和酒アンバサダー育成プログラム「JSSA」レポート②

海外で活動する日本酒と本格焼酎・泡盛のアンバサダーを育成するプログラム「Japan Sake & Shochu Academy(JSSA)」。毎回評判の日本酒と料理のペアリング理論や、本格焼酎・泡盛を学ぶカリキュラムの様子をご紹介します。

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驚きのSAKEペアリング!

JSSAで毎回、参加者の満足度がもっとも高い講座は日本酒と料理のペアリング理論を学ぶカリキュラムです。ご存じのように日本酒の味わいはバラエティに富んでいます。最近は古い製法を現代の技術で洗練させたり、これまで使わなかった強い酸を出す麹菌を使ったりして、オーソドックスな日本酒の味わいとは異なるおいしさを持つ商品も続々と登場しています。

講座ではこうした個性的な日本酒も組み込んで、複数の日本酒や調味料を料理と合わせてみて、どんなおいしさが現れるかを丁寧に見ていきます。講師は千葉麻里絵さん(EUREKA!オーナー)です。
千葉麻里絵さん
酒ペアリング講座で講師を務める千葉麻里絵さん。独自のペアリング理論をまとめた「最先端の日本酒ペアリング」旭屋出版はロングセラー
サーモンの刺身をヨーグルト、オリーブオイル、レモンジュース、醤油をつけて日本酒と組み合わせる
サーモンの刺身をヨーグルト、オリーブオイル、レモンジュース、醤油をつけて日本酒と組み合わせる
八角の効いた豚の角煮を「そのまま」「辛子」「フルーツソース」「味噌ソース」と食べ比べ、どんな日本酒とどのように合うかを試す
八角の効いた豚の角煮を「そのまま」「辛子」「フルーツソース」「味噌ソース」と食べ比べ、どんな日本酒とどのように合うかを試す
合わせる日本酒は7種類
合わせる日本酒は7種類。タイプの異なる2つの吟醸酒、菩提酛、熟成生酒、うすにごり、強い甘さの熟成酒、熟成酒
7つの試飲酒は色だけ見ても味わいのバラエティの豊かさを感じるラインナップ
7つの試飲酒は色だけ見ても味わいのバラエティの豊かさを感じるラインナップ
講師のリードでサーモンの刺身を4つの調味料で試し、7つの日本酒と相性を比べていく
講師のリードでサーモンの刺身を4つの調味料で試し、7つの日本酒と相性を比べていく
講師の千葉さんがつけた燗酒を常温のものと比べるパートもあった
講師の千葉さんがつけた燗酒を常温のものと比べるパートもあった

世界に飛び出す本格焼酎・泡盛

海外でも日本酒は広く知られるようになってきましたが、本格焼酎・泡盛はまだあまり知られていません。韓国の焼酒や中国の白酒と混同している人も多く、輸出量も30年以上前からほとんど増えませんでした。長年、在外邦人の間で飲まれるだけで、なかなか現地の人々と接点を作れなかったのです。

しかし、近年は世界各地でローカルスピリッツが注目され、短期間に世界中に広まる例が見られます。メキシコの地酒だったテキーラやメスカルは、プレミアム商品が誕生し世界的な酒になりました。ペルーのピスコやオランダ・ベルギーのジュネヴァ、日本でも人気のクラフトジンもそのひとつに数えられるでしょう。

そう遠くない将来、日本の本格焼酎・泡盛もそうしたチャンスが訪れるかもしれません。そうなるに十分な多様性と文化的背景があり、技術的にはたいへん洗練され、他の蒸留酒に比べて低いアルコール度数で味わいを完成させている、独自性に富んだ蒸留酒なのですから。

ちなみに本格焼酎・泡盛の特徴のひとつは、原料の糖化に「麹菌」を使う点です。ウイスキーは麦芽(モルト)を使って穀物を糖化します。果実から造るブランデーやサトウキビを原料にするラムは、もともと糖分があるので糖化の工程がありません。「麹菌」は日本酒をはじめ味噌・醤油など日本の伝統的な発酵食品に欠かせない、発酵文化の基層です。

