シングルモルトウイスキーとは? スコッチとの違いや国・地域ごとの味わいの特徴など、元バーテンダーが丁寧に解説します!

世界中で高まっているウイスキー人気。そのなかでも注目を浴びることが多いのが「山崎」、「白州」といった「シングルモルトウイスキー」です。人々を魅了するシングルモルトウイスキーとはどんなお酒なのか、スコッチとの違いや国・地域ごとの味わいの特徴など、知っておきたい基礎知識をまとめてお届けします。

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シングルモルトを知る前に。モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデットウイスキーの違いをおさらい

ウイスキーを原料や製造方法で分けると、「モルトウイスキー」、「グレーンウイスキー」、「ブレンデッドウイスキー」の3種類に大別できます。ここではそれぞれのウイスキーの定義や特徴について解説していきます。
 

・モルトウイスキーとは

モルトウイスキーとは、モルト(大麦麦芽)のみを原料にして単式蒸留機で蒸留して造られるウイスキーを指します。

風味が強く個性的な味わいに仕上がるため、個性を主張することから「ラウド(声の大きい)スピリッツ」とも呼ばれています。

さらにモルトウイスキーはシングルモルトとブレンデッドモルトに分かれますが、これらの特徴は後述します。
 

・グレーンウイスキーとは

グレーン(grain=穀物)ウイスキーはモルトのほか、トウモロコシや小麦といった穀物を原料に、連続式蒸留機で蒸留して造られるウイスキーを指します。

ライトで穏やかな風味とクセのないマイルドさが特徴です。そのため、個性的な風味のモルトウイスキーとは対照的に「サイレント(静かな)スピリッツ」とも呼ばれています。

ちなみに単独の蒸留所で蒸留し、ほかの蒸留所で造られた原酒を混ぜていないグレーンウイスキーを「シングルグレーン」と言いますが、単独で商品化されることは稀です。
 

・ブレンデッドウイスキーとは

ブレンデットウイスキーは、多種類(複数の蒸留所)のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンディング*して造られるウイスキーのことを指します。

単式蒸留のモルトウイスキーは風味豊かで複雑な味わいですが、飲みやすさが特徴の連続式蒸留のグレーンウイスキーをブレンドすることで、バランスの取れた味わいになります。そのため、比較的飲みやすく、かつ奥深い味わいに仕上がることが多いです。

日本国内市場では、「バランタイン」や「シーバスリーガル」、「ジョニーウォーカー」などが有名です。

*ブレンディング…モルト原酒とグレーン原酒を合わせて調合すること

シングルモルトはどんなウイスキー? スコッチとの違いは?

シングルモルトウイスキーのイメージ
シングルモルトはモルトウイスキーの一種ですが、その中でも単一蒸留所の複数の樽のモルト原酒をヴァッティング*して瓶詰したもののことを指します。蒸留所ごとに明確な個性が表れていて、蒸留所名がそのままブランドの名前になることが多いです。

シングルモルトは飲み方を変えることで、飲んだ時の印象や香りが変わるのが特徴です。シングルモルトのおすすめの飲み方は後述します。

*ヴァッティング…同じ種類の原酒(モルト原酒またはグレーンウイスキー)同士を混和すること


・シングルモルトとスコッチの違い

シングルモルトは製法によるウイスキーの分類の一種であり、スコッチウイスキーはスコットランドで造られたウイスキーを指します。スコッチウイスキーは世界5大ウイスキー*のひとつで世界中の愛飲家から支持を受けており、シングルモルトのスコッチウイスキーも数多くあります。

*世界5大ウイスキー…スコッチウイスキーの他、アイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキーを合わせて世界5大ウイスキーと言われている
 

・シングルモルトはなぜ人気?

シングルモルトは風味や味わいが個性豊かで、蒸留所や熟成年数の違いで味わいや香りが大きく変わるのが魅力のひとつです。手に入りづらい希少価値のあるシングルモルトは、コレクションする人や投資対象として集める人も増加傾向にあります。

近年では「白州」や「山崎」をはじめとして、「イチローズモルト」など日本のさまざまなシングルモルトが世界中で人気になっています。これらはジャパニーズウイスキーならではの繊細さと絶妙な味わいのバランスによって世界的な品評会でも輝かしい実績をたくさん残していて、今後も日本のウイスキーにはさらに注目が集まると予想されます。

