話題の書籍「バターコーヒーダイエット」の監修者に聞いたダイエットの仕組みとノウハウ〈後編〉
バターコーヒーは、結局のところ、どのように体に働きかけてダイエットを可能にするのでしょうか。バターコーヒーダイエットを勧める書籍の監修やMCTオイルに関する著書などを通して、糖質制限や「ケトン食」による健康管理を提唱する医師・宗田哲男先生に、バターコーヒーダイエットの仕組みやその実践について、お話をうかがいました。
お話をしていただいたのは…
宗田哲男(むねた・てつお)先生【医師】
1947年生まれ。北海道大学理学部地質学鉱物学科卒。卒業後国際航業で地質調査などに従事した後、医師を志して1973年帝京大学医学部入学。卒業後は病院勤務を経て1992年千葉県市原市に宗田マタニティクリニックを開院。監修「MCTオイルをプラスでさらに効果的 ケトン体でやせる! バターコーヒーダイエット」のほか、著書に「最強の油・MCTオイルで病気知らずの体になる!」「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」「『ケトン体』こそ人類史上、最強の薬である 病気にならない体へ変わる”正しい糖質制限”」などがある。糖尿病妊婦、妊娠糖尿病の糖質制限による管理で成果をあげている。
妊婦さんにも肉や卵、オイルのケトン食を推奨
宗田 うちのクリニックでお産する妊婦さんたちは、みんなケトン産生食をお勧めしています。ケトン食は、糖尿病妊娠などの場合、ケトン産生食は、もっと緩やかな糖質制限の食事です。帝王切開は減っちゃうし、自然分娩は増えるし、妊婦さんもみんなうちに来て、糖質を摂らないようにして、お肉、卵をいっぱい食べて赤ちゃんを産んでいる。
妊婦さんにどんな説明をするかというと、ニワトリの卵です。ニワトリの卵って糖質ゼロなんです。それがヒナになるのに、妊婦さんがお腹の赤ちゃんのためにお米を食べる理由はないでしょうって言うと、みんな「ああ、そうですね」と納得します。
ところが今の日本の栄養指導は、お米を60パーセント食べなさいということになっているんです。でも妊婦さんの中にいる赤ちゃんは肉の塊で、3キロの赤ちゃんを作るために、たんぱくと脂肪がいっぱいいるわけ。
卵の黄身っていうのは、食べ物全部の中で、一番コレステロールが多いんです。コレステロールが多い卵からヒナができるわけです。コレステロールは悪者でしょうか? ヒナは健康でなく、心筋梗塞などになるでしょうか。違います。ヒナの細胞を作るのに、卵のコレステロールが必要なんです。
妊婦さんも実は妊娠後期に、普通の人は200のコレステロールが300になるんです。だけど、妊婦のコレステロールを薬で下げろという医者は一人もいません。妊婦に薬は飲ませられないからです。
私は分かりました。妊婦のコレステロールが高いのは、赤ちゃんの身体の材料だからです。赤ちゃんは脂肪とコレステロールをお母さんからもらって、ケトン体で自分の体を作っているのです。だから生まれた赤ちゃんもケトン体が高くて、脂肪だらけなんです。吹き出物もよくできるけど、できるのは脂ニキビなんです。赤ちゃんの体って、皮下脂肪が厚いんです。皮下の脂は全部、いい意味での脂肪なんです。炭水化物は赤ちゃんにありません。
赤ちゃんはお弁当と水筒を持って生まれてくるってよく言うんだけど、もしお母さんが運悪く倒れても、温度さえちゃんとあれば赤ちゃんは死なないんです。1週間くらい食べなくても、たぶん赤ちゃんには大したことないです。それぐらい体を守っています。だから卵の話をすると、たいていの妊婦さんは、お肉や卵を食べれば、炭水化物をいっぱい食べる必要がないということを納得してくれます。
MCTオイルは、妊婦さんに全員配っています。妊娠した10週くらいに。何がすごいってこのオイル、便秘しないんです。便がツルッと出るんです。これもそうなんだけど、これ多分、どんどん飲んでいる人は便秘しないはずです。オイルの持つ効果っていっぱいあって、多く飲みすぎると下痢するけど、ちょうどいい量だと、妊婦さんに多い痔や便秘も防ぐんです。
