中国ワインはどんなお酒? 急速に発展する中国産ワインについてソムリエが解説!

中国といえば白酒や紹興酒のイメージが強いかもしれませんが、近年では国内でのワイン生産量も目覚ましく増加しており、なんと現在世界5位! とはいえ、まだまだ日本ではあまり知られていないことも事実です。今回はそんな「中国ワイン」に関する基礎知識を、ソムリエに解説していただきます!

メインビジュアル:中国ワインはどんなお酒? 急速に発展する中国産ワインについてソムリエが解説!

中国は世界有数のワイン大国!

ワインの消費が盛んで、輸入ワインの消費量は過去10年で3倍以上に増加している中国。国内のワイナリーの数も目覚ましく増加しており、生産量も品質も年々右肩上がりに向上しています。

近年ではフランスやイタリアの腕利きの生産者や醸造家が中国に参入しているケースも増え、これからますます注目されるであろう中国ワイン。その歴史や特徴について詳しく見ていきましょう。

中国ワインの特徴とは?

中国ワインイメージ
中国は国土が広大なのでテロワールもさまざま。栽培されている8割近くが黒ぶどうで、国際品種が主流です。中国ではボルドースタイルのワインが好まれていることもあり、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったフランス原産のぶどう品種が多く栽培されています。ワイン造りの歴史は古いものの、中国はワイン文化が低迷していた時期が長かったこともあり、「新世界(ニューワールド)」に分類されています。

近年ではワインの醸造に関してビッグデータを活用したり、ITの最新技術を用いたりするワイナリーが増えており、ブレンド技術や醸造プロセスを科学化、スマート化することによって、高品質なワインが数多く出てきています。

※新世界(ニューワールド):古くから産業として伝統的にワインを造っていたフランスやイタリア、スペインなどを表す「旧世界(オールドワールド)」の対義語。新世界はアメリカやオーストラリア、アルゼンチン、チリなどが該当します。

中国ワインの歴史

中国ワインの歴史は古く、5世紀の唐の時代には既にワイン造りが盛んに行われていましたが、12世紀の明の時代に入ると白酒や紹興酒の生産量が増えたことにより、次第にワイン文化は低迷していきました。

その後しばらく中国ではワイン文化は影を潜めていましたが、1892年、山東省の煙台(エンタイ)に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」が設立されたことをきっかけに、またワインが造られるようになりました。

規制がなかった1980年代は果汁に水や香料を入れるスタイルが多かったのですが、1994年には地理的表示保護の商標登録が可能になり、1999年には原産地保護の規定が制定されました。これにより徐々にワインの品質も向上していき、現在では国内に900以上のワイナリーがあると言われています。

中国ワインの主な産地

中国ワインの主な産地イメージ
中国ワインの主な産地は4つあり、「雲南省」、「山東省煙台」、「新疆ウイグル自治区」、「寧夏回族自治区」で盛んに栽培されています。

これらの地域では年間の日射量や降水量、寒暖差、土壌といった環境がぶどう栽培に適しており、さらに最新の醸造設備や技術を積極的に取り入れたワイン造りをしています。

中国ならではの土着品種もありますが、栽培される多くはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったヨーロッパ系品種が主です。

4つの産地について簡単に解説していきます。

・雲南省
雲南省は中国の南部、ミャンマーとの国境沿いに位置し、安定した温暖な気候が特徴の産地です。モエ・ヘネシー社が標高6,740メートルの最高峰「カワカブ山」の麓にある「梅里雪山」に着目し、高級ワインを造っていることでも知られています。「雲の上の飛翔」の意味を持つ「Ao Yun(アオユン)」の価格は1本300ドルを超える高級ワインです。

また、雲南省では「ローズ・ハニー」という珍しい品種が栽培されています。原産はフランスとされていますが、フランスでは虫害で絶滅した品種とされていました。バラのような華やかな香りが特徴のぶどうで、認知度は低いですが、中国ならではのワインとして今後注目の品種です。

・山東省煙台
中国近代ワインの祖と言われる「張裕(チャンユー)ワイン」の発祥地であり、国内でもトップの生産量を誇る産地です。山東半島にある港湾都市の煙台は、アジアで唯一「国際葡萄・ワイン都市」としてOIV(葡萄・ワイン国際機構)から認定された産地としても知られています。

「シャトー・チャンユー・カステル」という中国初のシャトーが有名で、創業当初から欧米に通用する高品質なワイン造りを行っています。また、フランスのトップシャトーの一つである「シャトー・ラフィット・ロートシルト」が造るロン・ダイ(Long Dai)の生産地としても有名です。

山東省ではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、リースリングといった国際品種を中心に栽培しています。

・新疆ウイグル自治区
新疆ウイグル自治区は中国の最西端に位置し、その大部分がゴビ砂漠に覆われています。標高が高く昼夜の寒暖差があり、そのうえ降水量は少ないため、ぶどう栽培に非常に適した産地と言えます。

