【AWA SAKE】シャンパンに続け! 世界の乾杯シーンで選ばれ始めた日本酒たち
フランスの最優秀ソムリエも魅了されたという「AWA SAKE(あわさけ)」。シャンパンと同じ瓶内二次発酵などの製法を取り入れて造られるスパークリング日本酒の魅力や挑戦について、一般社団法人「awa酒協会」理事長の永井則吉さんにお話を伺いました。
この方にお聞きしました
永井 則吉さん(ながい のりよし)
一般社団法人「awa酒協会」初代理事長。群馬県川場村にある創業136年の老舗蔵元「永井酒造株式会社」代表取締役社長。伝統的な日本酒製法に瓶内二次発酵を取り入れた本格的なスパークリング日本酒「MIZUBASHO PURE」を開発し、 2016年に「awa酒協会」を設立。日本酒の価値を上げ、世界レベルの酒にするべく日々奔走している。
「AWA SAKE」はなぜ特別なのか? 他のスパークリング日本酒との違いは?
「AWA SAKE」の魅力を一言で表すならば、“五感に訴えかける日本酒”です。
AWA SAKEのほとんどがシャンパンの製法と同じ瓶内二次発酵*で造られますので、瓶も内圧で割れないよう頑丈に作られていて、見た目から重厚感があります。なので、ボトルを持った瞬間からストーリーが始まりそうな高揚感が得られます。
開栓したら、シャンパンのコルクを抜いたときのようなポンッという音がします。AWA SAKEは良質なスパークリングワインと同等のガス圧を持っているので、あの小気味よい音が出るんです。
そうです。そもそもAWA SAKEはおめでたいシーンとか特別な日、おもてなしの場で乾杯してもらいたい、という思いから生まれたお酒です。ヨーロッパには「乾杯の数だけ幸せになれる」という言葉がありますが、まさにそうした特別なシーンにふさわしいお酒だと思います。
*瓶内二次発酵:アルコール発酵が止まっていない醪を粗く濾過した、酵母が生きた状態のにごり酒を、ベースの日本酒に追加して瓶詰めを行い、瓶内でさらに発酵を進めて炭酸ガスを瓶内に閉じ込める製法
酒蔵の本気度が試される「AWA SAKE」の厳格な認定基準
awa酒協会では6つの基準を設けていて、これを満たさなければ「AWA SAKE」と呼べません。しかも我々が仲間内でチェックするのではなくて、あえて第三者の研究機関に分析依頼をしているんです。その透明性でもって基準をクリアしたものだけを「AWA SAKE」として認定しています。
【AWA SAKEの認定基準】
1.米*¹ 、米こうじ及び水のみを使用し、日本酒であること
2.国産米を100%使用し、かつ農産物検査法により3等以上に格付けされた米を原料とすること
3.醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること*²
4.外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること
5.アルコール分は、10度以上であること
6.ガス圧は20℃で3.5バール*² (0.35メガパスカル)以上であること
*1 純米であることや精米歩合については規定しない
*2 二次発酵については瓶内でもタンク内でも規定内とする
―「視覚的に透明」とか「アルコール分は10度以上」など、かなり厳格な基準があるんですね。
例えば、澱をどうやって取り除くかは蔵元によって異なりますが、澱の量はシャンパンの7~8倍はありますから、かなり高度な技術が必要です。
また、シャンパンを含むワインは通常発酵を途中で止めるために亜硫酸塩を添加しますが、日本酒の場合は添加物扱いになるので入れられません。だから「火入れ」と呼ばれる熱殺菌を行うのですが、これもかなりリスキーで。ガス圧のあるものに火を入れますから、圧力が上がりすぎて瓶が割れてしまう恐れがあるんです。
―AWA SAKEを造ることは、シャンパン造り以上にハードルが高そうですね。
そうなんです。技術面でシャンパン造りに学んだ部分はありますが、それを日本酒の理論に落とすことが難しいんです。ですから、AWA SAKEの認定基準を満たすためにはかなりの本気度が必要になります。今協会に加盟していのは30社ですが、どこも各県を代表するような技術的に優れた蔵ですし、世界を目指そうという気概があるので、もともとのポテンシャルが高いんです。
―ここまで厳しい基準を設ける狙いはどこにあるんでしょうか?
