ノンアル&微アル宴会はニューノーマルに?

酒に弱い方も強い方も一緒に楽しめる宴会はないものか? 飲酒の場はどうしても飲める人向けになるが、日本人の半分は酒が苦手である。そこで、いま、注目されているのがノンアル&微アル飲料だ。これはいったいどんな酒?

メインビジュアル:ノンアル&微アル宴会はニューノーマルに?

アルコール0.5%微アルの「アサヒビアリー」

アルコール度数が0.5%の微アルビール、「アサヒビアリー」が発売されたのは、昨年の3月のこと。まったくアルコールの入っていないノンアルコールでも、通常のビールでもない微アル。日本の酒税法ではアルコール度数1%未満だと酒類としてみなされないから、酒税もかからず清涼飲料に区分される。一度ビールをつくってからアルコールを抜く製法で、アルコールはゼロにできないものの、一般的なノンアルコールビールよりもビールらしい香味が出せるという。  

「ビアリー」の発売に先立ち、製造元のアサヒビールは「スマートドリンキング(お酒 を飲む人・飲まない人、飲める人・飲めない人、飲みたい時・飲めない時、あえて飲まない時など、さまざまな人々の状況や場面における “飲み方”の選択肢を拡大し、多様性を受容できる社会を実現するために商品やサービスの開発、環境づくりを推進していくこと 同社公式サイトより)」を掲げて、アルコール度数の低い商品を積極的に販売していくと説明した。  

同社によると日本の20代~60代約8000万人のうち、酒を飲まない・飲めない人が半分の4,000万人、月に1回未満しか酒を飲まない人を加えると約6,000万人と75%にのぼる。これまで酒類メーカーは、酒が好きな残り約2,000万人に向けて商品やサービスを提供してきたが、飲まない人たちにもお役に立ちたいという。
「アサヒビアリー」は発売以来好調に推移
「アサヒビアリー」は発売以来好調に推移
国内の酒類市場は、人口減や高齢化により中長期的に縮小すると見込まれているから、ビジネスとして見ても、酒を飲めない・飲まない人を顧客化することは大きなチャンスではある。健康志向が高まり飲酒をコントロールしようとする人が増えている一方で、飲めるのにあえて飲まないソーバーキュリアスというムーブメントも広がりつつある。こうした消費トレンドにも合致している。

クラフトビールの微アルもあり!

実はアサヒビールだけでなく他のビールメーカーからも微アルビールは発売されている。大手ではサッポロビールが「アサヒビアリー」を追いかけるように「サッポロ ザ・ドラフティ(0.7%)」を発売した。そのほか日本を代表するクラフトビールのひとつ「常陸野ネストビール」から「ノン・エール(0.5%)」が発売されている。輸入品ではアメリカの「ブラバス・ノンアルコール・クラフトIPA(0.5%)」、ドイツの「エルディンガー・アルコールフリー(0.3%)」などがある。
クラフトビールメーカーがつくるノンアルコールビール「常陸野ネストビール ノン・エール」「ブラバス・ノンアルコール・クラフトIPA」「エルディンガー・アルコールフリー」「サッポロ ザ.ドラフティ」
クラフトビールメーカーがつくるノンアルコールビールには、ビールからアルコールを抜いた微アル製品が多い。左から「常陸野ネストビール ノン・エール」「ブラバス・ノンアルコール・クラフトIPA」「エルディンガー・アルコールフリー」「サッポロ ザ.ドラフティ」

“ノンアル”に本気のサントリー

微アルではなく、きっぱりアルコールをまったく含まないノンアルコールで行くのはサントリーだ。2月には「ノンアルコール文化の創造」と題して記者会見を開催し、鳥井信宏氏(サントリーBWS株式会社 代表取締役社長)は、酒を飲む人と飲まない人がともに楽しむ文化を創造すると、ノンアル市場に取り組む姿勢を説明した。
鳥井信宏氏(サントリーBWS株式会社 代表取締役社長
新しいノンアル市場への取り組みをプレゼンする鳥井信宏氏(サントリーBWS株式会社 代表取締役社長)
サントリーは、ノンアルコールは清涼飲料ではなく、アルコール度数0.00%の酒と位置付ける。ワイン、ウイスキー、リキュール、ジン、ビール、チューハイなど、さまざまな酒類をつくってきた知見をもとに、おいしく高品質なノンアルコールを開発し、共に酒を酌み交わして人間らしく喜びを分かち合うなど、酒ならではの価値を飲まない人とも一緒に楽しんでいく文化を創造するとした。
ノンアルコールで目指す姿
サントリー会見資料より
そして、ノンアルコールの潜在的なポテンシャルを、国内の潜在的なユーザーを7,550万人と想定する。酒を飲む人と飲まない人、双方の顧客化を狙う。
ノンアルコールのポテンシャル
サントリー会見資料より
現在、サントリーがラインナップするノンアル商品は、ビール、チューハイ、ワインだが今後は新たな商品を投入して、市場開拓を進めるという。
現在のサントリーのノンアルラインナップ。サントリー会見資料より
現在のサントリーのノンアルラインナップ。サントリー会見資料より
そして、これにはちょっと驚いたが、東京駅一番街2階にある酒場「東京コトブキ」を、4月28日から5月5日の8日間、期間限定でノンアルの酒場にするという。飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる酒場の未来像がそこに垣間見えるかもしれない。
「東京コトブキ」ノンアルの酒場
サントリー会見資料より

パーティにノンアル&微アルは必須アイテム

コロナ禍が終息に向かえば、これからお花見や謝恩会、歓送迎会、BBQパーティなど飲食機会が次々にできる。飲む人も飲まない人も一緒に楽しむために、ノンアル&微アルは必須アイテム。スーパーで、ビールを買い物かごに入れ、チューハイを選んで、ワインにしようか、あの人は日本酒だ、お父さんは焼酎かウイスキーと考える時、ノンアル&微アルもぜひ選んで欲しい。これからの時代のニューノーマルである。

※記事の情報は2022年3月17日時点のものです。

   

『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。

さけ通信ロゴ
  • 1現在のページ