それから僕は、妊娠初期のつわりの人には、生クリームを勧めています。生クリームをホイップしないで、そのまま飲みなさいって。あれは飲むとドロッとしているので、吐きたくても吐けない。意外と入っちゃうんです。すると結構栄養があって元気なんです。だから、卵は鶏のいいとこ取り、生クリームは牛のいいとこ取り、そしてそういう動物性食品をうまく摂るとうまくいくんです。そんな話をいつも妊婦さんにしています。
ゾウやカバは、草しか食べないのに、みんな太っているでしょう? ところが、ライオンやヒョウは、肉を食べているのに太っていません。だから、穀物のほうが太るんです。これを言うと反対する先生もいます。ただ明らかなことは、この油の入ったコーヒーを飲んでいると痩せるということです。これに消費者が気づくと、バターコーヒーはますますヒットしてしまうと思います。
一流アスリートが使っているMCTオイル
宗田 いまや、世界中がケトン体に注目しています。日本でも2016年の8月に、国立精神・神経医療センターの部長の功刀先生が、認知症ではない高齢の人に、MCTオイルを飲ませると、認知機能が上がるということを見つけ、論文で発表しました。MCTオイルというのは、ココナッオイルなどから精製する油です。さきほどのてんかん発作のケトン食も、ココナッツオイルやMCTオイルを使っているんです。
MCTオイルは、飲むとすぐにケトン体が上がるところが、ほかのオイルと違います。たいていのオイルは炭素の数が多い長鎖脂肪酸。MCTオイルのMはmiddleという意味で、Cがchainだから中鎖脂肪酸。私は中鎖脂肪酸は最強の油だという本も書いています。認知症、糖尿病、うつ病の予防になる。病気知らずのオイルです。
なぜ中鎖脂肪酸が体に良いのか。早くエネルギーになって使われてしまうからです。早くエネルギーになるということは、ケトン体になるのに一番早いということです。ケトン体というのは、ものを食べなかったり、油だけ取って米やパンを食べないようにすると出てきます。米やパンを食べると、ケトン体は消えてしまいます。
中鎖脂肪酸というのは、今までは相手にされなかった脂肪酸です。ほとんどの脂肪とは違うんですね。このココナッツオイルだけが、中鎖脂肪酸がすごく多かった。
中鎖脂肪酸は蓄えられません。すぐ使われるところが、MCTオイルの優れたところなのです。MCTだけが、すぐケトン体が出てくるんです。即戦力。だから、冷凍パック詰め宅配便のようなものが、MCTオイルです。体に入ったら、すくチンして食べられる。ほかのものは、いろいろなところで消化吸収しないといけないんだけど、簡易的に使えるところがいいところです。体に溜まらないんです。身体に入れ過ぎれば下痢しちゃいます。ちょうどいい量は人によって違いますが、MCTオイルは、すごいものだということがわかってきた。
今ではMCTオイルの研究も進んでいて、ココナッツオイルから一部のいいところだけを取るやり方も出てきています。炭素の数が多いのが長鎖脂肪酸、少ないのが短鎖脂肪酸です。中鎖脂肪酸は炭素が8個から12個なんですけど、そのなかから8個と10個の部分だけを取り出したMCTオイルというのもあって、いろいろなオイルの会社が挑戦しています。
宗田 サッカーの長友佑都選手は、日本からイタリアに渡った当初、イタリアのパスタやドルチェが大好きでした。その結果、太って体の切れが落ち、成績が悪くなりました。セリエAのチームの監督たちは、選手にパスタを食べるなと命令するそうです。パスタを食べたら90分走れない。途中でお腹がすくんです。補給しなきゃいけなくなる。サッカーもマラソンと同じで長時間労働ですから。
それで長友選手は何をやったかと言うと、甘いものが好きだったけど、白い砂糖を断った。そして、血糖値の乱高下をしないような食事をしだした。糖質制限の本を何冊もむさぼり読んだそうです。そして、やがてケトン体をエネルギーにすることに気がついて、今はセミケトン食というのをやっています。主に肉食。MCTオイルも日本から取り寄せて、食事にかけて使っているそうです。このオイルのすごいところは、油がエネルギー源になるということです。長友選手がこんなことを書くものだから、一流のスポーツ選手たちが次々とケトン食を採り入れるようになっています。
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バターコーヒーがダイエットにいい理由
