西村まどかのサケ・コレクション② 山崎蒸溜所 「オンライン・ライブ」に初参加! 前編

2月に始まったサントリー山崎蒸溜所オンライン見学ツアーにさっそく参加してみました。あまり知らなかったウイスキーをわかりやすく解説してもらった1時間のツアーはあっという間、とても楽しめました。

ライター:西村まどか西村まどか
メインビジュアル:西村まどかのサケ・コレクション② 山崎蒸溜所 「オンライン・ライブ」に初参加! 前編

知らないからこそ伝えられることもある、ウイスキーにチャレンジ!

私、日本酒の唎酒師を勉強していくうちに、知れば知るほど奥が深いと知ったお酒の世界。日本酒だけではなく、もっと知識の幅を広げたく今回はウイスキーの世界へ冒険しに行きます。きっかけは、唎酒師の受験勉強でお世話になった酒文化研究所の山田聡昭さんのお誘いでした。「サントリーがウイスキー蒸溜所のオンライン見学会が始めるそうで、メディア向けに先行体験会が開かれます。参加してみない?」というメールが届いたのです。

これまでウイスキーは居酒屋でハイボールをたまに飲むくらいで、まったく詳しくありません。どうしようかと思っていると、山田さんが「知らない人が見て発信した方が初心者にはわかりやすいと思うよ。それに日本酒と比べながら見ると違いがわかって日本酒への理解も深まるはず」と。

それで参加の返事をすると数日して、試飲キットが送られてきました。ウイスキーを思わせる茶色の箱に入っています。箱を開けてみると上蓋の裏側には蒸溜所の写真、そこには〝ジャパニーズウイスキーのふるさと 山崎蒸溜所 オンライン・ライブへ ようこそ〟と書かれています。カッコよくていきなり感動、そして山崎蒸溜所がこんな自然豊かな場所にあるんだと初めて知りました。

中には『シングルモルトウイスキー山崎180ml』が1本とテイスティンググラスが入っていました。ちなみにシングルモルトウイスキーの「シングル」はひとつの蒸溜所でつくられているという意味で、この試飲キットのウイスキーは山崎蒸溜所蒸溜で蒸溜されたウイスキー原酒のみをブレンドしてつくられたということだそうです。テイスティンググラスは「山崎」のロゴ入りで特別感が嬉しいですね。
パッケージも素敵な試飲キット
パッケージも素敵な試飲キット。おいしくて楽しいひと時を約束してくれます

ウイスキーも日本酒も水が命

いよいよオンライン・ライブがスタートです。始まる前に準備するものは、試飲キットと加水用のお水。私はこの絶好の機会を活かすためにノートも用意しました。チャットを使ってリアルタイムで質問も出来るので、聞きたいことを事前にまとめておくとスムーズかもしれません。冒頭にメディア向けの会なので、今回は特別に画面を写真に撮ってOKと説明があったので、スマホも取り出しました。

ライブはまず山崎蒸溜所の成り立ちの説明から始まりました。"日本人の繊細な味覚に合う、ジャパニーズウイスキーをつくりたい"という、サントリーの創業者の鳥井信治郎の夢がスタートだそう。実現のためにウイスキーづくりにピッタリな土地を探し、たどり着いたのが大阪と京都の境界にあるこの“山崎”だったそうです。山崎は山に囲まれていて、3つの川が合流する湿潤な土地、あの千利休も認めた名水の地で、貯蔵にも良い条件が整っていました。画面を見ながら、約100年前、高速道路も新幹線もないなかでどうやって山崎に辿り着いたんやろう、見つけるまでにたくさんの苦労があったんだろうなぁと思いました。日本酒でも水は大事で、酒蔵の方はどんな水を使っているか必ずおっしゃります。ウイスキーも同じなのですね。
サントリー山崎蒸溜所の周りは緑豊か
サントリー山崎蒸溜所の周りは緑豊か。四季折々さまざまな表情を見せる(写真提供;サントリー)

動画はJR山崎駅から蒸溜所に歩いて進み、ゲストハウスでもある「山崎ウイスキー館」から見学がスタートしました。扉を開ける所から映してくれて臨場感があります。まるで、本当にその場へ居るような感じです。中へ入るとサントリーウイスキーの歴代ボトルが並べられていたり、ギフトショップがあったりして、いつか行きたいなぁという気持ちになってきます。
山崎ウイスキー館の吹き抜けのエントランスホール
山崎ウイスキー館の吹き抜けのエントランスホール。立派な木製の会談が印象的

