酒好きほぼ100人に聞いた「日本酒のラベル表示変更」や「ビールの酒税率改正」の認知度

今年の1月から日本酒の製造時期の表示が任意になり、また、民間のコンテスト受賞歴をラベルで表示できるようになりました。4月にはスピリッツの色度規制に廃止され、10月にはビール類の酒税率が改正されます。皆さんはご存じでしたか?

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日本酒の製造時期表示を世界標準に

今回の酒好きほぼ100人に聞く"酒飲みのミカタ"は「酒のルール改正」についてお聞きしました。まずは日本酒の表示ルールの変更から見ていきましょう。

これまで義務付けられていた日本酒の製造時期の表示が、任意になったことを知っていたのは23%、民間のコンテストでの受賞歴をラベルで表示することができるようになったことを知っていたのは11%に止まりました。
日本酒表示ルール変更について
日本酒の製造時期は1989年に表示が義務付けられ、瓶詰された年月が記載されてきました。消費者も流通業者や料飲店もこの表示に慣れていますが、今回、表示が任意になった背景には、日本酒の輸出が増え国際的な表示基準に準じる必要性が高まってきたことがあります。

食品の国際基準を作る政府間組織コーデックス委員会は、「アルコール含有量が少なくとも10パーセント(容量パーセント)のアルコール飲料」は、賞味期限や品質保持期限の表示を求めなくてもよいとしています。アルコールは殺菌効果があるため、長期間保存したものを飲んでも健康を害することはない(香味が劣化することは別問題)という判断です。酒売場でワインの棚を見てください。このルールに則っているワインには、製造時期の記載はありません。日本酒が海外でも飲まれるようになるにつれ、海外からコーデックス一般規格に合わせるよう要請され、今回の表示ルールの変更はこれに対応したものと見てよいでしょう。

代わりに従来必須だった瓶詰した年月(製造時期とされた)ではなく、醸造年月日(BY:7月1日から翌年6月30日を1年とする日本酒製造の区切り方)や出荷日だけを表示できるようになりました。

この変更についてアンケートの回答者からは、製造時期の表示を無くさないで欲しいという声が多く寄せられました。流通過程で保管状態が悪いなどした場合、古いものは香味が劣化するため、製造時期を見て新しいものを選びたいというのが主な理由です。一方、製造時期(瓶詰時期)よりも醸造年度(BY)を表示して欲しいという声や、丁寧な品質管理をしている店を選ぶ必要性が増すという意見も寄せられました。

日本酒選びのガイドになる受賞歴の表示

コンテストの受賞歴は、これまで国税庁がおこなう全国新酒鑑評会など公的なコンテストのものしかラベルで表示できませんでした。全国新酒鑑評会は、そもそも酒造技術を競うもので、出品酒は市販を前提としていません。仕込みの規模も小さく、金賞を受賞した酒をそのまま商品化しても数は限られます。

反対に民間のコンテストは市販している酒が対象です。厳密におこなわれるコンテストはテイスティングの条件を一定にし、商品名がわからないように目隠ししておこなわれます。審査員の多くは酒造技術者や日本酒ソムリエなど、酒を自身の好みではなく客観的に評価できる専門家です。

こうしたコンテストの受賞歴はラベルでの表示が認められていなかったため、多くは首掛けPOPで受賞をアピールしてきました。ただ、首掛けPOPは流通の途中で外れたり痛んだりすることもあり、ワインのように受賞をメダルシールでアピールしたいという声は以前からあがっていました。また、日本酒でも海外ではこうした規制がないため、輸出する時には受賞シールを貼るもの見られました。

コンテストの受賞の表示について回答者からは、日本酒選びの目安になってよい、初心者には喜ばれるという意見が多く寄せられました。
ワイングラスでおいしい日本酒アワードの審査会
ワイングラスでおいしい日本酒アワードの審査会。瓶は袋をかけ銘柄はわからない

