これなんだ? お酒グッズのクイズ ④

これはお酒を入れるカップなのですが、ある特殊な目的に使います。どんなことに使うのでしょう? ヒント:2個で1組です。

メインビジュアル:これなんだ? お酒グッズのクイズ ④

見かけは普通だけどわりと激しいことに使います。

ふたつあるのがポイントで、ひとつだけでは機能しません、でもパッとみたところ、普通のカップですね。ヒント2:材質が金属であることと、この曲線美は大切なポイントで、ある特殊なミッションを達成するためにこうなってるのです。

これ、すでに知ってる人以外は想像がつかないと思いますので、今回は答えを早々に発表します。


 

答えは・・・


ブルーブレイザー マグ



です。



ですが、名前だけ聞いてもわかりませんね。「ブルーブレイザー」は「カクテルの父」と称されるアメリカの超有名バーテンダー、ジェリー・トーマスが1849年に考案したカクテルとのこと。どんなカクテルなのでしょうか……調べてみたら、なかなか激しいものでした。この金属製のカップはこれはそのカクテルの専用器具です。カクテルの現物をお見せしたいのですがちょっと難しいので、マグが入っていた箱を見てみます。
「ブルーブレイザー」
1万円超えの値札も気になりますが、それより中心部に注目。拡大してみます。
それより中心部に注目。拡大してみます。
そうです。ブルーブレイザーとは、アルコールに火をつけて二つのマグの間を行き来させるという、恐ろしく派手なカクテルだったのです。宙を舞う青い炎をバーのお客さんに見せて楽しんでもらうのが主目的。ボトルやシェイカーなどを使ったジャグリングのようなパフォーマンスでカクテルを作る「フレアバーテンディング」を見たことがある人も多いと思いますが、この19世紀のブルーブレイザーが起源だとも言われているそうです。

マグの素材が金属だったり、底や口の部分が滑らかな曲線を描いている理由もこれで納得です。
 

ブルーブレイザーとはどんなカクテルなのか、このマグの箱の裏に書いてありました。

ブルーブレイザーとはどんなカクテルなのか、このマグの箱の裏に書いてありました。
ちなみにこのデヴィッド・ワンドリッチという人も、これまた超有名なカクテルの研究家で歴史学者。ジェリー・トーマスに関する著書もあります。

この箱裏面を、Googleさんの力を借りて翻訳してみると……


ブルーブレイザー4人分の作り方
① 作業場所の周囲から可燃性物質をぜんぶ片づける。バケツの水を手近なところに用意する。


のっけから物騒なことが書いてあります。

② ナプキンを何枚か敷く。
③ 沸騰した水の鍋を準備する。
④ エスプレッソカップを4つ用意。ブラウンシュガーをティースプーンで1杯ずつ、それぞれにレモンを刺す。
⑤ 半カップの沸騰したお湯をマグの一方に注ぐ。
⑥ カスクストレングスのシングルモルトスコッチウイスキーを5オンス、マグに加える。ウイスキーはアルコール度数50度以上でなければならない。
⑦ 長いマッチやライターで火をつける。
⑧ 手に両方のマグカップを持つ。マグに対し手は6時の位置。すばやく注意深く、火のついたマグの中身3/4を、もう一方のマグに移す。マグの側面から液体を注ぐこと。取っ手の延長線(12時)付近から注がない。


怖がって取っ手の延長線付近から注いだら、炎が手を直撃してやばいです。

⑨ 火のついた液体の3/4を最初のマグカップに戻す。
⑩ 昔、サンフランシスコでジェリー・トーマスがやったように、これを5回か6回繰り返し、少しづつマグの間の距離を伸ばす。
⑪ マグが持てないぐらい熱くなったら終わり。マグの上部をもう一方のマグの底で覆って炎を消す。エスプレッソカップに分けて注ぎ攪拌。冷たい水の中でマグカップを冷やす。



とまあ、なんとも危険な感じのカクテルです。ウイスキーのアルコールが燃えてなくなってしまわないのか? などと無粋なことは言わないで、バーテンダーさんのパフォーマンスに拍手を送って、完成したカクテルを一息であおるのが粋というものでしょう。

このカクテルをバーテンダーが実演している動画もたくさん上がっています。たとえばこれ。
プロのバーテンダーでも緊張しているのが伝わってきます。一般の人でこのマグを衝動買いしてしまった人もいるかもしれませんが、試してみたくなるのが人情だとはいえ、家では絶対やらないのが得策だと思います。

というわけで、今回の答えは、炎のカクテル「ブルーブレイザー」のパフォーマンスに特化したマグカップ、ブルーブレイザー マグでした。


 

ご協力いただいたのは・・・

バー・ツール ナランハ 渡邊隼人さん

バー・ツール ナランハは、東京・板橋区にあるバー用品の専門店。広い店内がバーとお酒に関するグッズであふれている様は壮観です。渡邊さんには、不思議なみかけのグッズをたくさん紹介してもらいました。同店は不思議なことにジャグリング用品と風船の専門店でもあって、数学者のピーター・フランクルさんをはじめ、日本中、世界中のジャグラーが訪れる店としても知られています。

バー・ツール ナランハ 渡邊隼人さん
取材協力:バー・ツール ナランハ

※記事の情報は2018年4月29日時点のものです。
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