宗田 バターコーヒーは砂糖を入れずMCTオイルを入れます。オイルを入れて飲むだけだから簡単です。では、バターコーヒーにバターは何で入っているかと言うと、これは、ひとつはバターの持つ豊富な栄養、それからおいしさ。実はMCTオイルって、においも味もないんです。だから、すごくいいオイルなんだけど、おいしくないし、まずくもないんです。魚の赤身にこれをかけるとトロになるし、みそ汁に入れると豚汁のようにすごくリッチになりますが、いまひとつ足りない。
「最強の食事」の著者が見つけたチベットのコーヒーは、おいしかった。おいしいっていうのは、我々が続けていくときに、一番大事なことです。いいもの、だけでは続きません。コーヒーが好きな人はMCTオイルだけでもいいのですが、もうひとつ上を行って、バターを入れたんですね。
──そしてバター。「最強の食事」でも先生の著書でも、グラスフェッドバターがいいとされています。
宗田 「最強の食事」のバターの入れ方が良かったのは、グラスフェッドバターを使ったところです。確かに、草を食べないで穀物を食べている牛のグレインフェッドバターが世の中の主流です。グラスフェッドは安いものでも4倍くらいの価格。だけどグラスフェッドバターというのは、香りも良くておいしくて、しかも不飽和脂肪酸が5倍くらい入っています。ともかく、栄養に満ちていて、風味があって味が良い。だからちょっと贅沢な価格なんです。
でもこの著者は考えた。朝食を食べずにコーヒー1杯だから、少しそこに贅沢をしてもいいじゃないかと。1キロ2000円もするバターだけど、1カ月分に割れば、1回数十円。朝食で卵2個にハムやウインナーを付けて食べている分を、コーヒーとオイルにもう1点だったら、ちょっと贅沢できる。そこでグラスフェッドバターという、おいしさと栄養価の多いものを足してミキシングしたんですね。
グラスフェッドバターは、風味もあっておいしいんです。バリエーションも楽しめます。あるときはMCTオイルだけを入れるやり方もあるし、あるときはバターだけを入れる手もあるし、あるときはコーヒーだけでもいい。いろいろやったほうが飽きずに、毎日続けられる。
バターコーヒーを飲んで、朝はコーヒー、昼もコーヒー、夜を肉食にすると、油を摂っているのに、体重がどんどん減っていきます。
バターコーヒーを取り入れたダイエットの仕組みの価値というのは、一つは、脂肪を使うことによって、ケトン体を使うことです。そして、今までは悪いものとされてきたケトン体が、最近、良いものだと分かってきたのと、流れが合っているわけです。
「最強の食事」の中に、まだケトン体という言葉は出てきませんが、僕の本ではケトンが出ることの価値を書きました。たぶん世界で初めてバターコーヒーとケトン体を語ったのです。バターコーヒーダイエットを実践している人のケトン体を測ると、上がっているんですね。それが起こるとお腹がすかない。お腹がすかないから、おいしいだけじゃなくてダイエットに役立つわけです。
太るのは糖質。要するに誤解っていうのはここですね。脂肪が太るという誤解。これが最大の誤解だと思います。インスリンの出ない飲料が待たれていた。バターやMCTオイルの入ったコーヒーが最適な飲料なわけです。
今、バターコーヒーの体験者が、私のFacebookにコメントを寄せてくれています。みなさん、おいしい、ちゃんと満腹感がある、飲むとほかのものを食べたくなくなる、と書いてくれています。ただのコーヒーでは満腹感はありませんが、バターとMCTオイルは腹持ちがいいから余計なものをあまり食べなくなります。それで体重計に乗ると毎日0.5kgずつとか減っているんです。
夜寝る前にご飯を食べないで肉だけ食べて体重を量って、朝起きてまた量ると体重が減っています。夜中に糖がないから体が糖を作るんです。糖は体に絶対必要です。赤血球は糖がないと動かない。絶対必要なものだから、食べなくても体で作れるようになっているんです。だから絶食してもしばらくは死なない。
自らの糖尿病を糖質制限により克服
