【Kura Master】パリのソムリエ93人が選んだSAKEとは?

日本酒のコンテストはたくさんありますが、審査員が全員外国人でワインの専門家ばかりなのはKura Masterだけです。しかもこれはフランス人のソムリエたちが率先して始めました。近年、フランス料理は和食の影響を受けるなどして、素材を生かした淡白な味付けになっています。そうした料理には、時にワインよりもSAKEがフィットするものがあり、ソムリエたちはその事実に向き合い始めたのでした。

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年々パワーアップするKura Master

フランス人によるフランス人のためのSAKEコンテストKura Masterは2017年にスタートして今年3回目を迎えました。

今年の審査会は5月27日(月)にパリのギャラリー・ジョセフ(Galerie Joseph)でおこなわれました。審査員を希望するソムリエは年々増え、今回は93名にのぼりました。初年度は32名でしたから、3年でおよそ3倍です。フランスのソムリエたちが日本のSAKEに関心を向け始めていることを示していると言えましょう。ソムリエたちの顔触れも錚々たるものです。現在のフランスの飲食界をリードする、プラザアテネ、ホテルクリヨンなどの5星ホテルやミシュランの星付きレストランで活躍中の現役のプロばかりです。

出品酒は年々増え今回は720点になりました。蔵元がこのコンテストに出品する理由の第1は、フランスのトップソムリエが自社の酒をどう評価するのか知りたいからです。第2にフランス市場の好みを探るため、第3にトップソムリエのSAKEの経験値を高めてフランスでの普及を促すため、そして入賞すれば酒蔵全員のモチベーションを高め、国内外での販売増につながるからです。
参加ソムリエ集合写真
フランス中からソムリエたちがKura Masterに駆け付けた
1次審査
    
1次審査
一次審査は1チーム7~8名で約60点ずつ分担し、ブラインドで審査する
決勝審査
      
決勝審査
決勝審査は各チームが選んだ上位のアイテムをあらためて吟味する。

Kura Master2019 のTOP14を選出

審査の結果、4つの部門で金賞164本、プラチナ賞73本が決まりました。部門は純米大吟醸酒部門(精米歩合50%以下)、純米酒部門(精米歩合50%を超える)、サケスパークリング・ソフト部門(アルコール度数10度未満)、サケスパークリング・スタンダード部門(アルコール度数10度以上)の4つです。さらに純米大吟醸酒部門から上位5本、純米酒部門から上位5本とサケスパークリング・ソフト部門から上位2本、サケスパークリング・スタンダード部門から上位2本を合わせた「トップ14」が選出されました。

【TOP14】
純米大吟醸部門  
玉柏 純米大吟醸 山田商店  
作 槐山一滴水 清水清三郎商店  
★勝山 純米大吟醸 伝 仙台伊澤家勝山酒造
☆櫻正宗 金稀 純米大吟醸40 櫻正宗  
白瀧 セブン 純米大吟醸 白瀧酒造

純米部門  
天狗舞 山廃純米酒 車多酒造  
鳴門鯛 純米原酒 水と米 本家松浦醸造場  
セトイチ 音も無く 瀬戸酒造店  
☆臥龍梅 純米吟醸山田錦 三和酒造  
陸奥八仙 赤ラベル 八戸酒造

スパークリングSAKE部門  
☆吉乃川 酒蔵の淡雪 吉乃川  
八鹿スパークリングNIJI 八鹿酒造  
☆スパークリングサケ 好 土佐酒造
陸奥八仙 Natural Sparkling Premium 
八戸酒造株式会社
TOP14の受賞蔵元が勢ぞろいした授賞式
授与式にはTOP14の受賞蔵元が勢ぞろいした
審査員賞、プレジデント賞の発表を待つ緊張の一瞬。
審査員賞、プレジデント賞の発表を待つ緊張の一瞬

Kura Master2019 の最高賞は『勝山』

そして授与式の当日、審査員賞とプレジデント賞が発表されました。注目のプレジデント賞は過去2年は九州勢が獲得してきました。2017年は『七田 純米吟醸 雄町50』(天山酒造・佐賀)、2018年は『ちえびじん純米酒』(中野酒造・大分)です。