この地域では古くから生食用や干しぶどう用としてぶどう栽培が盛んでした。ワイナリーの増設や生産量増大に伴う産業発展計画があり、今後も目が離せない産地です。

・寧夏回族自治区
中国西部、ゴビ砂漠の南に位置する産地です。国内でも高品質なワインを生み出す産地としても知られています。シャンパーニュで有名なモエ・エ・シャンドン社のワイナリーをはじめとして、現在では200以上のワイナリーがあり、ワインツーリズムの拠点としても脚光を浴びている地域です。

乾燥地帯のため年間降水量は200ミリ以下で、標高1200mの高地にあり、年間日照量は3200時間。害虫や疫病の心配がなく、オーガニック栽培に適している土地でもあります。特に賀蘭山(ガランサン)東麓が銘醸地として知られており、“中国のボルドー”、“中国のナパ・ヴァレー”とも言われています。

中国ワインの主なぶどう品種

ぶどう
中国国内ではボルドースタイルの赤ワインが好まれていることもあり、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローといったヨーロッパ系品種が多く栽培されています。そのほか、シャルドネやリースリングといった世界各地で栽培されている白ぶどう品種もあります。

中国で栽培されている注目の品種は「蛇龍珠(シャーロンジュー)」と「ローズ・ハニー」です。また、今後中国のアイコン的な品種になると言われている「マルスラン」についても紹介します。

・蛇龍珠(シャーロンジュー、シャオロンジュ)
蛇龍珠は中華調味料やスパイシーな香辛料のニュアンスが感じられ、四川料理などの辛みの強い料理と合わせて楽しまれることが多く、現地でも人気の品種です。カベルネ・フランの一種、またはカルメネールの一種と考えられており、未だ謎の多い品種と言われています。

濃厚で豊かな果実味としっかりとしたタンニンが特徴です。英語名はCABERNET GERNISCHTと表記されます。

・ローズハニー
原産地と言われているフランスでは虫害で絶滅した品種とされており、現在は中国でのみ栽培されている品種です。文字通りバラのような華やかな香りがありますが、世界的にはほとんど認知されておらず、マイナーなぶどう品種です。

・マルスラン
マルスランはカベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配種で、1961年にフランスで生まれました。プラムやベリーのアロマに加え、土っぽいニュアンスが感じられる黒ぶどうで、濃厚な色調と滑らかなタンニンが特徴です。 温暖な気候に適した品種で、温暖化の影響からか、中国だけでなくフランスやアメリカのナパ・ヴァレーでも注目されています。

はじめての中国ワイン、おすすめの銘柄は?

日本に流通している中国ワインはまだまだ少なく、ワインショップでも見られることはあまりありませんが、ECサイトでは購入することができます。1万円を超えるような高級ワインもありますが、3,000~5,000円前後のクラスだと、「シルバーハイツワイナリー」のものがおすすめです。

「シルバーハイツワイナリー」は、中国内陸部の寧夏回族自治区にある、標高1,200メートルのヘレン山地に建つワイナリー。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンドで造られている「シルバーハイツ ラスト・ウォリアー・レッド」は一流ホテルでも取り扱われているほど上質な味わいで人気があります。

その他、世界的にも注目を集めはじめている「マルスラン」から造られる赤ワイン「シルバーハイツ ジアユアン家園 マルスラン」も豊かな果実味ときめ細かいテクスチャーがあり、ぜひ試していただきたい1本です。今後はより多くの中国ワインが日本に輸入されるかもしれないので、注目していきたいですね。

中国ワイン、おすすめのペアリングは?

小籠包
中国ワインはやはりボルドースタイルの赤ワインが多いので、フルボディの赤ワインを中心にセレクトするシーンが多いかと思います。

前述した中国ならではの品種「蛇龍珠」を使った赤ワインなら、中華料理との相性はとても良いでしょう。辛味がある麻婆豆腐や青椒肉絲、小籠包などがおすすめです。少し酸味が感じられる赤ワインなら、濃厚なエビチリや酢豚とのペアリングも好相性。せっかくならペアリングの基本「地のものと合わせる」を意識して、中華料理×ワインのペアリングを楽しんでみてください。

目覚ましく発展する中国ワインから、今後も目が離せない!

中国のワイン産業は近年急速に発展を遂げ、その質も年々向上しています。多様な気候と広大な土地、古くからの伝統と最新のIT技術の融合が、中国ならではの強みと言えるでしょう。今まではフランス、イタリア、スペインといった伝統的なワイン大国や生産量の多いアメリカが主流でしたが、今後はワイン大国の一つとして中国が挙げられる日もそう遠くはないかもしれませんね。日本市場にはまだあまり出回っていませんが、今後の中国ワインに注目です!  

※記事の情報は2023年7月10日時点のものです。
  • 1現在のページ