ここで参加者へ、山崎蒸溜所に来たことがありますか?というアンケートがありました。 結果はこの通り!
サントリー山崎蒸溜所に行ったことがない人は半分強
サントリー山崎蒸溜所に行ったことがない人は半分強。もちろん私も未訪問
約半数が行ったことがない方で、私もそのうちの一人です。ここで気になったのが、三回以上来場されている方が27%もいることです。ビックリしましたが、熱いファンがたくさんいるということですね。

ウイスキーの製造工程は日本酒並みに複雑

続いてはウイスキーの製造工程や歴史の説明です。日本酒と同じく酵母が必要なことや、ウイスキーは何年も樽で貯蔵すること、さまざまな原酒をブレンドすることなど、日本酒と似ている部分や、まったく違う部分があって勉強になりました。

まず違うのは原料に麦芽を使うところです。麦ではなくて麦芽です。芽を出し始めた麦のことで、ちょうどいいタイミングで加熱して成長を止めます。発芽する時に麦のデンプンを糖分に変える酵素を出すので、これを利用して甘い麦のジュースをつくるのだそうです。これって糖化では?日本酒の工程でも一番わからんかった麹のとこやぁと、こうして書いてみてわかりました。というか唎酒師のテキストを見直してみたらちゃんと説明してありました(汗)。

そして麦のジュースは麦汁(ばくじゅう)と言うそうで、ちょっと飲んでみたいですね。麦汁をつくる仕込み室は、麦の甘い香りがすると言っていたのも気になりました。
ウイスキーやビールの原料になる麦芽(モルト)
ウイスキーやビールの原料になる麦芽(モルト)。発芽した大麦を加熱して成長を止める(写真提供:酒文化研究所) *この写真は山崎蒸溜所オンライン・ライブには出てきません

それから初めて聞いたのが「ピート」という言葉です。日本語では泥炭と言われるそうですが、聞いたことも見たこともありませんでした。だから実物の画像を見ても"なんだ?この謎の塊は・・・"というだけで意味がわかりませんでした。どうやらピートは固形燃料の一種のようで、麦芽を加熱して乾燥させる時に、ピートを使うとその煙で燻されてウイスキー特有のスモーキーな香りが生まれるのだそうです。
ビートで発芽した大麦を燻して麦芽(モルト)にする
ビートで発芽した大麦を燻して麦芽(モルト)にする(写真提供:酒文化研究所) *この写真は山崎蒸溜所オンライン・ライブには出てきません

また、4.5mもの深さのある大きな発酵槽の中の様子も覗かせてもらえました。ぶくぶくと泡立って発酵している光景は日本酒の醪づくりにそっくり。これはリアルな見学では見られないオンラインならではの画だそうです。
ウイスキーの発酵の様子
ウイスキーの発酵の様子はオンラインでしか見られない

ちなみに発酵槽には木製とステンレス製があり、サントリーは目指す原酒に応じて使い分けています。木製発酵槽で発酵させたウイスキーはしっかりした味わいが出やすく、ステンレス発酵槽は華やかさが出やすいという違いがあるのだそうです。日本酒の「生酛・山廃」と「速醸」が思い浮かぶ話ですね。さらに山崎蒸溜所は両方使っているけれど、サントリーのもうひとつの蒸溜所、白州蒸溜所では木製の発酵槽だけという説明がありました。
木製の発酵槽
木製の発酵槽。一般的には衛生管理しやすいステンレス製が使われている(写真提供;サントリー)
とりあえず前編はここまで。ウイスキーの蒸溜が始まる前まで報告して、続きは次回、蒸溜・貯蔵・テイスティングをレポートします。お楽しみに。

【山崎蒸溜所オンライン・ライブの参加の仕方】
山崎蒸溜所オンライン・ライブは専用サイトから申し込みます。希望の日時を選んで申し込むと試飲キットが送られてきます。ライブへの参加費は3300円(税・送料込み)です。『シングルモルトウイスキー山崎180ml』が1本と特製テイスティンググラスを含んでこのお値段は、とてもリーズナブルではないでしょうか。毎月、月初めに翌月の申し込みがスタートします。5月の連休の予定に組み入れて申し込んではいかがでしょうか。

サントリーウイスキーリモート蒸溜所ツアー公式サイト 

 ※記事の情報は2021年3月17日時点のものです。
 
▼参考サイト
西村まどか Instagram Twitter

日本酒のソムリエ唎酒師

『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

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