樽熟成スピリッツを飲んでみたいが33%

4月からスピリッツの着色規制がなくなることの認知は9%で、一般にはほとんど知られていません。かつてウイスキーは白もの(スピリッツや焼酎)よりも税率が高かったため、明確に区別するために白ものは着色が禁じられていました。しかし、ラムやテキーラなど輸入スピリッツには色のついたものも多く、また、すでにウイスキーとスピリッツの税率は同じになっています。長く求められていた着色規制の廃止が、今回、ようやく実現するというわけです。

この変更により樽で長期間熟成したスピリッツは、脱色の加工をすることなく商品化できるようになります。焼酎も樽で熟成した原酒がありますが、アルコール度数を高くするなどして焼酎の規格から外れれば(焼酎はアルコール度数45度まで)、スピリッツとして発売が可能です。現在はこうした商品は、香味に影響を与えない食物繊維をあえて添加するなどしてリキュール規格で商品化されています。

制度変更に伴い新たに発売されそうな色のついたスピリッツの飲用意向を聞いた質問では、「とても飲んでみたい」と「飲んでみたい」が合わせて33%に上っています。
色のついたスピリッツの飲用意向

6割がビール類の酒税率改正を認知

10月に予定されている酒税率の改正については「知っている」が60%にのぼり、関心の高さがうかがわれます。この改正は2026年10月にビール類の税率を一本化するプログラムの一環です。今回は350mlあたりでビールは7円弱減税、新ジャンルは9円強増税です。新ジャンルと発泡酒は同じ税率になり、新ジャンルと缶チューハイ類(ハイボール等含む)の価格差が広がります。
酒税率改正の認知度

大手ビール4社は年初の会見で、ビールシフトは進むが、ビール類全体は2%~4%マイナスと予想しており、缶チューハイ類への流出を見込んでいます。

アンケートの結果もこの予測近いものとなりました。酒税率改正後のビール類と缶チューハイ類の購入機会の変化予想の質問では、「ビール類の買い方は変わらない」が過半数ながら、「ビールの購入機会が増える」は30%、「新ジャンルの購入機会が減る」が9%あり、ビールの構成比が高まりそうです。缶チューハイ類は「購入機会が増える」という予想が11%あります。缶チューハイ類の増税はないため、新ジャンルと併売している人の購入頻度が上がるのは確かでしょう。

【寄せられたコメント】
「前回の税率変更時から新ジャンルはほぼ買わなくなった。さらにその傾向が強まる」(50代・男性)
「ほとんど変化はないと思いますが、何かもう1本という時に種類が豊富な缶チューハイを購入してしまうような気がします」(50代・女性)
「酒税改正だけでなく、物価の上昇に伴い安価なものを選ぶようになると思う」(40代・男性)
酒税率改正後の購入機会変化予測

今年は日本のウイスキーづくり100年

ところで今年はさまざまな周年記念行事が予定されています。アンケートでは主なものをあげて「感慨深いと思うもの」を選んでもらいました。結果はさすが「酒好きな方のアンケート『酒飲みのミカタ』」というべきでしょう、第1位が「日本のウイスキーづくり100年」でした。サントリー山崎蒸溜所の建設が始まったのが1923年で、これが日本での本格的なウイスキーづくりの始まりです。

あなたがもっとも感慨深いと思うのはどの周年行事でしょうか? 
周年行事で感慨深いと思うもの
サントリーウイスキー100周年の記念会見
サントリーはサントリーウイスキー100周年の記念会見を開催。鳥井社長は洋酒文化を広めようと取り組み、ウイスキーはいい時もそうでない時もあったけれど、品質向上の努力と投資を絶え間なく続けてきたと振り返った。

【調査概要】
調査方法:WEBアンケート調査
調査期間:2023年1月31日~2月7日
有効回答:171人(酒好きな人)


※記事の情報は2023年2月16日時点のものです。

  

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