コンビニで見つけた缶入り「本格焼酎ハイボール」を飲み比べ!
昨今のコンビニの家飲みコーナーの充実ぶりはなかなかのもので、おつまみ系フードはおいしさがアップ、酒はコスパの高いものが厳選されている。なかでも注目したいのが本格焼酎のハイボールだ。今回はこれを飲み比べてみた。
かぼすスピリッツがすごい「いいちこ下町のハイボール」
まずは「いいちこ下町のハイボール」を試してみよう。言わずと知れた麦焼酎のトップブランド「いいちこ」が発売したハイボールは、製造元の三和酒類が威信をかけてリリースした激熱商品である。パッケージデザインはかぼすやライムをイメージさせる黄色がかったライトグリーンで、さわやかさを感じさせる。最初、描かれている金髪のおばさまの名が「いちこ」というのかと思ったが、首のラインの太い部分が「い」で「いいちこ」をイラストに組み込んでいるのだとしばらくしてから気づいた(ちょっと恥ずかしい)。
テイスティンググラスに注ぐと柑橘の香りが立ち上ってきた。フレッシュライムのような自然な香りで人工的につくった感じはない。缶入りの商品でこれを実現するには高度な技術が求められる。
味わいはドライながら、ベースの焼酎由来の甘やかさが支えて酒感がある。後味はきれいにフィニッシュして、全体的にうまくまとまっている。これは幅広いシチュエーションで飲みやすい商品だ。
そして、パッケージに書かれた原材料を見てさらに驚いた。本格麦焼酎とかぼすスピリッツと炭酸だけで、果汁も酸味料も甘味料も使っていないのである。これだけでこの味わいを実現するのは、さすが「いいちこ」である。肝はかぼすスピリッツか。おそらく三和酒類が持つたくさんの本格麦焼酎のなかからかぼすにぴったりなものを選んで、かぼすを浸漬している。かぼすの収穫時期、量、果皮の割合、浸漬時間などかなり研究したはずだ。
丸い熟成感が印象的な「いいちこ下町のハイボール GOLDEN BLEND」
ほのかにバニラ様の甘い香りが立ち上がり、先ほどのものよりも重厚感がある。味わいは落ち着いた印象でベースの焼酎のうま味、後味にやや苦み、舌の奥の脇で収斂味を感じる。これも丁寧に細かい仕事をしているのであろう。樽で熟成させた原酒を組み合わせ、ベース焼酎を決めるのに試行錯誤を繰り返したに違いない。
まったく癖がない「白岳しろハイボール」
香りは穏やかでほとんど感じない。柑橘や熟成の印象はまったくなく、味わいは米焼酎由来の甘みがベースにあるだけで、とてもドライだ。ブラインド(目隠しして)で飲んだら甲類焼酎のソーダ割りだと思ってしまいそう。それくらいプレーンな味わいである。
芋焼酎のソーダ割り「さつま島美人ハイボール」
焼酎を単に炭酸で割るだけだから、パッケージ商品化するのは難しくないと思うのは誤りだ。アルコール度数が高いほどさまざま香気成分が解けこんでいて、水やソーダで割ると香りはすぐに飛んでしまう。自分で割ってすぐに飲むならおいしいが、そのままパッケージしても思った味にはならないのだ。ベースにする焼酎を製造方法から見直して、ソーダ割りの状態でパッケージしておいしくなるように工夫するのである。
「さつま島美人ハイボール」は芋焼酎特有の硫黄様の香りがかすかにあるが、軽快で飲みやすく仕上げられていた。芋焼酎好きの方には少し物足りないかもしれないが、よくまとまっている。この商品も酸味料と甘味料は使わず、焼酎の味だけで勝負した。
柑橘フレーバーでまとめる「焼酎ハイボールかのか麦」
今シーズンは本格焼酎ハイボール元年
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
- 1現在のページ