1本4000円超え! ワインのように楽しむ高級茶『ロイヤルブルーティー』とは?
昼の食事の席や、酒が苦手な人との会食におすすめしたいのが高級茶。1本4000円を超える『ロイヤルブルーティー』の成り立ちやこだわりとは?
きっかけは『お酒が飲めない人向上委員会』
──『ロイヤルブルーティー』の前身である「茶聞香(ちゃもんこう)」はティースクールとしてオープンしたんですよね?
佐藤 最初はティースクールとして開き、授業のない時にティーサロンをやっていました。ティーサロンに来たお客様のお茶と一緒に何かおいしいものが食べたいという声に応えるようになり、そのうちに人気店になって。提供していた杏仁豆腐はデパートから催事に出て販売して欲しいと言われるほどになり、スクール、ティーサロン、物販というビジネスになっていったんです。
そこに訪れたのが、現在弊社の社長を務める吉本桂子でした。彼女は体質的に酒が飲めず、飲める人が料理に合わせて酒を選んだり、時には高価なものを飲んだりするのが羨ましかったそうです。数万円する鮨屋さんへ行っても、飲めない人のドリンクは濁ったお茶しかなかったと言っていました。複雑で奥深い味わいの4種類の高級茶と料理を合わせる体験をして吉本は、これなら自分も楽しめる、ぜひ一緒にやりたいとメンバーに加わりました。
──事業化のきっかけは、イベントで配布した『お酒が飲めない人向上委員会』というキャッチコピーのチラシだったとか。
佐藤 長距離便の国際線ファーストクラスに乗れば、酒リストにはシャンパンから希少な焼酎まで豊富に並んでいます。しかし、ソフトドリンクはウーロン茶、ジュース、コーラ、ペリエくらいで大衆店とあまり変わりなく、飲めない人の扱いは残念な状態なのです。『お酒が飲めない人向上委員会』は、これを何とかしよう、飲めない人を尊重する世界をつくろう、贅沢イコール酒になってしまっているのを見直そうと訴えました。
あるイベントでこのチラシを配ったところ、いろいろな方の目に留まり、周囲から事業化すべきだという声があがりました。ユニークで社会的にも意義のある、取り組むべき仕事だというのです。背中を押されるようにして事業化を決意し、吉本が社長、私が取締役になりました。資金はまったくなかったので、神奈川県川崎市のビジネスオーディションに応募して1500万円を調達し、さらに神奈川県から工場の設立資金として2500万円を借り入れて始まりました。
──そのビジネスオーディションでは、起業家優秀賞を受賞していらっしゃいます。
佐藤 優秀賞を受賞して融資してもらったものの、実は審査員の方々は本当に売れるとは思っていなかったようです。着眼点はおもしろいが商売にはならないと見ていたようで、100円で買えるお茶があるのに、いったい誰が1本3,000円のお茶を買うのかと。でも、きちんと理由を示せば、高価でも買ってくれる人はいるんです。
高価な理由を示してワイングラスで提供
佐藤 『ロイヤルブルーティー』が高価な理由は3つあります。
第1は最高級の手摘みの茶葉しか使わないことです。最高の茶葉を求めて産地を訪ねて知ったのですが、日本では99.9%が機械摘みで、手摘みは栽培農家が品評会用に摘むだけになっています。ペットボトルの茶が広がって急須で淹れる茶が廃れてしまった。高級茶を使う茶の湯は所作が難しくスクールビジネスになっており、裾野が広がりません。高級茶を丁寧に淹れていた和食店も、手間がかかるうえにお金をとれないので、やめてしまいがちです。高級茶の需要は減り続けています。
第2は酸化防止剤は使用せず、無添加であることです。一般にそのまま飲む茶飲料は加熱殺菌して酸化防止剤を添加しています。『ロイヤルブルーティー』は最高の茶葉の味わいを引き出すために水出しして、熱を一切加えず添加物も使いません。茶飲料は加熱殺菌することが義務付けられていましたが、微生物を通さないナノフィルターで除菌することで製造許可を取得しました。
第3は完全な手づくりであることです。工場での製造といっても手間がかかる工程が多く、大量生産に向きません。7人がかりで1日に100本くらいしかできないんです。
──なるほど。『ロイヤルブルーティー』の商品は、ワインボトルに入っているのも特徴的です。
佐藤 高級茶を誰でもどこでも楽しめるスタイルが必要だと考え、採用しました。ワインボトルなら紫外線を通しにくく、そのままテーブルに置くことができます。封を切ってボトルから注ぐところを見せることも大事で、そうすると無料だと思う人はいなくなります。サービスする器は、ワイングラスを使いました。飲めない人はワイングラスに憧れているところがありますし、おしゃれです。さらに香りや色がよくわかりとても機能的なんです。
浮かび上がる「飲める人」からの需要