宗田 私はブグブクに太っていた時代がありました。体が甘いもの中毒になって、欲しがるんです。アイスクリームが大好きで、夜に10本くらい食べたことがあります。食べだすと止まらない。そして、医者でありながら2008年には糖尿病と診断されてしまったのです。
それからは糖質制限に目覚めて、甘いものをやめて肉食中心にしました。そうすると、そんなにお腹がすかなくなるんです。今は朝と昼をバターコーヒーにして、夜が肉食を中心に好きなものを食べています。炭水化物は基本的にはあまり摂っていません。1日50グラムぐらいまではいいだろうというレベルにしています。50グラムというと、寿司を5貫食べられるくらいの量。ご飯茶碗1杯がだいたい50グラムです。それでも糖質制限になります。
結果的に、糖尿病の診断を受けてから半年間で15キロくらい痩せました。現在は体調もいいし、糖尿病も治りました。ヘモグロビンA1cの数値は6.0から上が糖尿病ですが、それが9.0ありました。今では5.4くらいです。体重も減って、ガンマGTPが高い脂肪肝も治りました。血圧も170あったものが、薬なしで120と、どこを取っても健康になりました。それで感激して、そういう食事法をみんなに勧めています。
私は毎日、出産、手術、外来と休みなくやっていて昼休みはありません。看護師は休んで食事をしていますけど、私は休まずバターコーヒーを飲むだけ。それだけで動けます。
うちの奥さんはラクですよ。朝はコーヒーを淹れてオイルを足すだけですから。自分で作るときはバターは面倒になってきたのでもうバターは入れなくなっていますが、ファミリーマートのバターコーヒーが出たおかげで、バターも摂れる。我が家ではこれをまとめて買ってあります。運転しながらでも飲める。
──やはりバターが入っていると、腹持ちがいいのですか。
宗田 かつてはオイルも使わないでコーヒーだけでダイエットをやっていた時代もありました。夜にお肉をいっぱい食べると、朝も昼もお腹がすかない。つまり普通の油とお肉をちゃんと摂っていれば、お腹はすきません。ただ、朝と昼に何も食べないのは、けっこう寂しい。バターコーヒーを使えばたやすく続けられるというメリットがあります。これだけが寂しければ、ウインナーやハム、目玉焼きとか、そういうのを足すのも、いいかもしれません。
──ダイエットの期間はどれくらい必要なのでしょうか。
宗田 僕は最初の3カ月で、だいたい10キロ痩せました。6カ月たってCTを撮ったら、内臓脂肪も皮下脂肪も半分になっていました。糖質を摂らないでいて痩せる方法は、誰にでも確実にできます。まずは自分の決めた目標に向けて3ヶ月間やってみることです。問題はリバウンドですが、バターコーヒーを使えば満足感がありますから、リバウンドしにくいと思います。どこまで自分が痩せたいかは個人差があります 私のように病気だった人は、意識が違うから必死でしょうし、ただ痩せたいという人は、初期の目標を達成したら、普通のご飯生活に戻ってもいいと思います。
糖質を摂らないで朝昼バターコーヒー、夜はお肉という食事を続けるとどんどん痩せていきます。少し不思議だけど幸せですよ。だってお肉や卵が食べられる。ステーキをたらふく食べて米だけちょっと控える。それでいけちゃう。自分で決めた目標を達成したらそこでやめて、また食べはじめても構わない。そんなに難しい話ではないんです。
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ファミリーマートのバターコーヒー
宗田 もちろん、発売されたらすぐに飲み始めましたよ。バターコーヒーを自分で淹れるのは、少し面倒なんです。ただバターを入れればいいのではなく、ミキシングをしなくてはいけません。バターを入れただけだと、油が浮いたコーヒーになっておいしくないんです。ブレンターで泡が立つまで撹拌して、ミルクコーヒーの色にする。この撹拌は少し面倒です。
ファミリーマートのバターコーヒーの素晴らしさはそこにあります。面倒なことをしなくても、コンビニで買ったらそのまま飲めちゃうんだから。これだけの商品を新しく企画して、オイルやコーヒーのメーカーがこだわって作った。これがすごいですね。
