”自らの手で育てた薬草での酒づくり”に取り組む「金ケ崎薬草酒造」訪問レポート
かつて薬として利用されることも多かった酒は、薬学が発達するとともにおいしさや美しさを求め始めます。世界中で飲まれるカンパリはその典型です。日本でおいしい薬草酒の開発を目指す金ケ崎薬草酒造を訪ねました。
コロナ禍を機にスタートアップ
「リキュールの製造免許で、ベーススピリッツにボタニカルを浸漬してつくる薬草酒を始めました。蒸留もしたいと思っていたのですが、木造の古い建屋なので防火上、蒸留器の設置が難しいこともあって、このやり方を選びました。建屋は農家をやっている実家が、精米所として使っていたもので、ここなら家賃もいりません」
それならリキュールやシロップを自分でつくってみようと思いつき、市場でタイム、ローズマリー、ミント、バラなど香りのいい植物を買い集めて、煮たり、蒸したり、漬けたりしてつくってみたんです。するとこれがなかなか好評で、ボタニカルを活用したカクテルづくりにのめり込みました」
目指すのは日本ならではの薬草酒
「上京してバーで初めて飲んだ酒がベルモット『カルパノ アンティカ フォーミュラ』でした。酒はあまり強くないけれど、せっかくなのでバーらしいものをとお願いしたら出してくれたのです。この一杯がきっかけで酒が好きになり、紆余曲折あって飲食の世界で働くようになりました。
バーテンダーとして洋酒に触れ、海外でも働いてみて、日本には植物がたくさんあるのに薬草酒がないことに気づきました。日本の植物を使った薬草酒をつくり、その工程を知ってもらうことを通じて、日本に新しい酒文化をつくれるかもしれないと思ったのです。よくベルモット(「チンザノ」など薬草のフレーバードワイン)やアマーロ(「カンパリ」など苦みのある薬草リキュール)をつくっているのかと聞かれますが、そういうのをつくっているつもりはなく、日本の素材を生かしたハーブリキュールを目指しています」
独自性を求める料飲店が変える製造のシステム
■ 金ケ崎薬草酒造HP
※記事の情報は2023年3月16日時点のものです。
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