佐藤 この事業の重要課題は毎月買ってくれる人を増やすことだと考えました。月に1本でいいから毎月買ってくれる顧客をつくらないと、ビジネスにはなりません。そこで、まず狙ったのは高級旅館です。15年前は1泊2~3万円でも高級と言われていた時代です。簡単ではありませんでしたが、旅行会社時代の伝手をたどって一軒一軒提案していきました。次に取り組んだのは、ソムリエに理解してもらうことです。『ロイヤルブルーティー』でフランス料理を楽しむ体験会をコツコツ開催しました。「こういうのもありだ」という声をソムリエからいただき、少しずつ採用してくれるレストランが増えていきました。
そのうちに旅館やレストランで体験した方がおもしろい、お酒を飲まない人にも喜んでもらえる、自分の体験を伝えたいと贈答に使い始め、ギフトが動き出して。レストランでの扱いが増えるのと並行してギフトが増える、好循環ができました。現在では5割強がギフト需要になっています。
──ギフトとして選ばれる方が多くいらっしゃるんですね。
佐藤 その後、10年くらい経った頃からナイトマーケットに入り始めました。高級なクラブやホストクラブです。知名度がなかった時には相手にしてもらえませんでしたが、時代に敏感な方々が話題にするようになって、注文が来るようになりました。十分に飲んで食べたあと、2軒目、3軒目に訪れる店では、酔い覚ましにいいと『ロイヤルブルーティー』を選ぶお客様がいるのです。高級シャンパンと同じくらいの値段なので店は大歓迎で、接客する方にも飲みすぎて身体に負担をかけなくて済むと喜ばれました。
2011年には日本航空の国際線ファーストクラス全便で採用されました。これは大きかったです。そしてここで、酒を飲めても高級茶を好んで選ぶ人がいることが見えてきました。おいしいし、かっこがつくし、酔わないし。いつでも高級シャンパンを飲める人が、『ロイヤルブルーティー』がいいというのです。
──お酒が飲める人にとっても『ロイヤルブルーティー』を選ぶメリットがたくさんあったと。
佐藤 ある高級ファッションブランドのパーティで、シャンパンや高級ワインがずらりと並ぶなか、『ロイヤルブルーティー』がもっとも飲まれて驚かれたこともありました。酒類は3割だけで、『ロイヤルブルーティー』が7割を占めたのです。ずっと贅沢イコール酒、宴会は酔って無礼講しかありませんでしたが、飲めない人や飲まない人を尊重し、飲む人と共生する宴に少しずつ変わってきているのではないかと思います。
時代に合った新しい会食の形、広げたい茶宴
佐藤 コース料理は“間”が大切です。酒を飲みながらだと十分な間をとれますが、ソフトドリンクだとうまく間をとれず食べて食べてとなりがちです。高級茶は酒と同じようにゆっくり味わい、十分な間をつくることができます。
あるフレンチレストランが、ドリンクの選択肢をワイン(3種または5種)だけ、同数の『ロイヤルブルーティー』だけ、両方から好きな方を選べるミックス茶宴のペアリングコースを用意しました。するとミックス茶宴を選ぶ方が予想以上に多く、これまでいろいろな理由で、少し無理してワインを飲んでいた人が多かったのではないかと思った、と言われました。このコースをつくってから夫婦で食事に来る人が増えたとも聞き、酒が苦手な奥さんが一緒に楽しめるからと喜んで来たり、ランチで『ロイヤルブルーティー』を知って、夜にご主人を連れて来たりするのだそうです。
──酒以外にも選択肢のある茶宴メニューの良さが、『ロイヤルブルーティー』を通じて可視化されたのではないでしょうか。
佐藤 高級茶があると年齢、宗教、国籍の違いを超えてどんな人ももてなせます。G7伊勢志摩サミットやG20大阪サミットでご用命いただいたのはそうしたことでもあったのではないでしょうか。
15周年を機に進めたいと思っているのは“茶宴”です。高級茶とともに食事を楽しむ宴を広める公的な団体をつくり、あらゆる人が楽しめる茶宴を提案していこうと準備しています。山田さんがおっしゃるとおり、これから昼間に接待や仕事がらみの食事をすることも増えるかもしれません。そんなとき、茶宴なら酔わないので、終わった後に仕事をすることも、人に会うこともできます。
私は酒も大好きで、酒宴を否定するつもりはありません。ですが最近は、食事中は茶を飲んで、食べ終わってから酒を飲むのもいいと思うようになりました。宴会では酔っぱらってせっかくの料理をちょうどいいタイミングで食べなかったり、食べ残したりしがちです。丁寧につくったものは大事にいただきたいですし、食べ終わった後で好きな酒を飲むようにすると、だらだらと飲まなくなるのもいいと思います。皆さんもぜひ一度試してみてください。
※記事の情報は2021年10月8日時点のものです。
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