コロナ禍の家飲みで伸びた酒
この2年間は外での飲酒が制限され、酒の消費の場は自宅にシフトしました。1年目はどの酒も同じように家飲みで増えましたが、一巡した昨年はさらに伸びた酒と停滞する酒に分かれました。さて、伸びたのはどんな酒でしょうか?
2年連続で伸長したビール・RTD・ウイスキー・焼酎
2019年から2021年までの3年間の酒類への支出金額の変化を見ると、コロナ禍前の2019年に比べて2020年はすべての酒が増えています。巣籠に伴う家飲みシフトの表れです。2021年には東京では緊急事態宣言が出されていた日数が200日を超え、前年以上に料飲店での酒類の提供が制限されました。家飲みシフトがさらに進んだわけですが、2021年に前年を超えた酒類は「ビール」「RTD(缶チューハイ・缶ハイボール等)」「ウイスキー」「焼酎」の4つでした。これらの酒が家飲みでユーザーから強く支持されたといってよいでしょう。
減税でビールの家飲み消費に勢い
まず、もっともボリュームの大きいビールから見ます。ビールは店で飲まれる割合が高い酒です。料飲店の多くはビールしか置いていないので、家で新ジャンルを飲んでいる方も、お店ではビールです。そのため料飲店で酒の提供が制限されてから、ビールの消費量は2割強減少しました。
一方で家飲みでは大幅に伸びました。特に2020年の10月にビール類の酒税率の調整がおこなわれ、ビールは350ml缶が7円安くなりました。反対に新ジャンルは350ml缶が10円高くなりました。ここからビールの動きが一段と良くなり、現在も好調を続けています。
こうした追い風のなかこの春、ビールは、トップブランドの「アサヒスーパードライ」が発売以来37年ぶりに初めてフルモデルチェンジし、キリンとサントリーは伸長著しい糖質ゼロのビールで攻勢をかけています。
健康意識の高まりで「ノンアル・微アル」が拡大中
ノンアルコールや微アルコール(アルコール度数1%未満)の酒類が続々と登場し、売れ行きが好調なのも同様の理由で、運転前や妊娠中のため酒を控えなければならないだけでなく、健康のために休肝日をつくろうと積極的にノンアル&微アルの酒を飲む方が増えているためと見られています。
また、近年は酒を飲めるのにあえて飲まないという人が若い世代で増えているようです。こうした変化に適応しようと酒類メーカーは、「酒を飲めない人」「あえて酒を飲まない人」「酒を飲む人」が一緒に楽しめる場を彩る商品としてノンアル・微アルの酒類の開発に熱心に取り組みはじめました。人口減少と高齢化が進む日本国内では、酒類消費量は減少を免れないと考えられており、「酒を飲めない人」と「あえて酒を飲まない人」を顧客化できるかどうかは、酒類メーカーの将来を左右する一大テーマとなっています。
絶好調が続く缶チューハイ&缶ハイボール
安くておいしく気軽に楽しめるのが人気の秘密ですが、最近はワンランク上の味わいの開発が盛んです。フレッシュな果汁感に驚かされたり、バーのカクテルかと思うような瑞々しい香りに出会ったり、ボディを支える酒のクオリティを感じたりするものが続々と登場しています。
ウイスキーは自宅でハイボール
自宅でもウイスキーをハイボールで楽しむようになった人が増えています。外で飲むつもりになれば、家で飲むウイスキーをランクアップできると考え、12年以上熟成させた上級品をチョイスする人、華やかな香りのソーダ割でおいしいバーボンを好む人も出ていることでしょう。
焼酎もソーダ割りが定番に
①糖質&プリン体がゼロ
②ピュアで酔い覚めがよい
③濃さの加減も自由自在、飲み方のバリエーションも豊富
④マイルドな香味は料理の邪魔をせず幅広い料理と合う
⑤経済的
現在好調な理由もこの点が評価されてのことですが、コロナ禍で在宅時間が長くなったことで、焼酎のおいしさに目覚める人が増えたようです。自宅で家族と夕飯を一緒に食べる機会が増えました。家族に焼酎を愛飲する人がいると、相伴する人はつきあって焼酎を口にすることもあります。好んで飲まなかった焼酎でしたが、飲んでみると意外とおいしく、焼酎を手に取る機会が増えたというわけです。
飲み方はオーソドックスなお湯割りやオンザロックに加えて、近年急増しているのがソーダ割りです。
安くておいしい新ジャンルは再成長へ
酒売場を眺めてみると、ビールが安くなったとはいえ新ジャンルの方がまだ数十円安い。今年は年初からガソリンや電気代が上昇し続けています。長年値上げをしてこなかった食品が値上げを発表し、ビール類や缶チューハイも秋に値上げが予定されています。世界情勢も不透明で生活防衛意識が強まり、節約する消費心理が働きそうです。
こうなると安くておいしい新ジャンルが再び成長軌道に乗る可能性が高まります。
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