発見! 展示会で見つけた「流行りそうな酒」

ようやく酒類の展示会がリアルで開催されるようになった。あちこち足を運んでみると「おもしろい!」と思う商品が目に留まり、試してみると味も上々だ。秋以降に発売されるものも含めて、流行りそうな酒を紹介しよう。

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割って楽しむ「ビアボール」

最初にご紹介したいのはサントリービールから発売された、炭酸水で割って飲む「ビアボール」だ。アルコール度数は16%で、グラスに氷をたっぷり詰めてビールを注いだ後に炭酸水を加えるというもの。

かつて「とりあえずビール」と言われたほど広く愛されながら、ビール消費は20年以上減少し続けている。これを再び活性化するには、若年層(20~40代前半)が「楽しみを共有するためのツール」と評価するビールが必要という考えから生まれたのが、「自分好みにつくる自由なビール」というこの商品のコンセプトだという。
サントリー「ビアボール」
「ビアボール」は麦芽・ホップ・糖類を原料に、厳選した酵母と独自の発酵管理技術で醸造したビール規格。醸造用アルコールを添加したリキュールではない
「ビアボール」割り方いろいろ
おすすめの割り方は1:3(アルコール度数4%)。レモンを搾って1:7(2%)のライト、しっかり濃いめの1:1(8%)、さらに濃厚なオン・ザ・ロックス(16%)を提案する
実際に推奨された4つの割り方を試してみると、どこかでバランスが崩れるのではないかと想像していたのだったが、説明のとおりどれもおいしい。中でも私の好みはオン・ザ・ロックスだ。カラメルや蜂蜜のような甘い香りが立ち、口中に濃厚な味わいが広がり、ドシンとしたアルコール感が心地よかった(酒飲みの感想だね)。
サントリー「ビアボール」
すでに一部の料飲店で提供されており、10月4日に業務用の500ml中瓶(862円・税別)を発売、一般向けには11月15日に334ml瓶(698円・税別)をリリース予定

クラフトの裾野を広げる「SVBシルクエール」

大手メーカーのなかでもっともクラフトビールに積極的なキリンビール。2015年に東京・代官山に「スプリングバレー・ブルワリー」をオープンし、全国のクラフトビールブルワリーと協力関係を築きながら市場開拓を進めてきた。

2018年には小規模な料飲店でも複数の樽生クラフトビールを提供できるビアサーバー「タップマルシェ」を開発、そして2021年に満を持して全国発売したのが「SPRING VALLEY 豊潤<496>」だ。旨み豊かなビールの王道をゆく味わいは評価が高いが、この秋には「〃シルクエール」(9/13発売予定)が加わる。小麦を使ったマイルドな口当たりと爽やかな香りのホワイトビールだ。ポップな味わいはクラフトビールに新しいユーザーを呼び込み、裾野を広げてくれそうだ。
「SVBシルクエール(左)」「ブルックリンラガー」「SVB豊潤496」
展示会で「SVBシルクエール(左)」「ブルックリンラガー」「SVB豊潤496」を比較試飲。おつまみのティラミスとシルクエールがよく合った

ライザップ監修のノンアルビールが登場

健康意識の高まりで好調なノンアルコール&微アルコールビール。味わいのバラエティが広がっただけでなく、特保に認定される機能性商品も登場している。そんな市場に投入されるのが、ダイエットで知られるライザップが監修した商品が登場する。

展示会ではブースにCMで耳慣れたあの曲が流れ、つい立ち止まってしまった。試飲をすすめられて「アサヒドライゼロ」と飲み比べたが、遜色ない味わい。市場がどう反応するか楽しみだ。
ライザップ監修のノンアルビール
三菱食品から9月27日に発売予定

缶ワインはどこでもワイン

ワインでは缶入りのワインが赤丸急上昇中だ。飲み切れないから自宅用にフルボトルのワインは買わないとか、白と赤を両方飲みたいけどフルボトルは多すぎるとか、ワイングラスを洗うのが面倒とか、自宅でワインを飲むようになるまでにはいくつものハードルがある。缶ワインはそれを一気に取り払い、いつでも、どこでも、好きな時に、気軽に楽しめる。

250mlでひと缶400円くらいするので缶チューハイと並んでいると高い感じがするかもしれない。でも3缶でフルボトル1本分である。そこそこのワインを詰めれば、このくらいの価格になる。