シングルモルト以外も知っておきたい。 モルトウイスキーの種類まとめ

シングルモルト以外にも、モルトウイスキーにはさまざまな種類があります。主なものを一覧でご紹介します。シングルカスクやブレンデッドモルト、ピュアモルトという言葉を聞いたことがある人も多いかもしれませんね。
モルトウイスキーの種類 特徴
シングルモルト 単一蒸留所の複数の樽のモルト原酒をヴァッティングして瓶詰したウイスキー
シングルカスク ひとつのモルト原酒の樽からボトリング(瓶詰め)したウイスキー。樽ごとの個性を楽しめる
ブレンデッドモルト
(ヴァッテッドモルト)
複数の蒸留所のモルト原酒を混ぜたウイスキー。ブレンデットウイスキーと違い、グレーンウイスキーは使用されない
ピュアモルト モルトウイスキーのみを瓶詰したウイスキーのこと。ほぼ日本でしか使われてない。基本的にはブレンデッドモルトと同じだが、シングルモルトを含む場合もある

シングルモルトのおすすめの飲み方は?

シングルモルトのおすすめの飲み方
シングルモルトの風味や香りを最大限に楽しめる飲み方はストレートまたはトゥワイスアップ*と言われています。

ストレートやトゥワイスアップはシングルモルトの特徴が最も表れやすく、逆にロックスタイル(氷を入れる飲み方)はシングルモルトならではの豊かな風味や香りが閉じてしまうと言われています。

料理と楽しむ場合は炭酸で割るのも良いですが、トゥワイスアップは氷を使わずに常温の水を加えるだけなので温度変化が少なく、単体でゆっくりと時間をかけて楽しむのに最適です。

*トゥワイスアップ…ウイスキーに同量の常温の水を加える飲み方

シングルモルトの代表的な産地の特徴とおすすめ銘柄【スコッチウイスキー編】

ここではシングルモルトの代表的なスコッチウイスキーの産地の特徴とおすすめの銘柄を紹介していきます。

スコッチウイスキーの代表的な産地はスペイサイド、アイラ、ハイランド、アイランズ、キャンベルタウン、ローランドです。順に解説していきます。

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・スペイサイド

スペイサイドはスペイ川流域を中心とした比較的狭いエリアながら、全蒸留所の半数に近い50近くの蒸留所が集まっています。古くから大麦の名産地であり、良水と気候に恵まれているため、ウイスキー作りに適している場所です。味わいのバランスが良く、フローラルかつフルーティなアロマをもつモルトが多いのが特徴です。

代表的な銘柄は“シングルモルトのロールスロイス”と称えられる「ザ・マッカラン」のほか、「グレンフィディック」、「ザ・グレンリベット」などです。

\おすすめウイスキー/
ザ・グレンリベット 12年

薄いゴールドの色調で、花やフルーツを感じさせるアロマがあり、バニラや蜂蜜のニュアンスもあります。飲み込んだ後には爽やかな苦味が感じられるのが特徴です。
 

・アイラ

アイラは日本の淡路島くらいのサイズの小さな島です。豊富なピートが焚き込まれ、海風が吹く環境下で眠るモルトは、ヨード香やピーティさを持ち、どことなく“潮の香り”が感じられるのが特徴です。

南岸の「アードベック」、「ラガヴーリン」、「ラフロイグ」はスモーキー、「ブナハーブン」、「ブルイックラディ」は比較的ライト、「ボウモア」はちょうどその間くらいの味わいなので、アイラモルトの入門編としておすすめです。

\おすすめウイスキー/
ラフロイグ 10年

薄い琥珀色の色調で、薬品のような香りと鼻に抜けるスモーキーさがクセになるウイスキー。アイラらしいピーティな味わいの中に若干甘みがあり、複雑味が感じられます。好き嫌いははっきり分かれますが、一度ハマると忘れられない味わいに。
 

・ハイランド

東のダンディーと西のグリーノックを結んだ想定線の北部がハイランドに分類されます。広域にわたって蒸留所があるためハイランドの中でも、北部、東部、中央部、西部と4つに分けられることが多いです。東部は位置的にもスペイサイドの特徴に似ており、中央部はフレッシュで個性のあるモルトが揃っています。

