西村まどかのサケ・コレクション③ 山崎蒸溜所 「オンライン・ライブ」に初参加! 後編

2月に始まったサントリー山崎蒸溜所オンライン見学ツアーにさっそく参加してみました。あまり知らなかったウイスキーをわかりやすく解説してもらった1時間のツアーはあっという間、とても楽しめました。

ライター:西村まどか西村まどか
メインビジュアル:西村まどかのサケ・コレクション③ 山崎蒸溜所 「オンライン・ライブ」に初参加! 後編

林立するウイスキー蒸溜釜

さて、前回はオンライン見学会のウイスキーの発酵のところまでをレポートしました。原料の麦芽に始まりピートや木製の発酵槽ステンレス製の違いなど知らないことがたくさんありましたが、今回はまったく初めてのことばかりです。日本酒にはない蒸溜と樽貯蔵の工程、そしてテイスティングのレポートです。

とは言うものの正直なところ“そもそも蒸溜って・・・??”というくらいあやしいので、オンライン・ライブに誘ってくれた酒文化研究所の山田聡昭さんに解説してもらいました。山田さんによると蒸溜はアルコールの水よりも低い温度で気化する性質を利用する。お酒を加熱していくと先にアルコールが気化するので、気体になったアルコールを集めて、冷やして液体に戻してやると、濃縮されてアルコール度数は元のお酒のだいたい3倍になる。お酒にはアルコール以外にも水よりも低い温度で気化するものがたくさん含まれているので、蒸溜液は複雑な香味になる。そしてウイスキーの場合は蒸溜を2回ないし3回おこなう。とこんな感じです。そして、唎酒師のテキストにも説明があるはずだから、ちゃんと復習するようにと。資格をとっても勉強しないといけませんね。がんばります!

山田さんはわかりやすく説明しようとしてくれたのですが、正直なところイメージが湧きませんでした。でも、さすがオンライン・ライブです。蒸溜の動画は迫力満点で、山田さんはこういうことを言っていたのかと飲み込めました。

蒸溜釜(ポットスチル)は初めて見ましたが、とにかく存在感がすごかったです。天井の高い大きな広い部屋に蒸溜釜がいくつも並んでいて、ごうごう、しゅーしゅーと唸るような音が響いています。よく見ると蒸溜釜はサイズも形もまちまち。大きいものもあれば小ぶりなものもあり、円錐形の首がまっすぐ伸びているものもあれば途中に丸いでっぱりがあるものもあります。形や大きさで蒸溜液のタイプが変わり、使い分けて多様なウイスキー原酒をつくっているそうです。
赤みがかったゴールドの蒸溜釜が並ぶ姿はまさに壮観
赤みがかったゴールドの蒸溜釜が並ぶ姿はまさに壮観
蒸溜釜は銅製です。銅は柔らかく加工しやすいだけでなく、蒸溜するときに麦汁の発酵液と反応して独特の味わいが生まれます。そう言えばオンライン・ライブの最初にでてきた、山崎蒸溜所が操業した頃に使っていたという古い蒸溜釜は緑青で青緑色になっていました。日本で製造された最初のウイスキー蒸溜釜で、当時の職人が銅を手作業で叩き成形したことが、表面の凸凹からわかるとのことでした。
山崎蒸溜所が操業した頃に使っていたという古い蒸溜釜
日本でウイスキーづくりが始まって間もなく100年。この蒸溜釜からジャパニーズウイスキーは始まった

樽で変わるウイスキー

次は蒸溜液を樽で貯蔵し熟成する工程です。日本酒にも杉樽で貯蔵する樽酒がありますが、貯蔵はほんの数日でいわば香りづけです。何年、何十年と樽で熟成するウイスキーとは考え方がずいぶんと違います。

まず驚いたのは樽に入れる前の生まれたての蒸溜液は無色透明だったことです。ビックリですよね、普段目にするウイスキーはしっかり色がついているじゃないですか。アルコール度数は70%以上もあって、樽に詰める前に水を加えて60%程度に調整するそうです。

何年も樽で貯蔵するうちに樽の成分が蒸溜液に溶け込んで徐々に色づいていくと説明がありましたが、ここまで色が変わるとは想像していませんでした。そして貯蔵するうちに蒸発して量も減っていきます。スコットランドではこれを天使が味見をした「天使の分け前」と言うそうです。すごくロマンチックなネーミング、日本酒にもこういうセンスを取り入れたいと思います。
樽いっぱいに蒸溜液を入れて、右が数年経ったもの。左の樽は十数年貯蔵したもので半分以下になっている
樽いっぱいに蒸溜液を入れて、右が数年経ったもの。左の樽は十数年貯蔵したもので半分以下になっている
こうして貯蔵したウイスキー原酒は1樽ごとに熟成のピークが違い、そこで個性が出ます。長く熟成すればいいというわけではありません。でもそうすると見極めが本当に難しそう、だからブレンダーという原酒を選別し製品に仕上げるプロフェッショナルが必要なのだと思いました。
多種多様な樽
ウイスキーを貯蔵する樽は大きさ、形、木の種類はさまざま。ウイスキーを貯蔵する前にシェリーやワインを貯蔵したものもあり、どんな樽で貯蔵するかでまったく別の原酒になる

