蒸留酒「ジュネヴァ」、ベルギーの産地訪問記
オランダ産のイメージが強いジンのルーツ「ジュネヴァ」ですが、同じネーデルラントのベルギーでも盛んにつくられ、第2の都市ハッセルトにはジュネヴァ博物館があります。今回はこの博物館とフィラーズ蒸留所のレポートです。
ベルギーのジュネヴァ主産地ハッセルト
旧市街地にある国立ジュネヴァ博物館を訪ねました。古いレンガ造りの蒸留所をハッセルト市が買い取り、改修工事を経て1987年に開館したものです。建物は元々修道院農場で、1階のチケット販売所は牛舎だったそう。その奥では昔ながらの製法で、現在もジュネヴァを製造しています。この博物館の展示から、ベルギー及びオランダ南部でのジュネヴァの歴史について紹介しましょう。
こうした歴史からでしょうか、ハッセルトのジュネヴァ博物館の展示では、アルコール問題や適正飲酒の啓蒙に多くのスペースが割かれていました。
ジュネヴァから総合蒸留所へ フィラーズ(Filliers)
1967年にスタートしたジュネヴァの樽熟成は、すでに50年以上経過しており、この原酒を使えることは大きな財産です。1970年には卵のリキュール「アドヴォカート」をヒットさせ、1986年には初のフルーツフレーバーのジュネヴァをラインナップしました。さらに2007年にはスコットランドからポットスチルを導入してモルトウイスキーの製造を開始し、総合蒸留酒メーカーとしての地位を確立します。現在は最上級のジュネヴァやベルギージン、シングルモルトウイスキーなどで構成する「プレミアム・スピリッツ」と、フルーツ・ジュネヴァやスタンダードなジュネヴァをラインナップする「ファン・スピリッツ」を自社ブランドで展開するほか、国内外からOEMを請け負ったり原酒を供給したりしています。
会社の成り立ちの説明の後、工場を案内してもらいました。レンガ造りの工場の前に建つ四本の巨大なサイロには、原料のモルト、コーン、小麦、ライ麦が蓄えられています。一度、農業を止めて酒造業に専念しましたが、近年は原料の自社栽培を再開、農家との契約栽培も拡大しているそうです。工程順に見学し、大きな縦型発酵タンクでは、発酵中の醪を試飲させてもらいました。
EUの規定でジュネヴァは、単式蒸留器でつくられるモルトワインの割合によって、大きく三つに分けられています。オウド(古い)ジュネヴァはモルトワインを15%以上含むもの、ヤング(新しい)ジュネヴァはモルトワインが15%未満のもの、そしてグレーン・ジュネヴァは穀物だけを原料に連続式蒸留器で蒸留したものです。
※記事の情報は2023年4月6日時点のものです。
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