2017.10.10
212 view

イタリア人の新発想! もんじゃ焼きに合うワインはこれだ!

もんじゃ焼き

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが、在住していたヴェネツィアをはじめ、イタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、イタリア人が教えてくれた、もんじゃに合わせるとおいしいワインのお話です。

初体験! イタリア人ともんじゃ焼きへ

イタリア人をもんじゃ焼きに連れて行ったら、どんな感想を口にするかな? これは私の長年の夢のようなものだった。この夏、それが実現した。2002年のサッカーW杯で通訳をして以来のおつきあいで、写真家のサルヴァトーレ・ジリオさんが久しぶりの来日。なんと、一緒にもんじゃ焼きを食べに行くことになったのだ。そしておもしろいことに、話がワインに及んだ。

 

「もんじゃ焼きに合うワイン?」

 

みなさん、イタリア人はもんじゃ焼きにどんなワインを合わせると思いますか?

 

さて、彼の実家はシチリア島。ワイン用のブドウ農園を持ち、食通でもある彼は、午前中に築地市場を見物すると、「寿司以外で、日本らしいものを食べたい」とわがまま(?)を言うので、もんじゃ焼きを提案したところ、オーケーとなったのだ。

 

ビールをおともに、最初は野菜炒めや海鮮焼きなどを頂いたが、そのうち彼も自らヘラを手に取り、「屋内でやるバーベキューだね」とご満悦の様子だ。イタリアでは家の中で鉄板焼きなどしない。いよいよ「もんじゃ」を焼き始めたときのことだ。ふと英語表示もあるメニューに目を留めた彼が、「ワインを頼もう」と言い出した。確かに、メニューには「ワイン」の項目があるのだが、それは大手メーカーが大量生産する日本製ワインのボトルだった。イタリア人の口に合うだろうか? 躊躇していると、

 

「日本のバーベキューには、日本のワインがいい。シニョリーナ(お嬢さん)、これをお願い」(私が通訳している)

 

ところが、

 

「これ、いける」

 

思わず声を上げたのは、私だった。

意外にもマッチした日本の白ワイン

彼の頼んだ白ワインは、思いのほか、もんじゃの味にマッチしていた。ホタテとエビとイカが入った「海鮮もんじゃ」を頼んでいたが、それに、ちょっと甘めの口当たりの白ワインが好相性だった。醤油味漂うもんじゃだが、魚介系の出汁やシーフードがよく効いて、白にぴったりの素材となっていた。彼にも感想を聞いてみると、

 

「うん、いいコンビだ。セミヨンに合うと思った。バッチリだ」

 

たまたまワインの説明書きにsémillonと表記があったのだ。「セミヨン」は白ワイン用のブドウの品種だ。このブドウからは「辛口」のワインができるのだが、酸味が軽いのが特徴で、時に辛口でもやや甘めの口当たりになる。ボトルの表示をよく見ると、ほかに日本のブドウ品種もブレンドされていた。それにしても、ブドウ品種をみて、即座に相性を見抜くなんて、さすがワインの国の人だ。

イタリア人が教える、もんじゃ焼きに合うイタリアワイン

もんじゃ屋さんを出て、銀座へ移動した。コーヒーをいただきながら、私は「もんじゃに合うワイン」というのが、とてもおもしろかったので、あらためて彼に聞いてみた。

 

「もんじゃ焼きに、イタリアワインならどんなものが合うと思う?」

 

すると、大変興味深い答えが返ってきた。

 

まず挙げたのは、Zibibbo(ジビッボ)だ。これはシチリア産の白ワイン用ブドウ品種であるが、別名をMoscato d’Alessandria(モスカート・ダレッサンドリア)。そう、実はあの甘口ワイン(デザート・ワイン)を作るマスカットなのだ。そのブドウをシチリアで栽培したものがZibibboと呼ばれるわけだ。が、シチリアではこのマスカット種で「辛口」ワインを作るのだ。ワイン名もZibibboを使っている。Zibibbo di Pantelleria(ジビッボ・ディ・パンテッレリーア)などが有名だ。

 

「もう一つ、イタリアではなく、アルゼンチンなのだけど」

 

そう前置きして挙げてくれたのがTorrontés(トロンテス)だ。これはアルゼンチン産の白ワイン用ブドウ品種なのだが、なんとこちらも実はMoscato d’Alessandriaの自然交配種、つまりは Zibibboと同じマスカット系で、いわばZibibboとTorrontésは親戚同士なのだ。さらに、アルゼンチンでもこのブドウを使って「辛口」白ワインを生産する。

 

この発想は、大変におもしろいと感心した。「甘口ワイン用のブドウで作った辛口ワインが日本の食事に合う」とは。なるほど、辛口ながらも、そこに秘められた「甘み」をもつワインなら、ちょうどワインを日本酒の雰囲気で飲めることに、あとで私も気がついた。なるほど、これなら和食のテイストにも合うはずだ。ワイン王国の人の味覚と目の付け所に、脱帽する思いだった。

 

「それにしても、鉄板から直接口に運ぶなんて。初めての経験だ。そんなに熱いものならば、ワインはキンキンに冷やしておくことだ。火傷のためにもね」

 

彼は笑って、そう付け加えるのを忘れなかった。

 

※記事の情報は2017年10月10日時点のものです。

京藤好男

京藤好男

東京外国語大学イタリア語学科卒業。1995年ヴェネツィア大学留学。イタリア文学専攻。その滞在期間中、ヴェネト州のヴェローナ、ピエモンテ州のランゲ、トスカーナ州のモンタルチーノなど、ワイン名産地の人々と親交を持ち、イタリア・ワインに親しむ。現在、慶應義塾大学など複数の大学で講師を務めるほか、2006-2008年にNHKラジオ『イタリア語講座』、2007年にNHK『テレビイタリア語会話』で講師を務めるなど、様々なメディアで講師活動をしつつ、ワインを始めとするイタリア文化の普及に努めている。著書に『指せば通じる旅のらくらく会話 イタリア』、『文法から学べるイタリア語』(共にナツメ社)、『中級へのイタリア語文法』(三修社)など多数。

この記事を書いた人の最近の記事

すべての記事を見る

Monthly Access Ranking

月刊アクセスランキング