日本酒と料理、どう合わせる? 組み合わせのコツをご紹介。

日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する簗塲友何里(やなば ゆかり)さんのお酒コラム。今回は、超カンタンな料理と日本酒の相性の見分け方です。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
メインビジュアル:日本酒と料理、どう合わせる? 組み合わせのコツをご紹介。

地のもの、地の酒がキホン

日本酒と料理の相性について考える。一見難しいようですが、実は簡単かつ確実な方法があります。それは、その蔵がある土地の特産品と組み合わせること。同じことがワインにも言えますが、馴染みの深い日本の料理と地酒との組み合わせは、より手軽に楽しめるマリアージュです。

さまざまな土地の、いろいろな料理が食卓に並ぶ現在、地元の料理と土地の地酒の関係は忘れられがちですが、これは基本中の基本です。地のもの、地の酒を一緒に楽しめば失敗はありません。

日本酒は、その土地の水、そこで育った米、その土地の酵母も使うことが多いので、酒蔵のある地域の土地柄が色濃く出る飲み物です。長年その風土と向き合い、常にその土地の味を味わっている地元の蔵が、自然とその土地の味わいを造り出している……考えてみれば自然なことですね。その基本を大切にした、私流の相性の良い料理の探し方をご紹介します。

この一本にどんな料理を合わせるか?

私が経営する発酵フレンチと日本酒のSAKE Scene 〼福での日本酒選びでは、日本酒の酸の種類や、旨味のバランスを把握し料理に合わせて行くことがほとんどです。ですが、ちょっと困っなー、どうしようか、という時には、地元同士の組み合わせという原点に戻ると、短時間でぴったりの料理がみつかります。あるお酒に合う料理を考えるなら、その酒の蔵元がある土地の郷土料理をイメージしてみます。

例えば、愛媛県西条市にある蔵元、伊予賀儀屋さんのお酒。これにはどんな料理が合うでしょう? こちらは、瀬戸内海と石鎚山に囲まれた瀬戸内海に面した蔵元です。優しい味わいの飲み疲れしない食中酒が中心の蔵。こちらのお酒は、穏やかな瀬戸内海で採れる淡泊で優しい味わいのお魚にぴったり。地元の魚の味を包み込んで、さらに味わい深くしてくれる、そんな日本酒です。地元の給食でも出てくる、地のお米、松山三井(まつやまみい)を使うことも多く、それから醸されるお酒は、さらに地元のおかずとも相性はばっちり。瀬戸内の魚といえば、淡泊で優しい白身、特に鯛が有名ですね。このお酒には鯛やヒラメのような白身のお魚が合うでしょう。また、地元でよく食べられているような甘めの味付けの煮物も相性がよさそうです。

この一皿にどんなお酒を合わせるか?

こんどは、逆のパターンの例です。

私の経営するSAKE Scene 〼福でお出ししている、季節のコースの特別メニュー「穴子のムースリーヌ 酒粕アメリケーヌ」には、私が発見した鉄板の日本酒の組み合わせがあります。このお料理はムース仕立ての穴子に、酒粕と蟹や海老など甲殻類の殻から作るソースを合わせたもの。魚介ベースの独特な味わいの料理です。これにどんな日本酒を合わせるか。

蟹のソース…蟹、蟹、と考えるうち、そうだ!能登だ!と思いつきました。蟹の名産地のお酒ならぴったり合いそうです。そして、奥能登、珠洲市の蔵、宗玄のお酒を合わせることにしました。約250年の歴史ある蔵で、能登杜氏発祥の蔵とも言われています。ミネラリーな塩味を感じる独特の味わいに、クリーミーで濃醇な味わい。米の甘味や旨味もあり、飲みごたえがあります。しっかりとした味わいの独特な珍味にも負けず寄り添う、奥能登の酒。私にとっては唯一無二の存在です。それ以来、このお料理には、宗玄を合わせるのが鉄板になりました。

日本酒で土地柄をもっと知りましょう

日本酒とお料理を合わせる近道は、それぞれの「地元の味」を調べて想像してみることです。「この料理の味付けはどの地方っぽい?」「この日本酒蔵がある地方の郷土料理はどんな味?」この2つの問いかけをしてみましょう。

このゴールデンウィーク、各地にご旅行に行かれる方、また、アンテナショップで各地のお酒や食べ物をお買い物される方。さまざまな地方の味にそこの日本酒を合わせ、どっぷりとその土地と向き合ってみてくださいね。


※記事の情報は2018年4月25日時点のものです。
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