早く帰った金曜日は香るビール
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
働き方改革も掛け声ばかりではないようで、早く帰ってくつろぐ人が増えています。東京メトロでは終業時間直後の18時台の乗車率が上がり、東京大学の調査では10年前に比べて帰宅時間が確実に早まったという結果が出ました。早く帰ると、ゆっくり家飲みする人も増えることでしょう。そんな時におすすめしたいのが香るビールです。4月のビールの表示基準の改正で、脚光を浴びたボタニカルを使ったビールも含めて解説します。
早く帰った金曜日は、自宅でゆっくり一杯
甘い香りは麦芽から
ビールの香りには、麦芽由来のもの、酵母など醗酵由来のもの、ホップなど副原料由来のものと、大きく3つあります。
麦芽由来の香りには、焙煎によるものと麦芽ほんらいの穀物の香りがあります。発芽した大麦を乾燥させるときに、煙で強くいぶすと燻製のような香りが付きます。ゆっくり加熱して焦がしていくとチョコレートのように甘い香りや、さらに強くローストするとコーヒーのような香りがでます。麦芽の穀物っぽさを感じさせる香りは、ビールから立ち上る鼻で感じるというよりも、口に含んだ時や飲みこんだ後に戻ってくる香りで感じることが多いようです。
大麦を発芽させてモルトにした後、加熱して乾燥させ。写真のように加熱の仕方でビールの色が変わり、焦げたような甘い香りが出てくる。
エール酵母はフルーティ&フローラル
一方、エールビールはイギリスやベルギーで発達したタイプで、発酵後に酵母が上に浮いてきます(上面醗酵)。このビールは果物のような香りや、花のようにフローラルな香りを出し、柔らかい口当たりとあいまって優しく穏やかな印象になります。
香りの決め手はホップ
ホップはスパイシーで草木を思わせる青っぽく感じる香りをベースに、華やかなものや柑橘系の香りをもつものなど、品種や産地ごとにさまざまな表情があります。さらに使用する量の多寡、加えるタイミング、加熱時間など複数の要素が絡み合って、そのビールの香りを形づくります。
4月に副原料にホップ以外のボタニカル(ハーブやスパイス)をビールに使用することが認められるようになりました。併せてビールの発酵が終った後で、ホップを投入することも認められるようになりました。これはドライホッピングと言われる手法ですが、ホップの香りがストレートにビールに出てきます。従来はドライホッピングをすると「発泡酒」と表示しなければならなかったので、あえてやらなかったブルワリーもあったと聞きます。「ビール」と表示できるようになった今、ホップの香りを存分に生かしたスタイルのビールが増えていくはずです。
ボタニカルが複雑に香るビール
ベルギービールに多い修道院でつくられるビール(トラピストビール)は、たくさんの種類のボタニカルを使って、複雑で深い味わいに仕上げたものが見られます。アルコール度数が8%程度の濃厚なものもあり、のど越しではなくゆっくり味わいを楽しむスタイルになっています。
きっと好みのものが見つかるはずです。
※記事の情報は2018年5月29日時点のものです。
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