歩いて楽しむ酒⑫ 酒田の銘酒「初孫」
日本海を北前船が行き交い、蝦夷・東北・北陸・山陰の物産が盛んに京都に運ばれたころ、酒田は米や紅花など山形の内陸部、最上川流域の物産の集積地となりました。最上川が県南の米沢あたりから北上して県内の主要都市を結び、日本海に達する河港が酒田でした。大いににぎわい、京の香りを運んでくる進取の町として発展します。そこで生まれたのが銘酒「初孫」です。
往時を伝える山居倉庫
「初孫」はすべて生酛づくり
展示ゾーンでは華やかな受賞歴に目を奪われますが、ここでしっかり見ておきたいのは「生酛づくり」です。これは江戸期に確立した発酵スターターづくりの技法で、日本固有のものです。安全に酒をつくるには発酵の最初の段階で、乳酸と元気な酵母菌を大量に投入する必要があります。そうしないと酵母よりも先に雑菌が繁殖し、おかしな味になったり、最悪の場合は腐ってしまったりするからです。生酛づくりは水と米麹と蒸米を使い、擂り潰したり温度をコントロールしたりするだけで乳酸発酵に導き、酵母が繁殖しやすい条件を整えて大量の酵母を培養します。一般には乳酸を加えて二週間ほどで酵母の増殖を終える手法を用いるのですが、近年は約一か月の時間を要し手間もかかる生酛づくりをあえて採用し、個性的な味わいにチャレンジする酒蔵が増えています。そして「初孫」は四半世紀前の工場の移転を機に、すべての酒を生酛づくりに切り替えました。全量生酛づくりの蔵は全国でも数えるほどしかありません。
常時試飲できる酒はおよそ10点
手作業と機械化をバランスよく
特急いなほでカップ酒
※記事の情報は、2019年6月6日時点のものです。
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