〈週末チャレンジ①〉ビールがすすむソーセージを手作りしよう!

初めてのソーセージ作りは、想像以上の長く険しい道のりに。でも、作り立てをビールと一緒に頬張ったときの美味しさは感動ものでした!

ライター:千鳥子千鳥子
メインビジュアル:〈週末チャレンジ①〉ビールがすすむソーセージを手作りしよう!
市販されているものを買うのが当たり前となっている、あんなおつまみやこんな酒の友。実は家で手作りできるものも意外とあるんです。ただし、それには時間と手間と根気が必要。でも仕事も家事も家飲みも「時短」ブームの昨今だからこそ、オフの日くらいはあえて「わざわざ手間ひまかける」ことで、料理する時間そのものを楽しみ、その先でしか享受できない美味しさを味わいたいと思ったのです。

その1回目としてチャレンジするのは「ソーセージ作り」。パリッと歯ざわりが良くジューシーで、ビールがグビグビすすんでしまう…。そんな完璧なソーセージの完成イメージが頭の中に出来上がったところで、早速レッツトライ!

調理の前に、必要なものを揃えます

今回ソーセージを作るにあたっては、Amazonレビューでも「丁寧でわかりやすい」と評判の良いこの本に指南役を務めてもらいました。家庭科の教科書のような素朴な装丁がいかにも実用書という感じで信頼できます。
 
『遊び尽くし 手づくりハム・ソーセージ (Cooking & home made―遊び尽くし)』
松尾 尚之(1997) 創森社


この本を読んでもわからないことは、様々なネット情報を寄せ集めて参考にしました。

次にソーセージ作りに必要な道具がこちら。
ソーセージ作りに必要な道具
ひき肉をこねるときに使う大きめのボウル、調味料やスパイスを量るはかり、腸にひき肉をつめるためのしぼり出し袋と口金、できたソーセージを茹でる大きな鍋、ソーセージ内部の温度も計れる先が針状になった食品用温度計、計量カップ、マチ針、調理用手袋、あと今回は結局使いませんでしたがタコ糸も必要であれば。

道具を揃えたら、次は材料を揃えます。

まずは主役の豚ひき肉です。本によるとひき肉は精肉店で挽いてもらった新鮮なものが良く、赤身と脂身の理想のバランスは7:3で、なおかつ挽くのは1回だけ。作りやすい分量は1kgだそうです。近所のお肉屋さんでソーセージを作りたいと伝え、本の教えの通りに豚肉を1㎏挽いてもらいました。
豚肉を1㎏挽いてもらいました
赤身7:脂身3の割合で挽いてもらった豚肉
きれいなピンク色で、粗挽きです。肉屋のおじさんいわく、「さつまいもとハーブを食べて育った豚だから、絶対美味しいソーセージができるよ」とのこと。そんなお墨付きをもらったからには失敗できません。気が引き締まります。

次は、肉を詰める羊腸を用意します。デパートや大きめのスーパーのスパイスコーナーにも置いてあるそうですが、私はAmazonで取り寄せました。Amazonの商品情報には4mの長さの腸で1kgの肉を詰めるのにちょうど良いと書いてありますが、本には1kgの肉を詰めるには羊腸約10m必要とも書いてあります。迷った末、とりあえず4mのもの(740円)を2本購入することにしました(これは後で分かったのですが、腸の口径によっても肉を詰めるのに必要な長さは変わってくるので、長めに買っておいたほうが良いです)。こんな風にロール状になって塩漬けされています。
袋入り羊腸
ロール状になっている
そして、ひき肉に混ぜ込む材料を用意します。肉1㎏に対し、塩は16~17g、砂糖6g、つなぎの役割をする卵1個と牛乳少々。味の決め手となる基本のスパイスは、白コショウ3g、ジンジャーパウダー2g、ガーリックパウダー1g、ナツメグパウダー1g、ローレルパウダー1g。さらにおろし玉ねぎ20gと氷水50ccも用意します。
基本のスパイス
基本のスパイス
シンプルなノーマルバージョンのソーセージの他に、今回はホットチリ系とペッパー&ハーブ系のアレンジバージョンも作ってみたかったので、チリペッパーと粗挽きコショウ、乾燥バジルも用意しましたが、ここは皆さまのお好みのハーブやスパイスで。
アレンジバージョン用の追加スパイス
アレンジバージョン用の追加スパイス
道具と材料が揃ったら、いよいよソーセージ作りを開始します。今回筆者が作るのはボイル(茹でる)ソーセージ。お店によくある表面が茶色のソーセージは、生ソーセージを茹でる前に乾燥+燻製の工程を入れたものなんだそうですが、今回はなにしろ初めてのソーセージ作りなのでシンプルにボイルで。その代わりに、茹でたソーセージを少しフライパンで焼いたのも作ってみたいと思います。

