「獺祭」の旭酒造が主宰の山田錦コンテスト、優勝賞金3000万を射止めたのは?
日本酒のための米といえば山田錦。「獺祭」を製造する旭酒造は、毎年、山田錦のコンテストを開催しています。優勝賞金はなんと3000万円。その狙いは最高の米で最高を超える酒をつくること。さて、今年、この栄冠を射止めたのは?
NYサザビーズオークションで1本112万円
この商品は、山田錦コンテストで2021年のグランプリを獲得した、岡山県の高田農産の山田錦から生まれたもので、23本限定で製造されました。ワインでは100万円を超えるものも珍しくありせんが、日本酒がこれだけ高価で取引されるのは稀有です。
同社が進める「最高を超える山田錦プロジェクト」は、山田錦のコンテストを主催し原料の米の品質を高め、最高の山田錦で最高を超える酒をつくることを狙っています。
長距離移動に向かないブドウでつくられるワインは、ワイナリーがブドウ畑に隣接しており、最高級品は限られた土地から生まれる最高のブドウから生まれます。一方、米は適切に管理すれば長距離の移動で劣化することはありません。良質な米が生まれる産地から米を調達する仕組みは、酒の質を上げようとするなかで必然として生まれたものです。大麦を原料とするビールも同様で、高品質な麦芽が世界中を行き交っています。
山田錦のコンテストには全国各地の90の農家から出品があり、彼らが手塩にかけた自慢の山田錦が集まりました。これを専門家が吟味し、最高を超える酒づくりに相応しいものを選びます。
審査基準を「心白」が小さく中心にあることに変更
日本酒に詳しい人ならこの基準変更に違和感を持つ方が多いでことでしょう。良質な山田錦はこれまで大粒で心白が大きく中心にあるものとされてきました。このコンテストも2020年までそうした基準でおこなわれましたが、変更した理由を桜井社長は、心拍は柔らかいので大きいと高精白できず割れてしまう、旭酒造は手を惜しまず高精米できる米を求めていくと説明しました。
『獺祭 未来へ 農家と共に』がサステナビリティ賞を受賞
旭酒造はかつて等外米を使った『獺祭 等外』を、リーズナブルなセカンドラベル的に発売したこともありました。ですが、付加価値の高い商品でなければ農家の収入増につながりません。これを終売する一方で、等外米には心白がなく高精白できる点に着目し、よりおいしい酒の開発に取り組みます。こうして誕生したのが精米歩合8%まで磨きあげた『獺祭 未来へ 農家と共に』です。
この成功が山田錦コンテストでの審査基準の変更とも繋がっているのでしょう。旭酒造は従来から“高精白による酒質の向上”を追いかけてきました。『獺祭 未来へ 農家と共に』の開発を通じて、明確に“重要なのは心白ではなくより磨けること”と確信したのだと思います。
そして、この商品は、在日フランス商工会議所が主催するフレンチビジネスアワード 2023で「サステナビリティアワード」を受賞しました。「一粒の米も無駄にしたくない、そのうえでおいしいお酒でないと意味がない」という思い、また、米の生産者あっての酒蔵であり共に支え合って前に進んでいくという行動基準が評価されたと報じられています。
さて、「最高を超える山田錦プロジェクト2022」の審査項目はつぎの6つです。
① 粒がそろっているか
② 心白が中心にあるか
③ 心白がより小さいか
④ ツヤがあるか
⑤ 被害粒(病気にかかっているもの)がないか
⑥ 通常のお米に比べて茶色や緑色に着色しているものがいかに少ないか
最終候補に残ったのは8点で、この中から準グランプリ(賞金1000万円)とグランプリ(賞金3000万円)が決まります。これまでグランプリは、栃木県(準グランプリ兵庫県)、福岡県(〃栃木県)、岡山県(〃兵庫県)と続いています。
新基準が示され栽培時からそれを目指した初の山田錦のコンテストでグランプリを受賞したのは、「農事組合法人 水穂やまだ(熊本県)」でした。名前が発表されるとテーブルから声があがり、登壇した中西洋介さんは満面の笑み。山田錦の栽培には7年前から取り組んでいるそうで、今期は「春先の水不足で苦労したが、(稲を)倒さないように心掛けた」と振り返りました。
この最高の山田錦から、次はどんな「獺祭」が生まれるのか期待しましょう。
※記事の情報は2023年2月2日時点のものです。
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