はじめストローで飲んでいて、どんな色なのか気になったので、開けてコップに移して見てみました。そうしたら、自分でブレンダーを使ってよく撹拌したバターコーヒーと同じ色をしています。ファミマさんはすごいことをやったと思いましたね。本物を作った。オイルメーカーさんもコーヒー屋さんもみんなが苦労したと思います。何よりもおいしいことがすごい。これがヒットしているのは、偶然じゃなくて、おいしいからでしょう。だから一度飲んだ人がリピーターになるんだと思います。
砂糖を使わないことに気が付いたファミリーマートは偉いですよ。砂糖を使ってしまうとケトン体は出ないしインスリンが出てきます。インスリンが出るとお腹がすくので、また食べたくなる。バターコーヒーはインスリンが出てこない飲み物だから、お腹がすかないんです。
しかもこれ、砂糖は使わずケトン体がすぐに出る中鎖脂肪酸のMCTオイルが使われている。ずっと腹持ちが良くて、満足感があって、しかも痩せちゃう。朝をこれだけにするのもいいし、自分に厳しくいきたい人はお昼もこれで済ませて、夜だけ普通に食べるのもいいと思います。
MCTオイルの品質にもこだわったでしょう? それから、バターにもグラスフェッドを選んだ。グラスフェッドじゃないと原価は5分の1で済むんだけど、不飽和脂肪酸が多かったり、ビタミンA、Dなどの入っている量が全く違うんです。質が高いから、原料は高価なんですよ。価格を抑えた商品にこだわったものを入れるっていうのはきっと勇気が必要だったろうと思います。
そして、それを撹拌して、油が浮かずに90日間持って、いつでも飲めるようにした。不二製油さんの技術で、水と油を混ぜるという一番大変なところをやってしまった。しかも冷たい状態で保てているというのがすごい。自分で撹拌して作ったら、冷めたらすぐに分離しますから。
それから価格の安さ。今はいいものは高くても買うから一番安いものが選ばれるという時代でもないのに、それでも手軽に買える価格に抑えたことはすごいですね。
高齢化社会とコンビニエンスストア
宗田 日本は世界で一番長生きする国になってきたけど、倒れてから寝たきりになって死ぬまでの間が5年、10年と世界一長いんですよね。健康寿命という言い方があって、自分の足で立って動いている期間の長さでいうと、日本の男性も女性もそれほど長くはない。なぜかというと、日本では医療が良くなって助けられるというのもあるけど、最後に認知症をはじめ、いろいろな病気になりやすいという面があるんです。
いまはお年寄りほどコンビニに行っておにぎりを買ったりするわけだけど、そこで認知症にいい食品を手軽に買えたら素晴らしいですよね。バターコーヒーがきっかけになって、いろいろなものを変えていくかもしれません。自分では作れないけど、コンビニに行けば簡単に摂れるものができたというのが、このファミマのバターコーヒーの素晴らしいところだと思います。しかも値段が安い。自分でグラスフェッドバターを買って作るより安い。大量に製造するからコストが下げられている。それを知恵を使って実現してくれたというのが、すごいと思いますね。
一方で、高齢化社会とは少子化社会のことであって、将来を担う子どもたちを大切にする必要がある。子どもはコーヒーは飲まないから、子どもが飲めるような食品にMCTオイルやバターがうまく入れたものが、いずれ出てくるんじゃないかと思います。
新登場「スイート」。おいしいさへのこだわりが素晴らしい。
宗田 私はふだん甘いものは飲まないのでまだ試していませんが、新しい「スイート」は、オリジナルに比べたらどうなのか一度は飲んでみたかったんです。これ砂糖ではなくてステビアを使っていますね。これも賢いところです。
(一口飲んで・・・)
宗田 あ、やさしい甘さだね。これ、いいですね。何も言わなければ、砂糖が入っていないとは気がつかないんじゃないですかね。いいですね。
──バターコーヒーはSNSでも数多く投稿されていますが、そのなかに「バターという響きからカフェラテのようなまろやかさをイメージしたのに苦かった」というコメントが結構あったのです。それでまた考えて、苦いのが苦手な人でも飲めるように開発されたのがこの「スイート」です。
