5つ星にランクされた酒蔵は? 「世界酒蔵ランキング2020」レポート

2020年に国内外で開催された主要な日本酒のコンテストでの入賞実績をポイント化した、世界酒蔵ランキングが発表されました。今年TOPになったのはどこ? ご贔屓の蔵は星を獲得できましたか?

メインビジュアル:5つ星にランクされた酒蔵は? 「世界酒蔵ランキング2020」レポート

中止や変更が相次いだ2020年のコンテスト

「世界酒蔵ランキング2020」が対象にしたコンテストは次の6つです。

・全国新酒鑑評会(主催:酒類総合研究所)
・日本酒造組合中央会(日本)
・全国燗酒コンテスト(日本)
・ワイングラスでおいしい日本酒アワード(WGO)(日本)
・Kura Master(フランス)
・インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)(イギリス)
・全米日本酒歓評会(アメリカ)

いずれもコンテストの主旨と審査方法、選考方法を公開し、専門家によるブラインド審査を徹底しており、公平性・透明性が担保されています。さらに一定数の酒蔵から多数の出品があります。

2019年からの変更点は、コロナ禍で中止となった「SAKE COMPETITION」(日本)のポイントが加算されなかった点と、「全国新酒鑑評会」は決勝審査ができなかったため「金賞」を選定せず入賞だけになった点、新たに海外での日本酒コンテストの草分けである「全米日本酒歓評会」を対象に加えたことです。

感染対策を講じて行われた審査会と表彰式

予定どおりおこなわれたコンテストもコロナ対策を講じて難しい運営を迫られました。全国燗酒コンテストでは審査会上の密を避けるため、例年1日で行っている審査会を2日に分けて実施、審査員はフェイスシールドを着用し、サービス係はマスクと手袋を着用しての審査となりました。
審査会場
全国燗酒コンテストの審査会。席の間をたっぷりあけて消毒を徹底
審査の様子
万全の感染予防対策が講じられた
毎年パリで5月末に審査会をおこなうKura Masterは8月末に延期し、11月にオンラインで授賞式を開催。ロンドンで6月に開催されてきたIWCは審査会を11月に実施し、最終結果の発表は12月になりました。

そんなか2月に審査会を開催できた「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」は緊急事態宣言が解除され、平静を取り戻しつつあった6月に表彰式を開催、プレゼンターに落語家で俳優の林家たま平さんを招いて学士会館(東京都)で開催しました。たま平さんは一昨年に大ヒットしたテレビドラマ「ノーサイドゲーム」に佐々コーチ役で出演された方です。

上京した受賞蔵元はフェイスシールドを着用してステージに上がり、トロフィーを手にしましたが、コロナ禍で参加した酒蔵は例年の半分にとどまりました。
表彰式
巣籠が続くなか久しぶりの表彰イベントに蔵元も笑顔がこぼれる(永井酒造・群馬県)

「世界酒蔵コンテスト2020」のTOP3は渡辺酒造店、八戸酒造、清水清三郎商店

こうして開催されたコンテストの結果、対象となった酒蔵は659蔵、商品は1,835点にのぼりました。すべてポイント化し酒蔵ごとに集計、上位10位までを5つ星に格付け、以下10位ごとに4つ星、3つ星、2つ星、1つ星となります。

そして、今回、第1位に輝いたのは975点を獲得した渡辺酒造店(岐阜県)でした。昨年の2位からランクアップしてついにトップに立ちました。主力商品の『蓬莱 吟醸 伝統辛口』が4つのコンテストで入賞し計170ポイントを稼ぎました。
渡辺酒造店『蓬莱』『吟醸 伝統辛口』『純米大吟醸 色おとこ』『手造り純米 ひだほまれ』『純米吟醸 家伝手造り』
渡辺酒造店のメインブランドは『蓬莱』。『吟醸 伝統辛口』『純米大吟醸 色おとこ』『手造り純米 ひだほまれ』『純米吟醸 家伝手造り』の上位4点はすべて100点越え

