ワイングラスに注ぐ最適な量とは? ひと目で分かる写真とともにソムリエが解説します

ワインをグラスに注ぐとき、どれくらいの量を注げばいいか迷ったことはありませんか? 今回はワインの種類別に最適な量や、適量を注ぐメリットをソムリエ資格を持つライターが詳しく解説します。

メインビジュアル:ワイングラスに注ぐ最適な量とは? ひと目で分かる写真とともにソムリエが解説します

ワイングラスに注ぐ量には理由があった!

ワインはビールのようにグラスになみなみと注がないのは知っているけど、なぜなのかはよく知らない…という方は多いのではないでしょうか。ワイングラス1杯に注ぐ量は一般的に90~110mlが適量と言われていますが、実際に注いでみると「こんなに少ないの?」と驚かれる方もいるかもしれませんね。

その理由は、ワイングラスの中に空間を作ることでワインのアロマをとどまりやすくしたり、スワリングをしやすくするためです。

「スワリング」はワインの入ったグラスをくるくる回す、ワインを飲むときに行う基本的な動作です。スワリングしてワインを空気に触れさせることで酸味や渋み、苦みを穏やかにしたり、ワインのアロマを引き出すことができます。

つまりワイングラスに適量を注ぐことは、ワインの味や香りをベストな状態で楽しむことにつながります。

ちなみに居酒屋の人気メニューである「こぼれワイン」などはあくまでもエンタメの一種。手頃な価格でたっぷり飲めるものの、ワインを美味しく飲むには最適とは言えません。

ワインボトル1本はグラス何杯分?

ワインのフルボトルの容量は例外を除いて750mlと決まっています。仮に90mlずつ注いだら約8.3杯分、100mlずつ注いだら7.5杯分、110mlずつ注いだら約6.8杯分となります。つまり、ワインボトル1本でおおよそグラス6~8杯分と考えるといいでしょう。「フルボトル1本は7人で1杯ずつ楽しめる量」と覚えておけば、大人数で集まる時に買うワインの本数の目安になります。

ただし、この適量はワインの種類やワイングラスによっても微妙に変わってきます。

この記事では、ワインの種類やワイングラスの型別に適量を注ぐコツを写真付きでご紹介します。計量カップなしで適量を注ぐことができれば、普段の家飲みから人が集まるホームパーティーまで、スマートにワインを楽しむことができますよ。

※国内で造られる日本ワインは、日本酒の四合瓶サイズに由来し、720mlの場合もあります。

ワイングラスに注ぐ適量を見る前に、各部位の名称をチェック!

本題に入る前に、ワイングラスの構造をおさらいしておきましょう。

ワイングラスは基本的に「ボウル」「ステム」「プレート」の3つの部位で構成されています。
 
ワイングラスの各部位名称
ボウル…グラスの丸みを帯びた部分
ステム…持ち手となる脚
フット(台座、プレートとも呼ぶ)…グラスを支える土台

ボウルの中でも、飲む際に唇に直接触れるグラスの縁の部分を「リム」と呼びます。

それではさっそく、実際にグラスにワインを注いだ写真とともにその理由を細かく見ていきましょう。

赤ワインをグラスに注ぐ適量は?

赤ワインは時間の経過と共にさまざまなアロマが表れ、複雑味のある味わいを楽しめるため、ワイングラスは多めに注げる大ぶりな形状のものが一般的です。また大きなグラスにワインを注ぐことで空気に触れやすくなり、赤ワイン特有の“渋み”をまろやかにする効果があります。

ここでは代表的な「ボルドー型」と「ブルゴーニュ型」、赤ワイン全般に使用できるオーソドックスな形のワイングラスに注ぐおすすめの量を解説します。

ボルドー型
ボルドー型に注ぐワインの適量
ボルドー型は、渋みが強く重厚な味わいのフルボディの赤ワインを入れる傾向が強いワイングラスです。

ワインを注ぐのはボウルの一番膨らんでいる部分の少し下あたりまでがスワリングもしやすく、おすすめです(約100ml)。

また、香りの変化を楽しみたいときは、少し多めにボウルの一番膨らんでいるあたりまで注いで、ゆっくり飲むのもいいでしょう(約120~130ml)。

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ブルゴーニュ型
ブルゴーニュ型に注ぐワインの適量
ブルゴーニュ型は渋みよりも酸味があるワインやピノ・ノワールのような華やかな香りが特徴の赤ワインに使われるグラスです。ボウル部分が丸みを帯びているのでワインを注いだときに表面積がより大きくなる作りになっていて、このような大きめのグラスほど、注ぐ量は少なめの方が香りをためやすいです。

