り方、盛り付け方、並べ方にそれぞれのオリジナリティが感じられ、まるでひとつの芸術作品を見ているかのようです。センスが光る作品を見つけると思わず写真を撮りたくなります。

お刺身の「赤身」と「白身」の特徴は?

刺身を切る
お刺身はよく「赤身魚」や「白身魚」のように色合いで分類されますが、それぞれには色味のほかにもいくつか特徴があります。

まず赤身魚は、マグロやカツオのように外洋を回遊する魚で、血合肉と呼ばれる黒い部分やミオグロビンという赤い筋肉色素、筋原質というタンパク質を多く持っているのが特徴です。加熱すると凝固して硬くなりますが、生の状態のものは時間が経つにつれて軟らかくなります。

これに対して白身魚は、タイやヒラメのように近海の磯にいる魚で、血合肉も色素もほとんど含まれず、筋肉が白く筋原質タンパク質が少ないのが特徴です。また、加熱しても硬くなりにくく、繊維状タンパク質が多いのでほぐれやすく、生で食べると弾力があり歯切れの良さが感じられます。

魚を下ろすときも、赤身魚と白身魚のそれぞれが持つタンパク質の特性を活かした基本原則があることをご存じでしたか? 

身が軟らかいマグロやカツオのような赤身魚は、薄切りにすると歯ごたえがなくなるため厚切りに。その一方で、タイやヒラメなどの白身魚は、身が締まっていて歯ごたえがあるので、そぎ切りのように薄く切ってあるのです。普段何気なく口にしているものにも、美味しく食べるための技が隠されていたんですね。

お刺身に含まれる栄養は?

ではここから、お刺身の中でも代表的なマグロとタイの栄養を見ていきましょう。

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刺身に含まれる栄養

食品名 重量(g) エネルギー(kcal) たんぱく質(g) 食物繊維量(g) カリウム(mg) カルシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) ビタミンD(μg) ビタミンE(mg) ビタミンB1(mg) ビタミンB2(mg) ナイアシン当量(mg) ビタミンB6(mg) ビタミンC(mg) 食塩相当量(g) n-3系多価不飽和脂肪酸(g)
クロマグロ 天然 赤身 生 5切れ 40 46 8.9 (0) 2 0.4 0.2 2 0.3 0.04 0.02 7.6 0.34 1 0 0 0.07
クロマグロ 養殖 赤身 生 5切れ 40 61 8.2 0 172 1 0.3 0.2 1.6 0.6 0.06 0.02 8 0.2 1 0 0.75
マダイ 天然 生 5切れ 50 65 8.9 (0) 220 6 0.1 0.2 2.5 0.5 0.05 0.03 4.9 0.16 1 0.1 0.58
マダイ 養殖 皮つき 生 5切れ 50 80 9.1 (0) 225 6 0.1 0.3 3.5 1.2 0.16 0.04 4.8 0.2 2 0.1 0.89

出典:日本食品成分表(八訂)
マグロは種類が豊富で、クロマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガなどさまざまありますが、私たちが普段マグロと呼んでいるのはクロマグロのことを指します。

上記の表で分かる通り、マグロには良質なタンパク質が豊富で、ビタミンB6、ナイアシン、ビタミンD、n-3系脂肪酸(EPA、DHA)、鉄、亜鉛を多く含みます。また、天然ものと養殖ものでも栄養に違いがあることもわかります。

次にタイです。タイにもマダイ、チダイ、キダイ、クロダイなどさまざまな種類がありますが、一般的にタイといえばマダイのことを指します。

タイも良質なタンパク質が豊富で、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、カリウム、カルシウムも多く含まれています。また、マグロと同様に天然と養殖で栄養価が異なります。

余談ですが、「腐ってもタイ」という言葉をどこかで聞いたことがないでしょうか。こちらの言われは、タイに含まれる旨味成分のイノシン酸は分解されにくく、鮮度や味が落ちにくいからということのようです。

栄養豊富なお刺身はお酒のおつまみに最適!

お刺身と焼酎
マグロやタイなどのお刺身は、お酒のおつまみにおすすめです。アルコールの代謝には多くの栄養素が使われますので、栄養豊かなお刺身(魚)を一緒に摂るのは体のために良いことです。

お酒を分解するときに大量に消費されるのはビタミンB群。特にその中でもナイアシン、ビタミンB1、ビタミンB2が多く使われます。お刺身には、それらがたくさん含まれているのです。

お刺身には、お酒の分解に役立つビタミンB群がたっぷり

ビタミンB1はアルコール代謝のさまざまなところで消費されるほか、汗や利尿作用によっても失われます。ある研究では、不足するとアルコール性認知症の原因になる可能性があることも示唆されています。

また、ビタミンB2は、アルコールによって肝臓の細胞でつくられる「過酸化脂質」という悪玉物質を分解するために大量に利用されます。

ナイアシンは、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という補酵素の原料となります。NADもアルコールの代謝において大量に消費されます。NADが無ければ、アルコール脱水素酵素もアセトアルデヒト脱水素酵素もスムーズに働けません。また、NADが不足すると、糖質や脂質をエネルギーとして利用できなくなります。その結果中性脂肪が増え、アルコール性脂肪肝の原因となります。

お酒愛好者にとって、失われがちなビタミンB群をしっかり補えるお刺身は心強いおつまみと言えるでしょう。

ナイアシンはビールにも含まれている!

お刺身とビール
ちなみにナイアシンは、マグロやタイのほかに、カツオ、キハダマグロ、スルメイカ、マサバ、マイワシなどにも多く含まれています。お酒では、なんとビールにもナイアシンが含まれています。ビールとお刺身は、ナイアシン供給にはうれしい組み合わせです。

またナイアシンは、タンパク質を原料として体内でも合成されます。タンパク質は、アルコールを分解する酵素の原料になったり解毒を手伝ったりするほかに、ナイアシンをも作ってしまうのです。

タンパク質はアミノ酸から構成されていますが、その中には食品からしか摂取できない「必須アミノ酸」が9種類含まれています。ナイアシンを合成するのに必要な必須アミノ酸の一つである「トリプトファン」も、お刺身から摂取することができます。

お刺身の「つま」や「けん」も一緒に食べると栄養がさらにアップ!

刺身
ところで、お刺身には多くの場合「つま」や「けん」が添えられていますね。魚のにおい消しや口直しのほか、彩りを添えたり、香りを付けたりする役目があります。

「つま」には、大葉、芽ジソ、穂ジソ、食用菊の花、紅たでなど、「けん」には、大根、キュウリ、人参などの野菜を細く切ったものが使われます。

皆さんは、いつも「つま」や「けん」は、どうされていますか? 単なる飾りと認識されていた方は、今日から残さずに食べていただければと思います。

中でもイチ押しは、ビタミンCが豊富な大根の千切りです。ビタミンCには、飲酒時に体の中で発生する活性酸素を消去してくれる働きがありますが、お刺身にはビタミンCがあまり含まれていないからです。お刺身と一緒に大根の千切りを食べることで、ビタミンCの摂取量がアップします。

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今年は夏が長く、暑い日が続きます。さらにコロナウイルスも再び猛威を振るっています。

晩酌のおつまみにお刺身を選び、賢く栄養補給しながら、健やかな飲酒ライフをお過ごしください。

※記事の情報は2022年8月8日時点のものです。
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