宗田 うん、これはおいしい。こういうものを作ったというのがすごい。これが売れれば売れるほど、けん引役になってくれると思います。キャンディーもできたけど、このアイデアもいいね。どれも、おいしいものを作るのにこだわったところがすごいと思います。難しいものをおいしくした。おいしから毎日続けられる。次は何をやる気なのか楽しみですね。
──ケトン体のことをもっと消費者が知れば、もっと盛り上がりそうですね。
宗田 一気にすごいことになるという気がします。私たちの考えには反対論も多いかもしれません。でも、反論がいくら出ても、もう時代はこっちに来ていて、最近は糖尿病学会の幹部の皆さんも、ケトンは悪いものではないと言うようになっています。いろいろな学者が、認知症にいいことも発言しています。
大学病院で、ケトン体で脳腫瘍の治療をしているところもあります。そこでは転移が小さくなっていったり、脳腫瘍そのものが小さくなっていったりという実績があります。がんに使っているところは、どんどん増えているんです。
そういう発表がどんどん出だすと一気にいきますね。もう少しです。糖尿病だけじゃないんです。がん、認知症。歯周病にも、それからアトピーにもいい。膠原病、潰瘍性大腸炎みたいなやつにもいい。ほとんどの昭和になって増えた病気は、糖質過多に関係しているんですよ。この現代に、糖を使い切るために徒歩だけで移動したりエアコンなしの生き方はできないでしょう。それなら、食べ物で調節しないといけない。
変わりつつある私たちの食品
宗田 私たちは、肉、卵、チーズ、葉物野菜、魚をお勧めしています。一番いいのは卵ですね。安い。お肉は限度があります。日本国民が全員お肉だけを食べたら足りなくなっちゃう。中国の人がみんな糖質制限に目覚めたら大変です。卵も足りなくなる可能性がありますが、MCTオイルはココナッツオオイル起源なのでまだまだ作れると思います。
──いまは多様な糖質制限の商品が出てきていますね。
宗田 ご飯を炊くときに糖質3割カットする炊飯器も出てきていますよね。炊飯の途中で自動的に水を抜いて別のお湯を入れます。そうすると抜いた水の中に糖質入っているから、炊きあがったときに糖質を3割カットしたご飯ができあがります。それに、最近はこんにゃく米というのもあります。これ、品質が向上してなかなか捨てたもんじゃないレベルになっています。
こんにゃく米も糖質5割カットのものが作られていて、さらに糖質カットの炊飯器で炊くと、一層糖質がカットされる。お米の格好はしているけどお米でないものが、だんだんできつつあるんです。その気になればこんにゃくも生産量をいくらでも増やせます。以前のこんにゃく米はおいしくなかったんだけど、今のものはチャーハンにしたら区別が付かないですよ。100パーセントこんにゃく米なのに、米100パーセントのものよりおいしいくらいです。もっとすごいのは、そのこんにゃく米は、1日置いても2日置いても粒が崩れないし、傷みにくいこと。だから、おじやとかリゾットにすると、翌日温めても、また同じように食べられる。
芋類でも、ポテトを食べるとご飯食べているのと同じになっちゃうから、糖質の少ないキクイモという名前のイモもあります。あれはショウガの一種です。精肉メーカーもビールメーカーも。代替食品や飲料について、医者以上に、食品メーカーさんがはるかに進んだ研究しています。米、バン、麺、調味料やオイルの分野で、いろいろな専門の業態の方が頑張っているんです。
今、いいものでおいしいものが作られつつある。一昔前とはちょっと違う。ただ糖質がなければいいんじゃなくて、糖質のあるものよりおいしいものを作っちゃおうくらいの勢いでやっているから、すごいと思います。
これからもいろんな産業が関わってくると思いますけど、まず食品の会社が気がついて、国民の健康のための食べ物を提供してくれたら、みんなが幸せになると思います。バターコーヒーは、そうした変化のきっかけになる商品だと言えるのではないでしょうか。
【後編おわり】
バターコーヒーとは何なのか。なぜいいのか。これで多くの謎が解けたように思います。話し出すと止まらない大変な熱量の持ち主である宗田先生。その活力も毎日のバターコーヒーが生み出しているのかもしれません。先生、ありがとうございました。
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