やはり品質のためですね。「AWA SAKE」認定酒にはシールを貼っているのですが、それがいわば品質保証です。awa酒協会認定のものであれば、“なんちゃってスパークリング”はないという。
世界の乾杯酒を目指して
つい先日フランスのソムリエコンペティションで最優秀ソムリエに輝いたグザビエ・チュイザ氏、彼は「Kura Master(クラマスター) 日本酒コンクール」*の審査員長でもあるんですが、AWA SAKEのことを本気で応援してくれていて、我々の協会の初代アンバサダーにもなってくれました。
それで、これはグザビエから聞いた言葉なのですが、自分たちがふだん応対しているのは世界中のVIPばかりで、その時にどうしてもワインだけだと全てをカバーしきれないというか、あらゆる食材とあらゆる料理方法の中でワインが苦手とするものもあると。でも実はそこが日本酒の得意とするところで、そこに価値を感じていると。その日本酒の価値を世界に伝えるために、「Kura Master」という日本酒の品評会を作ったんだそうです。
*Kura Master…2017年からフランスで始まった、フランス人ソムリエによるフランス、欧州市場への日本酒、本格焼酎・泡盛などの普及を目的にしたコンクール
―そうした海外からの日本酒への期待を、永井さんはどう受けとめていますか?
もともと私がこのawa酒協会を立ち上げた目的も、日本酒の価値を上げたい、AWA SAKEを世界レベルの乾杯酒にしたいという思いがベースにありました。
昔はまずい酒って結構あったのですが、今日本酒は全体的にかなりレベルが上がってきています。ただ、それに伴って価値が上がっているかというと、これだけ物価が上がっているのに日本酒の値段は30年前からほとんど変わっていないのが現状です。世界に目を向けても、日本酒って金額ベースで言うと、まだ全体の5~6%くらいしか海外に輸出されていないんですよ。
一方、シャンパンの輸入実績はアメリカ、イギリスに次いで日本が世界第3位なんです。
―え! そんなに日本ではシャンパンが飲まれているんですか?
そうなんです。なので本当は日本の方々に、誇りをもってこのAWA SAKEを飲んでもらうのが一番なんです。特別な日のお酒として、シャンパンの代わりにこのAWA SAKEで乾杯をしてもらうのがね。あとは海外から来るお客さまに対して、日本のおもてなしのお酒として、このAWA SAKEが選ばれるといいなと思っています。
―勝負はこれからなんですね。
まだまだ、これからですね。日本酒が好きな方には少し浸透してきましたが、日本酒に興味のない方々には知られていないので。日本の方にももっとAWA SAKEのことを知ってもらいたいですし、世界にも魅力を発信していきたいと思っています。
AWA SAKEを家でおいしく楽しむためのヒント
百貨店のお酒コーナーでも一部商品を扱っていただいていますし、awa酒協会の公式HPでは全認定酒をご案内していますから、そこから各社にアプローチしていただければと思います。
―どれくらいの温度帯で飲むのがおすすめですか?
飲む前に一度しっかり冷やしていただいた方が良いかもしれないですね。5~10℃くらいで。ヴィンテージのものもいくつかあるんですけど、そういうものは10~15℃くらいで飲むのがいいと思います。保管するときはワインセラーがあればセラーに入れて、なければ冷暗所に置いてください。
―グラスはどんなものを選べばよいですか?
シャンパンのフルートグラスよりは、ちょっと口が広めの白ワイン用グラスで飲んでいただくのがおすすめです。グラスを傾けたときに、液体が旨味を感じやすい舌の中心に一気に落ちるので、日本酒の旨味を感じやすいんです。
また、協会ではAWA SAKE専用グラスも作っています(上の写真)。江戸硝子の職人が一個一個型吹きで成形しているんですけど、フィリップ・ジャメス氏というフランス・シャンパーニュを代表するソムリエと一緒に開発したもので、AWA SAKEの魅力を最大限に伝えられるデザインになっています。
―AWA SAKEにはどんな料理が合うでしょうか?
一般的な日本酒と比べても酸が低いので、本当にいろいろな料理に合わせやすいと思います。特にクリームチーズ系の料理やイベリコ豚の生ハム、それにウニ、いくら、数の子、からすみなどの魚卵系はおすすめです。生牡蠣も美味しいですね。それから野菜系では、サラダとかアスパラガスの料理にもよく合います。あと、クリームチーズとサーモンを乗せたクラッカーなんかにも最高ですよ。
―これからのクリスマスシーズンや、年末年始の食卓に上るような料理にも合いそうですね! 本日はAWA SAKEについて色々と教えていただき、ありがとうございました。
※記事の情報は2022年11月23日時点のものです。
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