原料&製法による焼酎の香味の違いを知る

本格焼酎・泡盛のパートでは、焼酎の歴史や多く飲まれている地域の特性などアウトラインを学んだあと、本格的なテイスティングになります。さて、受講生たちはどんな焼酎を試して、その独自性を体感したのでしょうか。
本格焼酎・泡盛のテイスティングをリードした長船行雄(酒類総合研究所主任研究員)
本格焼酎・泡盛のテイスティングをリードした長船行雄(酒類総合研究所主任研究員)
甲類焼酎(日本と韓国)と代表的な本格焼酎(麦・米・泡盛・芋)を飲み比べてアウトラインを掴む
甲類焼酎(日本と韓国)と代表的な本格焼酎(麦・米・泡盛・芋)を飲み比べてアウトラインを掴む
麦焼酎は、軽快な減圧蒸留、産地呼称できる壱岐焼酎(常圧)、芳ばしく甘味豊かな常圧、高アルコールタイプを比較
麦焼酎は、軽快な減圧蒸留、産地呼称できる壱岐焼酎(常圧)、芳ばしく甘味豊かな常圧、高アルコールタイプを比較
米焼酎は減圧、常圧、長期貯蔵の高アルコールタイプを比較
米焼酎は減圧、常圧、長期貯蔵の高アルコールタイプを比較
泡盛は減圧、常圧、長期熟成の高アルコール、3回蒸留タイプを比較
泡盛は減圧、常圧、長期熟成の高アルコール、3回蒸留タイプを比較
芋焼酎はスタンダードな黄金千貫芋の焼酎、同一メーカーの白麹と黒麹と黄麹、柑橘やトロピカルな香りが特徴の2点、高アルコールタイプ
芋焼酎はスタンダードな黄金千貫芋の焼酎、同一メーカーの白麹と黒麹と黄麹、柑橘やトロピカルな香りが特徴の2点、高アルコールタイプ
最後に黒糖焼酎(減圧と常圧と高アルコール)、そば焼酎(減圧と常圧)、粕取り焼酎は伝統タイプと華やかに香るモダンタイプ
最後に黒糖焼酎(減圧と常圧と高アルコール)、そば焼酎(減圧と常圧)、粕取り焼酎は伝統タイプと華やかに香るモダンタイプ

割り方でおいしさが変わる本格焼酎

さて、本格焼酎・泡盛の特徴を学んだあとは、おいしく飲んでいただくための実践的な飲み方の講座です。講師の布施知浩さんは銀座「ごち惣家」のオーナーであり、毎日現場に立つサービスマンです。

芋焼酎と麦焼酎の2つを、「前割り(前日に水で割っておく)」と「水割り」、お湯割りは「先にお湯で後から焼酎」とその逆の順番の比較、ソーダ割り、緑茶割りと飲み比べていきます。

参加者は自分で実際に水割りにしたり、お湯割りを作ったりしていきますが、
「なるべくソーダを氷に当てないように、うまく隙間を見つけて注いでください」
「焼酎に熱湯を注ぐと、熱湯に触れた焼酎のアルコールが激しく揮発してとげとげしく感じる」
「前割りを準備できない時は、焼酎の入ったグラスを傾けて、水をグラスの面に沿わせてゆっくり次ぎ入れてあげると、柔らかい口当たりに仕上がる」
のように、途中で布施さんが次々にコツを伝授していきます。
布施さん
実際に毎日お客さまに焼酎をサービスしている布施さんの言葉には説得力がある
水割りとソーダ割は氷をたっぷり詰めた大きなプラカップで試飲。お湯割りは陶製のマグカップを使った
水割りとソーダ割は氷をたっぷり詰めた大きなプラカップで試飲。お湯割りは陶製のマグカップを使った
スペシャルな「オンザロックお湯割り」のデモンストレーション。焼酎の入ったカップに氷をたっぷり入れ、氷に当たらないようにお湯を注ぎ入れる
スペシャルな「オンザロックお湯割り」のデモンストレーション。焼酎の入ったカップに氷をたっぷり入れ、氷に当たらないようにお湯を注ぎ入れる
 「オンザロックお湯割り」を試した受講生は「アメージング(すばらしい)」と感嘆の声を上げた。口に温かい焼酎と冷たい焼酎が交互に入ってくる
 「オンザロックお湯割り」を試した受講生は「アメージング(すばらしい)」と感嘆の声を上げた。口に温かい焼酎と冷たい焼酎が交互に入ってくる
このコースを受講した12人は5日間の間に100点以上の試飲サンプルを、テーマをもって飲み比べます。しかもそれをリードするのは日本のトップクラスのテイスターたちです。皆、学んだことを持ち帰り、彼らの国で日本酒と本格焼酎・泡盛を広めてくれることでしょう。

※記事の情報は、2024年3月21日時点のものです。

  

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