ロシアの日本酒事情
ロシアと日本酒?あまり結びつかない両者の意外な相性を発見! 日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さんのロシア日本酒事情リポートです。
ロシアに日本酒事情を見に行った
今や日本酒は世界中で流通しています。そして最近はロシアでも親しまれているとか。私の経営する株式会社SAKE Sceneでは、日本酒の輸出をしているのですが、この6月、今後の参考のためにモスクワに足を運んで日本酒の流通事情を見てきました。 私自身、ロシアは初めての訪問で、未知の世界です。
私は以前、貨物輸送業の会社にいたのですが、ロシアには「輸出の難しい国」というイメージを持っています。日本から荷物が出る前に書類を提出し、ロシア側の承認が下りていなければ輸出はできません。そのため、ロシア側の輸入業者もかなり絞られていますし、小さい会社が参入するには、時間もコストもかかり、なかなか大変そうです。
ロシアで飲食店を経営している方にもヒアリングし、ある程度リサーチしました。どうもアルコールライセンス輸入業者の半独占的な市場が確立しているようです。そのため、日本酒の流通はしていますが、銘柄が他の国に比べて少なめです。そして、寒い国なので、冬場は輸送中に凍ってしまわないような対応も必要です。
モスクワの高級スーパーで日本酒の棚をチェック!
さて、実際にモスクワに降りたってみると…… 最初の印象としては「意外と日本酒を見かける!」という感想でした。高級スーパーには、一応日本酒コーナーがありました。全て火入れの日本酒で、冷蔵庫ではなく常温の棚です。価格は、日本で4合瓶(720ml)税抜1300円くらいのものが、4000ルーブルぐらい。日本円にすると6500円ぐらいになるため、ざっと計算して日本の5倍くらいの小売価格でした。ワインに比べても高い感じがしました。
そして、ロシアには安くてアルコール度数の高い、ウォッカという強力なライバルがいます。以前ロシアでは、このウォッカをはじめとしたアルコール飲料の飲み過ぎで病気になる人や、路上で凍死する人が多く、平均寿命が下がってしまったそうです。そのため、現在、政府によって夜間はアルコールを販売しない規定を作ったのです。
モスクワの中心地は、夜も観光客が多く出歩いていて歩きにくい程でした。何やら皆さん楽し気に、路上のパフォーマンスを見ながらそぞろ歩きしていました。もう少し、暗い国、というイメージでしたが、想像していたロシアとはまるで違いました。
飲食店で意外と活躍している日本酒
さて、飲食店にも行ってみました。おしゃれなホテルのルーフトップバーでも日本酒が提供されています。そして、ディスプレイにも日本酒の空き瓶が使われているほどの人気。日本酒ビジネスに携わる者として、とても頼もしい光景に見えました。
ホテルののロシア美人に日本酒の瓶を持ってもらいパチリ。日本酒流通の国際化を感じた瞬間でした。
モスクワのリッツカールトンホテルに、かなりの銘柄数を扱うレストランがある!という情報を得て行ってみました。ロビーで和食のレストランはありますかと聞くと、「?」という反応。不安になりながらも別のスタッフに聞くと、和食だけではなくアジア系料理のレストランだったようです。
日本酒は、全部で16銘柄も扱っており、オーダーすると徳利とお猪口で提供されました!これまた嬉しい驚き。
価格は、先ほど小売価格を書いた日本酒(四合瓶で6500円)が、100mlで730ルーブルでした。4合瓶計算で8500円ぐらいですね。価格の比較ばかりして、はい、嫌な客です……。そんなお客に、マネージャーらしき方は、売れ筋の日本酒も教えてくれました。ロシア人の皆さんは、構えていたほど怖くなく、笑顔も見せてくれる良い方が多かったです。
ロシア料理と日本酒の相性は?
ロシア料理と日本酒の相性を考えてみましょう。ロシア人は、とてもサワークリームが好きです。ビーツの赤が鮮やかな、ボルシチや、ビーフストロガノフにもサワークリームを入れます。サワークリームも発酵食品なので、日本酒に合うのでは? と思います。
また、スープの種類も多く、野菜や魚の旨味を感じる料理も多いです。キャビアなど魚卵も多く、こちらも日本酒にはぴったりですね。
ロシアで日本酒!
モスクワでは、人々の日本酒に対する知識もまだまだだとは思いますが、さまざまな方にお話しを聞いてみても、確実に良い方向に向かっていると思いました。 以前海外の展示会に出展した時も、ロシアの食品の展示会によく誘われました。 とても美しく、重厚な街並みで観光にもお勧めです。 ぜひ皆様もロシアへ!今回行ってみて、とても好きになりました。そして、本場のボルシチと日本酒を味わって見てください!
※記事の情報は2019年8月14日時点のものです。