初めてのソーセージ作りは、なかなか険しい道のりでした

本やネット情報にはソーセージ作りで何より重要なことは「肉の温度を上げないこと」と書かれています。ソーセージは適度に脂身の存在感を残したほうが美味しく仕上がるらしいのですが、肉を混ぜるときに注意しないと室内の温度や手の体温で脂身が溶けて赤身と混じってしまうのだそうです。なので、肉はギリギリまで冷蔵庫で冷やしておき、先に羊腸の処理や肉に混ぜ込む材料の準備を済ませておきます。

まずは羊腸の塩抜きからです。くるくるロール状になった腸をほどいたら、水を張ったボウルの中でやさしく塩を洗い落とします。その後さらに水を代えて、ほどいた腸を水に30分浸けて塩抜きします。
ロール状になった腸をほどく
水に浸けて塩抜きする

しかし30分後、私はとんでもないミスを犯していたことに気づきました。なんと2本の腸がボウルの中で絡まり合っていたのです。焦って無理にほどこうとするほど、もつれにもつれて団子状態に。
もつれにもつれて団子状態の羊腸
心を落ち着かせて、水の中でゆっくり揺すりつつ絡まった部分をほどいていきます。結局、もつれた腸をほどくのに40分くらいかかってしまいました。長い腸を塩抜きするときは、ボウルよりも平なバットに水を張り、絡まないように1本ずつ広げて浸けたほうが良いと思います。

気を取り直して次の工程へ。塩抜きした2本の腸のうち1本を、しぼり出し袋の口金にはめて、たぐり寄せるようにセットしていきます。この作業は水の中で行うと、腸の中に水が入りホース状になって口金にはめやすくなります。とはいえ、4mもの腸を口金にたぐり寄せていく作業は結構根気がいります。
羊腸を口金にセットしていく
羊腸をたぐりよせる
ようやく羊腸のセットが完了ました。

次はひき肉を調味して混ぜる作業です。冷蔵庫から出したばかりの冷たいひき肉を大きめのボウルに入れます。肉の温度を上げないように、混ぜる手も冷水で冷やしておきます。寒い…。
手を冷やす

肉にあらかじめ準備しておいた分量の塩、砂糖、おろし玉ねぎ、基本のスパイス、卵、牛乳を加えて…
肉に材料を入れていく

さらに肉の温度が上がらないように用意した氷水を半量加えます。
氷水を半量加えます

この状態で肉を手早く、でもしっかりと肉に粘りがでるまで混ぜていきます。
手で混ぜる
この作業のツラさたるや…。手が冷たいのを通り越して、途中から痛くなってきました。フードプロセッサーの力を借りたいところですが、モーターの熱で肉の温度が上がるのであまり良くないと。でも冷たい。本当は手を使ったほうがまんべんなく混ざるのはわかるのですが、心が折れて途中からマッシャーで混ぜることにしました。
マッシャーで混ぜる

肉を混ぜたら、いよいよ腸に肉を詰める作業です。肉は1/2ずつに分けて、半分はアレンジバージョン用として冷蔵庫で保冷。残り半分の肉のうち適量を先ほど羊腸をセットしたしぼり出し袋の中に入れます。口金に羊腸をすべてたぐり寄せた状態で、口金から1cmくらい肉をしぼり出します。こんな感じ。
口金から1cmくらい肉をしぼり出します
しぼり出した部分は切って捨てます。この工程は口金内の空気を抜くために必要なんだそう。

その後、羊腸の先を少し引っ張って、その部分を結びます。
羊腸の先を少し引っ張って、その部分を結びます

そして、袋の上から肉をしぼり出してみると…
しぼりだす
おおー! 肉がにゅるっと出てきました。ちゃんとソーセージっぽくなっています。

この調子でどんどん詰めていきたいところなのですが、肉をしぼり出すのにこれまたかなり力が必要なのです。
しぼり出すのにかなりの力が必要
どうやらしぼり出し袋に肉を入れすぎたのが原因みたいです。しかも袋の上からも肉が溢れてきました。一度に入れる肉の量は袋の半分くらいにしておいたほうが良いでしょう。