今回は『勝山 純米大吟醸 伝』 仙台伊澤家勝山酒造(宮城)が受賞し、初めて東北に栄冠をもたらしました。審査員賞を受賞したのは次の4点です

純米大吟醸部門  
櫻正宗 金稀 純米大吟醸40 (櫻正宗・兵庫)

純米部門
臥龍梅 純米吟醸山田錦 (三和酒造・静岡)

スパークリング ソフト部門  
吉乃川 酒蔵の淡雪 (吉乃川・新潟)

スパークリング スタンダード部門
スパークリングサケ 好 (土佐酒造・高知)
プレジデント賞を受賞した仙台伊澤家勝山酒造の『勝山 純米大吟醸 伝』の蔵元。
今回は仙台伊澤家勝山酒造の『勝山 純米大吟醸 伝』がプレジデント賞を受賞

Kura Master審査会の舞台裏

無事に授与式を終えたKura Master2019ですが、ここで審査会当日の舞台裏をご報告します。当日は午前9時に審査がスタートしましたが、スタッフの集合時間はその1時間前の午前8時。前日遅くまでセッティングして、あとは翌朝に冷蔵庫で保管していた酒を運び込んで完了という段取りです。

時間に会場に行くとパリ在住の日本人を中心に運営ボランティアが集まっていましたが、なぜか会場の外で待機しています。しばらくすると会場の前にトラックが停まり、保冷倉庫で保管されていた審査用の酒が荷台から降ろされます。が、まだ会場に入れません。どうやら会場の管理会社の担当者が遅れていて鍵が開かない様子。日本でなら運営側が激怒するところですが、フランスに長いボランティアや運送業者は「フランスだからね。こんなものだよ」とニコニコ笑っています。

ようやく会場が開き、10分ほど遅れて準備がスタート。受付、集計、酒のサービスなど作業の分担し、担当部門ごとに動きを確認していきました。10時に審査がスタートすると予選審査が終わるまで休みはありません。審査の進行を見ながら審査酒をテーブルに運び、終わったものを下げる作業を繰り返します。
リーダーが担当を振り分け作業を指示
リーダーが担当を振り分け作業を指示
担当のテーブルで動きを確認
担当のテーブルで動きを確認。スタッフ同士は日本語でやり取りし、審査員とはフランス語で話す

Kura Master審査酒を一般に披露

審査会の予選が終了すると残ったお酒を別のフロアーに運びます。地域ごとにテーブルに並べて、夕方からは一般向けのフリー試飲会がスタート。パリの熱心なSAKEファンが大勢集いました。真剣にテイスティングする人もいれば、カップルで遊びに来た方もいて、会場は終始和やかな雰囲気です。このように状態のいいお酒が揃う機会は日本でも数えるほどで、フランスではまずありません。
審査で残ったお酒を一般公開し自由に試飲
審査会場の2階には審査で残ったお酒を一般公開し自由に試飲
ひとつひとつテイスティングメモをとる参加者
ひとつひとつテイスティングメモをとる参加者も
こうして審査会のすべての作業が終了したのは午後9時すぎです。朝からほとんど休みなく動いたスタッフはさすがにぐったり。でも、この後の打ち上げは心地よく、やり切った感がお酒をとてもおいしくしてくれました。また機会があればスタッフとして手伝おうと思います。最後にパリのロケ弁の写真を。
和食のBENTO
久しぶりの和食がおいしかったです。日本のBENTOはパリでも好評です

東京でKura Maste2019試飲会

8月5日(月)東京の日本の酒情報館(港区西新橋)で今年のTOP14試飲会を開催します。定員25名で50分の完全入れ替え制で2回おこないます。パリから運営委員長の宮川圭一郎氏が来日し、今回の審査の報告をいたします。どうぞお越しください。

チケットはこちらからご購入ください。

※記事の情報は20019年7月29日時点のものです。

    

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