【ビール4社】変わる業界地図 ~2024年の国内ビール&RTD市場~

ビール4社は1月上旬に恒例の事業方針説明会を開催しました。昨年は10月にビール類の酒税率改正があったほか、新型コロナの5類移行を受けて業務用市場が活発化するという変化があり、どう対応したかで明暗が分かれました。

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大手ビール4社の2023年の実績は?

昨年の国内のビール&RTD(缶入りのチューハイやハイボール)市場は、ビール類(ビールと発泡酒の計)が微減、RTDは微増と推計されています。環境変化としては5月に新型コロナウイルスが5類感染症に移行し、コロナ禍の数年間に抑制されていた外食や観光が活発化しました。また、10月には酒税率の改正が行われ、ビールは減税、旧新ジャンル(現在は発泡酒の一分野に変更)は増税されて発泡酒と同率になる一方、RTDは税率が据え置かれ旧新ジャンルと缶チューハイの価格差は広がりました。

大手ビール4社の昨年の実績は、アサヒ、サントリー、サッポロが、ビール類とRTDともに前年を上回ったのに対して、キリンはビール類マイナス6ポイント、RTDマイナス2ポイントと明暗が分かれました(図表1)。好調だった3社は減税されたビール伸長の流れをうまく捉え、業務用市場の回復にも寄与しました。
 

■図表 ビール4社の2023年の実績と2024年の目標

ビール4社の2023年の実績と2024年の目標
*ビール類は出荷数量。RTDはキリンとサッポロは数量、他は金額
一方、マイナスとなったキリンビールは、その要因を同社の商品構成が「本麒麟」や「のどごし生」など旧新ジャンルの構成比が高く、新ジャンルが増税された影響を強く受けたことを第一にあげました。また、他社に比べて業務用比率(飲食店で飲まれている割合)が低いことも、外飲み回復の恩恵を十分に受けきれなかったと説明しました(堀口秀樹社長)。

しかし、キリンビールと同じくビール類(ビールと発泡酒)のうち発泡酒の構成比が高いサントリーは、昨年初からビールの大型新製品を投入して積極的に攻め、好成績を残しました。

【アサヒビール】本物のレモンスライスが入ったレモンサワーが登場!

今期は酒税率の改正はなく、業務用市場はさらに回復が見込まれます。大手ビール各社はどのようなマーケティングを展開するのでしょうか。まず、ビール類のトップメーカーであるアサヒビールから見ていきましょう。

アサヒビールは減税により増進を続けるビールに集中し、主力の「スーパードライ」ブランドにさらに磨きをかけます。昨秋投入されたアルコール度数3.5%と低い「ドライクリスタル」を10年後のど真ん中と位置づけ積極的な展開を継続、昨年のラグビーW杯で高めた海外でのブランド認知を生かしグローバル化を推進します。
好調な着地に笑顔の松山社長(左)と梶浦本部長(右)
好調な着地に笑顔の松山社長(左)と梶浦本部長(右)

同社の新製品で注目は、RTDの新製品「未来のレモンサワー」でしょう。上蓋がプルオープンになる生ジョッキ缶を採用し、本物のレモンスライスが入ったレモンサワーです。現在は増産体制を準備中で、発売は6月を予定しています。
注目の新製品「未来のレモンサワー」
注目の新製品「未来のレモンサワー」
蓋を開けるとシュワシュワと泡がたつ
蓋を開けるとシュワシュワと泡がたつ
泡が収まるとそこにはレモンスライス!
泡が収まるとそこにはレモンスライス!
レモンスライスはそのまま食べられる
レモンスライスはそのまま食べられる

【サッポロビール】恵比寿で醸造再開! YEBISU BREWERY TOKYOが4月開業

ビール比率と業務用比率が高いサッポロビールは、ビールの減税と業務用市場の回復の恩恵を受けビール類は102%、さらにRTDも新製品「シン・レモンサワー」や「クラフトスパイスソーダ」が寄与して前年比116%と好調でした。

主力の「サッポロ生ビール黒ラベル」は2014年以降1.8倍と、ロングセラー商品としては異例の成長を見せ、「ブランドらしさ」を打ち出す戦略に自信を深めているようです。自ら「近年停滞している」というプレミアムビールは、4月にオープンするYEBISU BREWERY TOKYOを梃に「ヱビス」の活性化を図ります。
個性的なブランド展開で引き続き成長を狙う野瀬社長(左)と武内本部長(右)
個性的なブランド展開で引き続き成長を狙う野瀬社長(左)と武内本部長(右)
「大人を開拓」するメッセージを続ける「黒ラベル」と新たにアグレッシブさを打ち出す「ヱビス」
「大人を開拓」するメッセージを続ける「黒ラベル」と新たにアグレッシブさを打ち出す「ヱビス」
35年ぶりにヱビスビール創業の地でのビール醸造を再開。YEBISU BREWERY TOKYOは4月3日開業
35年ぶりにヱビスビール創業の地でのビール醸造を再開。YEBISU BREWERY TOKYOは4月3日開業

【キリンビール】ビール新製品で巻き返しを図る

さて、昨年苦戦したキリンビールですが、今期は「キリンスプリングバレー」を商品と醸造所をともにリニューアルしてクラフトビール市場の開拓を加速します。また、主力の「一番搾り」は「糖質ゼロ」を尖兵に、機能系ビールを飲んでいない人への浸透を進めます。

増税でアゲンストの環境にある発泡酒ですが、同社はそれでもビール類の4割程度はエコノミークラスが占め、今後も家庭用での主戦場はここと見ています。「本麒麟」をブラッシュアップしビール類全体を下支えするようです。

そして、年内遅くない時期に大型の新製品を投入して巻き返しを図ります。かつて6割を超えるシェアをもった絶対王者キリンビールの復活を期待しましょう。
既存商品で牙城を死守し、新製品で躍進を狙うキリンビール。堀口社長(右)と今村部長(左)
既存商品で牙城を死守し、新製品で躍進を狙うキリンビール。堀口社長(右)と今村部長(左)
キリンビールは17年ぶりにスタンダードビールから新製品を投入
堀口社長は17年ぶりにスタンダードビールから新製品を投入すると明言。まだ、商品の詳細や発売時期も伏せられている

【サントリー】「サントリー生ビール」の生産体制を強化

ビール類の前年比でもっとも好成績を残したのはサントリーです。前年比はビールが131%、発泡酒(旧新ジャンル)で97%、ビール類全体で109%でした。主力の「ザ・プレミアム・モルツ」が109%、糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」が103%と伸ばし、新製品「サントリー生ビール」が約400万ケースのヒット商品となりました。この商品は好調さを受けて、今期は樽生ビールを発売し業務用でも本格展開します。
環境変化に適応し好成績を残したサントリービール。鳥井社長(左)と多田常務
環境変化に適応し好成績を残したサントリービール。鳥井社長(左)と多田常務
サントリーはプレミアム・スタンダード・機能系の3つのカテゴリーでブランドを確立、攻勢を強める
サントリーはプレミアム・スタンダード・機能系の3つのカテゴリーでブランドを確立、攻勢を強める
※記事の情報は、2024年1月25日時点のものです。

  

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