そんな反省をしつつ、握力弱まる手を叱咤激励しながら渾身の力をこめて肉をしぼり出す作業を続けます。すると…
詰めすぎが原因で破れた腸
今度は途中で腸がブチっと破れてしまいました。しぼり出す力を込め過ぎたせいで、肉がパンパンに詰まって腸が破裂してしまったのです。とほほ…。腸に肉を詰めすぎるのにも注意です。こんな風に破れたときは、破れた部分のそれぞれの端をたこ糸で結んで処置するやり方もあるようですが、面倒なので破れた部分の腸を指先で適当にねじってそれで良しとしました。完璧を目指しすぎないことも重要ですよね。心の中でそんな言い訳を唱えつつ、破れたところからまた同じように詰めていきます。

そんなこんなでノーマルバージョンのソーセージを詰め終わりました。
 
そうしたら、ソーセージを整形していきます。好みの長さのことろで3~4回ねじるだけでも良いのですが、この方法だと茹でている間にねじりがほどけたりもします。もしきれいに長い1本のソーセージができたら、次の方法でねじっていくとほどけにくくなります。

<ほどけないソーセージのねじり方>
まず長いままのソーセージの真ん中の部分を指でつまんで

その部分を2~3回ねじります。

次にねじり目をもって2本足がぶら下がった状態にし、

好みの長さのところで2本を一緒に2~3回ねじります

そうしてできた上の輪の中に、ぶら下がった足の片方をくぐらせます。

すると、こんな風にほどけにくくなります。

あとは同じことの繰り返し。先ほどと同じくらいの長さのところで2本一緒にねじって

片方の足を輪の中にくぐらせる。

これで完成!


ジャーン! どうでしょう! なんだか本格的な感じではありませんか。



最後に、出来上がったソーセージを丁寧にチェックして、空気が入っている部分があれば、マチ針で小さな穴を開けて、空気を抜いていきます。そのままにしておくと、後で茹でたときに膨張して皮が弾けてしまうことがあるんだそうです。
針で空気を抜く

ノーマルバージョンを作り終えたら、同じ工程でアレンジバージョンを作ります。冷蔵庫に入れておいた残り半分の肉を取り出し、チリペッパーを加えたり、粗挽きコショウやバジルを混ぜたり。そしてようやく、すべての腸詰め作業が終わりました。
腸詰め作業が終わり
ここにたどり着くまでにかかった時間は4時間。なんと長かったことか…(涙)。結局1㎏の肉を詰めるのに使った腸は6mくらい。余った腸は、また塩に漬けておくと保存が効くそうです。

次はいよいよ、茹でたり焼いたりして実食です!

茹でるときまで手のかかるソーセージ

さて、腸詰めした生のソーセージを茹でていきます。ソーセージ作りの第2の重要ポイントが「適温でゆっくり茹でること」。あまり高い温度で茹でると、肉がボソボソした残念な食感になるそうです。理想の茹で方は75℃で20分間。湯の温度が変わりにくいようにできるだけ大きな鍋で茹でていきます。

まずは大鍋に水を入れ、湯の温度が85~90℃になるまで沸かします。
湯の温度が85~90℃になるまで沸かします

適温になったら弱火にし、生ソーセージを腸がつながったまま鍋に投入します。
生ソーセージを腸がつながったまま鍋に投入

するとソーセージの冷たさで湯の温度が75℃くらいまで下がるはずです。もし湯の温度が高ければ水を差し、低ければ火を強めるなどして75℃にします。
湯の温度を75℃くらいに

ここから20分間、湯温75℃を保ったまま静かにじっくり茹でていきます。
20分静かに茹でる

ちょっと気を抜くとすぐに湯温が上下するので、つきっきりで鍋を見張っている必要があります。そうやって温度計をにらみながら茹で続けること20分。試しにソーセージを一本取り出して、肉の内部温度を測ってみます。65℃まで上がっていればOKだそうです。
肉の内部温度を測って65℃だったらOK
65.6℃、ばっちり火が通っていました。

すべてのソーセージをザルに上げて水気を切ったら、ねじったところを調理用ハサミで切っていきます。
ねじったところを調理用ハサミで切る
これで、ボイルソーセージが完成!

さらにそのうち何本かをフライパンで焼きましょう。
そのうち何本かをフライパンで焼きます

4時間半かかって、ついに完成! その味はいかに?

茹でたて、焼きたてのソーセージをお皿に盛りつけて…。調理開始から4時間半後、ついに、ついに出来上がりました!!

\ジャジャーン!!/
ソーセージ完成!
どうですか、この出来栄え! 写真の奥がボイルソーセージ、手前がさらにフライパンで焼いたものです。今回スモークはしていないので、ボイルソーセージのほうは予想以上に白っぽい仕上がりですが、焼いたほうはイイ感じの色で美味しそう!