最初にスパークリングワインを飲んで、その後に白(赤)ワインを飲みたい時、缶入りのスパークリングワインなら少人数でもそれができる。サラダに白ワインで初めて、がっつりした肉には赤を飲むのもOKだ。テレビでスポーツを観戦しながら缶から直接飲んだって構わない。新幹線での移動中に駅弁と一緒に楽しむのにもいい。こんな風にワインを自由にしてくれる缶ワインはこれから流行らないわけがない。
缶ワイン
売行き好調な缶ワインは次々に新製品が登場している

フルーツ感あふれるカジュアル日本酒

日本酒は熱いファンが大勢いるにもかかわらず、消費量は40年以上ずっと減り続けている。人気の銘柄はなかなか手に入らなかったり、専門用語ばかりで素人には訳がわからなかったり、種類が多くて何を選んでいいかわからかったりすることなどが、増加に転じない理由としてよくあげられる。

酒の味わいそのものはわりと好評で、イベントなどで試してもらうと、たいてい「日本酒っておいしいんだね」と答えが返ってくる。だから、精米歩合が何%だとか酵母がどうとか難しい話にしないで、スーパーマーケットやコンビニに並んでいるお酒で、日本酒を飲みなれていない人が「おいしい!」と感じる商品がクローズアップされるとムードが変わる。

そんなところに居そうな商品は例えばこんな酒だ。月桂冠の「果月(かげつ)」は香料を一切使っていないのに、桃や葡萄やメロンの香りがする。きっと、米と水からどうしてフルーツの香りが出て来るのかと思うだろう。また、白鶴「雫花(しずか)」はすっきりした日本酒の味わいで、アルコール度数を10%未満に抑えている。

こんな日本酒がヒットしたら、日本酒市場が活気づくことは間違いない。
月桂冠「香月」
月桂冠「香月」。老舗酒蔵の技術の高さを感じさせる。甘い口当たりで後味がすっきりな酒がお好きな方はぜひ
白鶴「雫花」
白鶴「雫花」はアルコール度数9~10%と通常の日本酒の約3分の2。これでシャバシャバにならないのは驚き

シンプルに焼酎&ソーダ缶

40年ほど前に居酒屋で爆発的なチューハイブームがあった。たいへんな勢いで、昨今のレモンサワーブームの比ではない。それ以前は、日本酒とビールとウイスキーしかない酒場が多く、焼酎を出す店は安価な大衆酒場に限られていた。ところがこのブームで、逆に焼酎やチューハイがない酒場を探すのが難しくなったほどだった。

当時、居酒屋のチューハイは、レモンハイのほかにカルピスハイとかパイナップルハイとか、かき氷のシロップで色付けしたようなカラフルなバリエーションがやたらとあった(どれも味は似たようなものだったけれど)。そんなことを思い出させるチューハイを都内某所で発見、今はフレッシュフルーツがトッピングされ、比べ物にならないほど洗練されているのだったが、ああ、時代は回るのだと実感したのであった。
フルーツチューハイ
40年前のチューハイブームを彷彿とさせる見映え。甲類焼酎は何でも同じというのは誤解。いい焼酎でつくるとチューハイの味の輪郭がはっきりする
こうしたチューハイの元というか焼酎はかなり大事で、良質な焼酎原酒をどれだけ持っているかが、はっきりと味に現れる。これからきっと人気商品になるだろうと感じるのは、「極上宝焼酎」とソーダだけのチューハイ「タンチュー」だ。メーカーがおすすめするように、レモンを搾ればもちろんおいしいが、シンプルにそのまま飲んでも十分うまい。香料も酸味料も使わず、甲類焼酎らしい味の厚みが心地いい。

香料も酸味料も使っていないチューハイというと、「いいちこ下町のハイボール」もそうで、これなどはカボスなど柑橘の香気を取り出した原酒などをブレンドして、果汁を使わず爽やかに仕上げている。

果汁、酸味料、香料、甘さに頼ることなく、ベースの酒で勝負するシンプルなチューハイは注目だと思うのだがいかがだろうか?
宝酒造「極上宝焼酎タンチュー」「いいちこ下町ハイボール」
宝酒造「極上宝焼酎タンチュー」(左2点、缶の両面)、「いいちこ下町ハイボール」2点(右)
※記事の情報は2022年8月4日時点のものです。

  

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