\おすすめウイスキー/
グレンモーレンジ 10年

熟したフルーツや柑橘類を思わせる爽やかな甘みが感じられるアロマが特徴。クリーンで繊細な味わいを持ち、スコットランド国内でも人気のモルトウイスキーです。
 

・アイランズ

アイランズはスコットランド周辺の島々にある蒸留所を指します。切り立った山々と複雑な海岸線を持つスカイ島、野生の鹿が数多く生息するジュラ島など、それぞれの島によって地理や文化的条件が大きく異なっています。そのためアイランズのウイスキーの共通点を見つけるのは難しいですが、いずれも非常に個性的な味わいに仕上がっています。

アイランズでの代表銘柄は「ハイランドパーク」、「スキャパ」、「タリスカー」など。

\おすすめウイスキー/
タリスカー 10年

赤みがかったゴールドの色調で、海の潮の香りが感じられるシングルモルト。スモーキーさと余韻の甘さのバランスが良く、力強い味わいが特徴です。
 

・キャンベルタウン

キャンベルタウンは20世紀初頭まではモルトウイスキーの中心地として栄えており、30を超える蒸留所がありました。しかし現在では、スプリングバンク、グレンスコシア、グレンガイルの3つのみ。今では希少性の高い産地になっています。香り高くオイリーで、かつ塩っぽい風味をもつのが特徴です。

中でも「スプリングバンク」は、キャンベルタウンの伝統を受け継ぐ名酒として有名です。

\おすすめウイスキー/
スプリングバンク10年

薄いゴールドの色調で、樽の香りと潮のニュアンスが感じられ、後味にはほのかにバニラや木のニュアンスが残ります。
 

・ローランド

ハイランドと境界線を挟んだ南側のエリア・ローランドのシングルモルトは、ライトでスムースな飲み口が特徴と言えます。「オーヘントッシャン」、「グレンキンチー」、「ブラッドノック」などが有名です。また、グレーンウイスキー工場やブレンド業者の大半はローランドにあります。

\おすすめウイスキー/
オーヘントッシャン

紅茶やローストアーモンド、キャラメルのような香りがあり、繊細かつスムースな味わいが特徴。飲みやすいのでシングルモルトのエントリークラスとしてもおすすめです。

シングルモルトの代表的な産地の特徴とおすすめ銘柄【アイリッシュウイスキー編】

グレートブリテン等の西に位置するアイルランド島で造られているのがアイリッシュウイスキーです。アイリッシュウイスキーは、大麦麦芽や未発芽の大麦などを原料にしているのが特徴です。また2回の蒸留で造られることが多いスコッチウイスキーに対し、アイリッシュウイスキーは3回の蒸留を繰り返して造られるのが一般的です。

「ジェムソン」や「タラモア・デュー」、「ブッシュミルズ」は世界中で親しまれています。

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\おすすめウイスキー/
ブッシュミルズ 10年

1608年創業とも言われ、現在操業中のアイリッシュウイスキー蒸留所の中では最古の歴史を誇る蒸留所で、アイリッシュを代表するウイスキーといえます。ノンピートの大麦麦芽のみを使用し、伝統的製法の3回蒸留を経て、主にバーボン樽で最低10年以上熟成。蜂蜜やバニラなどの甘い香りが特徴で、深みのある味わいが楽しめます。

シングルモルトの代表的な産地の特徴とおすすめ銘柄【日本編】

ここ数年で世界中から一気に注目を集めているジャパニーズウイスキー。需要に追いつかず、現在でも品薄状態が続いているほどの人気です。ジャパニーズウイスキーはニッカの創始者である竹鶴政孝氏がスコッチウイスキーの製法を日本に持ち込んだことから、スコッチウイスキーと共通する部分が多いと言われています。

\おすすめウイスキー/
シングルモルト 白州

白州は20年かけて花崗岩層をくぐり抜けることで磨かれた南アルプスの天然水を仕込み水に使用し、モルト原酒だけで造られたシングルモルトウイスキーです。みずみずしさとスモーキーさが感じられ、キレのある味わいはストレートだけでなく、炭酸割りにもピッタリ。特に炭酸割りは和食にも合わせやすいフレッシュな飲み口になります。

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シングルモルトは一度ハマったら抜け出せないほど奥深い魅力を持っています。スコッチウイスキーだけでなく、アイリッシュウイスキーやジャパニーズウイスキーなど、さまざまな産地の特徴を捉えながら飲み比べをするとさらに面白く感じられるかと思います。

シングルモルトウイスキーは今後さらに価格高騰が見込まれるものもありますので、ぜひ吟味した上でお気に入りの一本を見つけてみてください。

※記事の情報は2024年1月18日時点のものです。
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