断面もこんな感じ。どこからどう見てもソーセージです。
断面
この時のために用意しておいたドイツビールをグラスに注いだら、早速いただきます! まずは編集部のメンバーに食べてもらいましょう。

どうです? ちゃんとできてますか?

「ウマい! 肉を食べてるって感じ。これ店で出せるよ」
「スパイスはしっかり効いてるんだけど、食品添加物が入っていないからか味は優しくて自然な感じがする」
「とくにブラックペッパー&バジルバージョンがドイツビールと相性いいね~」
「焼いたほうは、香ばしいけど食感がちょっとつくねっぽい」

おおむね高評価ですが、気になるワードも聞こえてきました。期待と不安で胸を高鳴らせつつ、筆者もいただいてみます。

ジーン…。おいしい…。

市販のソーセージとは違って皮のパリッと感はありませんが、肉々しくて何より風味豊か。ガーリックやショウガ、スパイスがしっかり効いているのでビールにめちゃくちゃ合います! 肉屋のおじさん、私やったよ!

が、焼いたほうは火を入れ過ぎたのか、確かに食感がボソッとなっていました。フライパンで焼くときは、さっと焼き色を付ける程度にしたほうが良いかもしれません。ちなみに茹でたソーセージは氷水で冷やしてから冷凍保存もできるので、多めに作っても安心ですね。


今回いろいろ反省ポイントあったものの、手のかかる子ほど可愛いと良く言うように、手間をかけて作ったソーセージは、味覚では測りきれないしみじみとした美味しさであることはここに断言できます! しかも自他ともに認める超不器用人間の私にできたということは、きっと皆さまはもっとスマートに、美味しくできるはずです。ソーセージ作りに興味をもたれた方は、ぜひお時間のあるときに、この記事を参考にチャレンジしてみてくださいね。
 

材料

  • 豚ひき肉(赤身7:脂身3の粗挽き) 1kg
  • 羊腸 6~8m
  • 氷水 50cc
  • すりおろし玉ねぎ 20g
  • 1個
  • 牛乳 少々
  • 16~17g
  • 砂糖 6g
  • ▼基本のスパイス   
  • 白コショウ 3g
  • ジンジャーパウダー 2g
  • ガーリックパウダー 1g
  • ナツメグパウダー 1g
  • ローレルパウダー 1g
  • ▼アレンジ用スパイス(好みで)    
  • チリペッパー 適量
  • 粗挽きコショウ 適量
  • 乾燥バジル 適量

作り方

  • 羊腸をほどいたら、水の中で羊腸についた塩をざっと洗い落とす。水を張った平らなバットに30分ほど浸けて塩抜きをする(※腸が絡まないように注意)
  • 塩抜きした腸をしぼり出し袋の口金の先にはめて、たぐりよせるようにセットしていく(※この時、水の中で作業をすると腸がホース状になって扱いやすい)
  • 直前まで冷やしておいた豚ひき肉を大きめのボウルに入れ、分量の塩、砂糖、おろし玉ねぎ、スパイス、卵、牛乳を次々に加える。さらに氷水を分量の半分入れて、冷たい手で手早く肉に粘りが出るまでまぜる。さらに残りの氷水を加え、しっとりするまで練る
  • 肉を1/2ずつに分け、半分はアレンジバージョン用として冷蔵庫で保冷。残り半分の肉のうち適量を②で羊腸をセットしたしぼり出し袋の中に入れる(※一度に肉をしぼり出し袋に入れ過ぎないように注意)
  • 口金から1cmくらい肉をしぼり出し、その部分は捨てる。さらに羊腸の先を10cmくらい引っ張ってその部分を結び、肉をしぼり出して詰めていく(※肉を詰めすぎると腸が破れるので注意)。詰め終わったら、腸のもう片方の端も結ぶ。
  • 好みの長さで、3~4回ねじって整形していく。全体を丁寧に見て、空気が入っているところがあれば、マチ針などで穴を開け空気を抜く。残り半量の肉にもアレンジ用スパイスを加えて、同じように腸に詰めていく。
  • 大鍋にたっぷりの湯を沸かし、85~90℃になったら弱火にしてソーセージを入れ、75℃で20分ゆっくり茹でる(※このとき湯温が上下しすぎないように注意)。ソーセージの中心温度が65℃になっていたらザルに上げて、ねじった部分を調理用ハサミで切る
  • さらに好みで、フライパンで軽く炒めて焼き色をつける(※あまり炒め過ぎず、さっと焼く程度に)

※記事の情報は2019年3月24日時点のものです。
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