ワインを注ぐ量は、ステムの先端から指2本分くらいの高さまで入れるのがベストです(約100ml)。

なかには少量(90ml程度)ずつ入れて楽しむ方や、最初に120mlほど注いでからゆっくり味わう方もいらっしゃいます。ご自身の飲み方に合わせて量を調整するのもいいでしょう。ただし、多めに注ぎたいという方も、グラスの一番膨らんでいる部分よりも少し下あたりまでにしておきましょう。

 
オーソドックスな赤ワイン用グラスに注ぐワインの適量
オーソドックスな赤ワイン用のワイングラスを使用する場合も、適量はボルドー型、ブルゴーニュ型と同じく100ml程度が基準になります。ステムの先端から指三本分以内の高さが目安と考えてください。

白ワインをグラスに注ぐ適量は?

白ワイン用のグラスは、赤ワイン用と比べて小ぶりな作りになっています。白ワインは冷やして飲むことが多いので、温度が上がらないうちに飲み切れるサイズということも重要なポイントなのです。なお白ワインは赤ワインと比べて”渋み”はほとんどないものの、スワリングすることで香りを引き出す効果があります。

キャンティ型
キャンティ型に注ぐワインの適量
キャンティ型は縦長の形状をしています。スワリングがしやすい量というのを意識して、こちらもステムの先端から指3本分以内の高さ(約100ml)を基準に入れてみましょう。

ちなみにこのキャンティタイプのワイングラスは、オレンジワインやロゼワインにも最適です


いろいろな種類のワインを飲む人は、まずはこの汎用性の高いキャンティ型を用意することをおすすめします。一方、ブルゴーニュの熟成したシャルドネなどのフルボディタイプの白ワインは、ボウル部分が大きいグラス(モンラッシェ型)を使用するのがおすすめです。

スパークリングワインをグラスに注ぐ適量は?

フルート型
フルート型に注ぐワインの適量
スパークリングワインは、縦長のフルートグラスに全体量の7割程度まで注ぎます。スパークリングワインはスワリングをすると泡が消えてしまうので、基本的にスワリングはおすすめできません。そのため、スティルワイン(=非発泡性ワイン)と違い、グラスに対して多めの量を注いでも問題ありません。

芳醇なタイプのシャンパーニュなどは、ボウル部分に丸みがあるバルーン型のグラスを使うこともあります。ただ、丸みを帯びたグラスにスパークリングを注ぐ場合は泡持ちがよくないため、少なめに注ぐのがポイントです。

脚のないワイングラスに注ぐ適量は?

脚のないワイングラスに注ぐワインの適量
家飲みで気軽に使える脚のないワイングラス。この場合も、香りを楽しんだりスワリングして空気に触れさせ、味わいの変化を楽しみたいのなら、他のワイングラスと同じく100mlを基準に注いでみましょう。脚のないワイングラスはスタイリッシュな縦長タイプなら指三本分程度、写真のような丸みを帯びたグラスなら指二本分程度の高さまで注ぐのが最適です。

ただし、ワインやシーンに合わせてカジュアルに楽しむ場合は、注ぐ量を変えても問題ありません。例えばキリッとしたさっぱり系の白ワインに氷を入れてロックスタイルで飲むなら、グラスの7分目くらいまで入れるのもいいですね。

ステム(脚)が短いワイングラスに注ぐ適量は?

ステム(脚)が短いワイングラスに注ぐワインの適量
写真のようにステムが短いタイプのグラスは、スワリングを前提としていないグラスです。そのため、赤白問わず半分くらいまでワインを入れてもいいでしょう。

カジュアルに楽しむグラスなのでラフに飲みたいという方におすすめですが、
普段よりちょっといいワインを飲むときは、ぜひステムやボウルがしっかりしたワイングラスを選んで味わってみてください。

ワインやグラスの種類に合った適量を知って、ワインをもっと楽しく! もっと美味しく!

自宅でたくさんの種類のグラスを用意している方は少ないかもしれませんが、「スパークリングワイン用」「白ワイン用」「赤ワイン用」の3つを準備しておくと、それぞれのワインの風味をより堪能できるのでおすすめです。これから準備する方は、白ワインに赤ワイン、ロゼワインにオレンジワインと汎用性の高い「キャンティ型」のグラスをチョイスしてみてください。

スワリングも最初は難しく感じるかもしれませんが、コツさえつかめばワインを一層美味しく飲むことができるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

ワイングラスに注ぐ適量をマスターして、より充実した家飲みライフをお過ごしください。
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