第2位は910ポイントで八戸酒造(岩手)。主要銘柄は『陸奥八仙』です。
八戸酒造『陸奥八仙 黒ラベル』『レイメイ40』『特別純米』
多数の入賞の中からハイスコアの3点がこちら。高得点の順に左から『陸奥八仙 黒ラベル』『レイメイ40』『特別純米』

第3位は清水清三郎商店(三重)で900ポイント。昨年の1位から惜しくも2ランク落としました。主要銘柄は『作(ざく)』です。
清水清三郎商店『作 智 純米大吟醸滴取り』『槐山一滴水』『陽山一滴水』『恵乃智』
左から『作 智 純米大吟醸滴取り』『槐山一滴水』『陽山一滴水』『恵乃智』これらはすべて100点越え
そしてこのTOP3は前回とまったく同じ顔ぶれです。積極的に出品していることはもちろんですが、実力がなければ入賞はできません。

700点越えの4蔵は、出羽桜酒造、小西酒造、加藤吉兵衛商店、永井酒造

4位は出羽桜酒造(山形)です。海外のコンテストに出品が多く、Kura Master、IWC、全米日本酒歓評会のすべてで入賞しています。
出羽桜酒造 出羽桜3品
左からスコアの高い順に上位3点

5位の小西酒造(兵庫)は『白雪』の醸造元です。日本酒発祥の地と言われる伊丹で創業、その地で今も酒を造り続けています。昨年は創業470年を迎えました。
小西酒造『超特撰白雪 江戸元禄の酒(復刻酒)原酒』他
『超特撰白雪 江戸元禄の酒(復刻酒)原酒』は小西家に伝わる元禄期の酒造りのレシピを再現した酒。海外のコンテストで高評価を得た

6位は福井の加藤吉兵衛商店。『梵』は海外でも人気です。出品したほとんどのコンテストで入賞し、地力の強さ証明しました
加藤吉兵衛商店『梵・GOLD』『梵』『梵・ときしらず』
香りの高い華やかな酒だけでなく、熟成した『梵・ときしらず』もスコアを伸ばした

7位にランクインしたのは『水芭蕉』の醸造元である永井酒造(群馬県)。シャンパンのように瓶内で炭酸ガスを得る製法でクリアなスパークリングSAKEを開発したことで知られます。スパークリングタイプの『MIZUBASHO PURE』も輝かしい成績でしたが、純米吟醸、純米大吟醸がスコアを伸ばしました。
永井酒造『水芭蕉』
尾瀬に近く超軟水の良質な水が湧く川場村。柔らかなテクスチャーは仕込み水由来か?

5つ星は600点台まで。中埜酒造、米澤酒造、平和酒造がランクイン

8位の中埜酒造(愛知)は知多半島の半田にあります。グループ企業にはお酢のトップメーカーであるミツカンもあります。昨年の20位からジャンプアップして見事5つ星に格付けされました。
中埜酒造『特撰國盛 純米吟醸 半田郷 酵母1801』他
『特撰國盛 純米吟醸 半田郷 酵母1801』はお手頃価格ながらトータル140ポイントを獲得した

9位の米澤酒造(長野県)の主要銘柄は『今錦』。『純米大吟醸』『特別純米』がそれぞれ130ポイントを獲得して順位を押し上げました。昨年はランク外で星を獲得できませんでしたが、今回はいきなりの5つ星です。
米澤酒造『今錦』『純米大吟醸』『特別純米』
海外のコンテストへの出品が多く全米日本酒歓評会(アメリカ)では5つが金賞を受賞した

10位の平和酒造(和歌山)は『紀土』で知られ、梅酒も高い評価を得ている酒蔵です。昨年から5つ順位を上げてトップ10入りを果たしました。
平和酒造『無量山』『紀土』
『紀土』には様々な商品がある。『無量山』のシリーズがスコアを伸ばした
世界酒蔵ランキングはコンテストの入賞実績というファクトを積み上げたもので、実力の高い酒蔵であることの証として十分と考えています。迷ったときには日本酒を酒蔵で選ぶのもありではないでしょうか。詳細は公式サイトをご覧ください。

世界酒蔵ランキング公式サイト

※記事の情報は2021年1月21日時点のものです。

  

『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

さけ通信ロゴ
  • 1現在のページ