熟成する場所で変わるウイスキー

貯蔵庫の大きさも驚きでした。オンライン・ライブで見学した貯蔵庫にはおよそ2千樽ほどが貯蔵でき、サントリー全体ではおよそ155万樽の貯蔵能力があるとのことです。
山崎蒸溜所の貯蔵庫
どこまでも樽が続いていそうな山崎蒸溜所の貯蔵庫
そして樽は暑いと膨張し寒いと縮むので、樽を積み上げた時に上段と下段に置いたもので味が変わっていきます。きっと広い貯蔵庫のどこに置くかでも微妙に変わるのでしょう。ちなみに貯蔵庫の温度調節は一切なし。意外でしたが、だからこそ蒸溜所の場所選びが大事なんですね。

また、山崎蒸溜所に眠っている最古の樽は、なんと約100年前、蒸溜所が竣工し蒸溜を開始した1924年のものです。同じ状態で保管されていることに感動してしまいました。
樽のナンバーは「0001」、下の方に1924年の年数表示が見える
余談ですが山崎蒸溜所のすぐそばに神社があるそうです。御朱印集めにはまり、神社巡りが大好きになった私にはうれしい情報です。ますます山崎蒸溜所に行きたくなりました。

その名は椎尾神社。そして、なんとこの神社の鳥居をボトルトップのモチーフにした商品があります。皆さんはなんだかわかりますか? そう、『サントリーローヤル』です。ボトルの頭の部分はこの神社の鳥居がモチーフなのだそうです。
神社の鳥居と「サントリーローヤル」
最上級の国産ウイスキーとして一世を風靡した「サントリーローヤル」

いよいよ『山崎』をテイスティング

そして、いよいよテイスティングの時間です。注いでみると、すぐにバニラのような甘い香りを感じました。そして綺麗な琥珀色。オススメされたとおり、色を見て、香りを確かめ、1:1に加水して味見しました。
オンライン・ライブ参加キットのシートが入っています
オンライン・ライブ参加キットには感想をメモするシートが入っています
ウイスキーのテイスティングの仕方
ウイスキーのテイスティングの仕方
キットに入っていたオリジナルグラスに注いで、テイスティングの準備
キットに入っていたオリジナルグラスに注いで、テイスティングの準備
1:1で水を加えるとこんな感じです
1:1で水を加えるとこんな感じです
飲んでみると、香りほど甘さは感じず、心地よい酸味も感じました。加水してまろやかで飲みやすくなり、とてもおいしい。ハチミツのようなニュアンスも感じました。上品な味わいで料理との相性の幅も広そうです。何よりウイスキーは糖質ゼロ、ダイエットが気になる私には嬉しいところ。
試飲
こうしてウイスキーを真剣に飲むのは初めてでしたが、表情が豊かでとてもおいしかった

ウイスキーは飲み方も多彩

山崎蒸溜所のウイスキーづくりに適した環境、歴史、技術をしっかり学んでから飲む『シングルモルトウイスキー山崎』は、本当に味わい深く繊細さと複雑さを兼ね揃えていて、とても贅沢な気持ちになれました。

そしてウイスキーの特長は多彩な飲み方ができることと聞いて納得しました。ウイスキーはアルコール度数や温度など好みに合わせて調整できる幅が大きく、水、ソーダなどで割っても楽しめると。日本酒も温めても冷やしてもおいしいですけれど、ウイスキーはさらに割ったりカクテルにしたりするバリエーションが豊富です。
ウイスキーの様々な飲み方
ウイスキーはいろいろな飲み方で楽しめる
そして最後にガイドさんがおいしいハイボールの作り方を伝授してくださいました。ポイントは、氷はぎっしりと、炭酸は優しく氷に当てないように注ぐことです。氷はグラスから少しはみ出すくらい入れていました。おうち時間が増えた今、おいしいハイボールがつくれるよう練習してみようと思いました。

約60分のオンライン・ライブは、楽しくて本当にあっという間でした。リアルな見学よりも近くで鮮明に見られる部分があったり、ガイドさんがリアルタイムで質問に答えてくれたり、クイズやアンケートがあってウイスキー好きの参加者の皆さんとの一体感があったりと、ほんとうに楽しかったです。

ウイスキー初心者な私にもわかりやすい言葉で、マニアックなところまで解説してくれて、とにかく満足度が高かったです。ただ蒸溜所の匂いだけはどうしても、オンラインでは感じられませんでした。実際に山崎まで行って蒸溜所の豊かな自然と四季を感じ、ウイスキー達と同じ空気を吸ってみたいなぁと思いました。 4月1日から5月のオンライン・ライブの予約受付が始まります。ウイスキーの豊かな世界に、ぜひ一歩踏み出してみてください。
 
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山崎蒸溜所オンライン・ライブは専用サイトから申し込みます。希望の日時を選んで申し込むと試飲キットが送られてきます。ライブへの参加費は3300円(税・送料込み)です。『シングルモルトウイスキー山崎180ml』が1本とテイスティンググラスを含んでこのお値段は、とてもリーズナブルではないでしょうか。

サントリーウイスキーリモート蒸溜所ツアー公式サイト 

 ※記事の情報は2021年3月23日時点のものです。
 
▼参考サイト
西村まどか Instagram Twitter

日本酒のソムリエ唎酒師

  

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