極上の甘口! アイスワインとはどんなお酒? おいしい飲み方や選び方も紹介!

アイスワインは、さわやかな甘みとうっとりするようなアロマティックな香りが特徴のデザートワイン。一杯飲むだけで食後の充実度を一気にあげられるアイテムです。今回はアイスワインの基礎知識やおすすめの飲み方、選び方についてソムリエがわかりやすく解説していきます。

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アイスワインとは?

ブドウ畑と白ワイン
アイスワインと聞くと、凍らせたワイン?と考える人もいるかもしれませんが、アイスワインは凍ったぶどうを原料にして造られるワインです。

樹上で凍ったぶどうを収穫し、氷結状態で圧搾するので、ぶどうの中の水分は凍ったまま、凝縮したエキスだけを抽出することができます。抽出した搾汁は通常のワインの1割ほどと非常に少なく、ぶどう一房から取れる果汁は、なんとスプーン一杯程度。そのため希少性が高く、価格も高めのものが多くなります。水分が抜け、凝縮した甘みのある果汁をベースにして醸造し、アルコール度数は7~12%ほどに調整されます。

極寒の中、手作業で摘み取る手間や、収穫時期を遅らせることによる鳥獣被害のリスクを考えると、価格の高さにもうなずけます。

アイスワインの発祥は?

アイスワインは18世紀末に、ドイツのフランコニア地方で偶然生まれました。収穫寸前のぶどうが寒さで凍ってしまったことがきっかけです。従来凍ったぶどうはワイン醸造には適さないため廃棄していたのですが、当時「捨てるのはもったいない」と考えた生産者が、試しに凍結したぶどうでワインを造ったところ、果汁が凝縮した甘口のワインが誕生したのです。

アイスワインはいつ飲むの?

貴腐ワインやポートワインなどと同じデザートワインであるアイスワインは、主にディナータイムのあとに飲むシーンが多く、ケーキやアイスクリームに合わせたり、チーズと一緒に楽しんだりします。しかし最近ではディナー前のアペロ(食前酒)として一口だけいただく、というスタイルもあり、比較的自由度の高いお酒と言えます。

アイスワインと貴腐ワインの違いは?

同じデザートワインの仲間であり、代表的な甘口ワインの一つに「貴腐ワイン」があります。貴腐ワインはフランスのソーテルヌ地区で生まれたワインで、ぶどうの果皮についた貴腐菌によってぶどうの水分が抜け、果汁が凝縮して糖度の高い貴腐ワインになります。貴腐菌の影響を強く受けるので、香り、味わいともに複雑味があり、はちみつのような濃厚な甘みと長い余韻が特徴です。

一方、アイスワインは凍結した果汁から搾汁するため、甘口ながらも果汁本来の甘みが感じられるクリアな飲み口に仕上がります。デザートワインのなかでもアイスワインは上品な甘みとバランスの取れた酸味が特徴です。ただ単に甘ったるいだけではなく、果汁本来の酸味があるので、貴腐ワインやポートワインよりも比較的飲みやすいタイプのワインであると言えます。

アイスワインの産地は?

雪山風景
アイスワインの発祥地であるドイツから隣国のオーストリアに伝わり、ドイツの製造者がカナダに移住したことによってカナダでアイスワインづくりが活発化しました。また、アイスワインという名称は国際登録商標になっているため、現在ではドイツ、オーストリア、カナダの3カ国で造られたものしかアイスワインを名乗れません。

アイスワインは各国で収穫時に関する厳しいルールが設けられており、非常に手間のかかるワインです。たとえば「収穫時期は極寒期の12~2月の間のみ」「3日間以上マイナス8度が続く日で、ぶどうが凍っている真夜中に手摘みで行う」といった細かいルールがあります。
 

■カナダ産アイスワインの特徴

3カ国の中では後発国ですが、現在のアイスワイン市場において最も生産が盛んな国です。

使われるぶどうは、オンタリオ州を中心に、ブリティッシュ・コロンビア州でも栽培されている「ヴィダル」というカナダの土着品種が特に有名。ヴィダルは耐寒性が強く、寒さに厳しいカナダの気候条件にも耐えうる品種です。

「VQA(ぶどう醸造業者資格同盟)」が定める厳しいルールに則って醸造されているため、VQAマークがついているアイスワインは高品質で、世界中のワイン愛好家から支持されています。近年では土着品種のヴィダルだけでなく、黒ぶどう品種のカベルネ・フラン、白ぶどう品種のリースリングからも造られています。
 

■ドイツ産アイスワインの特徴

アイスワイン発祥の地、ドイツでは伝統的に甘口ワインが造られていましたが、2000年以降は辛口ワインの生産にシフトするようになり、現在ではアイスワインの生産量は下降気味です。

ドイツのアイスワインは、リースリングを中心に造られます。リースリングはドイツでもっとも多く栽培されている代表的なぶどう品種で、全体の2割以上を占めます。リースリング特有のアロマティックで優雅な香りと、きりっとした酸味が特徴で、国内外問わず世界中から支持を集めています。

また、ドイツはぶどうを収穫時の果汁糖度によって格付けしており、以下のように6段階に分類されています。

●収穫時の果汁糖度による格付け(上から順に収穫時の果汁糖度が高いものになります)
・トロッケンベーレンアウスレーゼ
・アイスヴァイン
・ベーレンアウスレーゼ
・アウスレーゼ
・シュペトレーゼ
・カビネット


アイスワインは2番目の等級の「アイスヴァイン」に該当し、最低アルコール度が5.5%からと控えめなので、飲みやすいのも人気の理由です。


■オーストリア産アイスワインの特徴

オーストリアはドイツの隣国で気候条件も似ており、かつては多くのアイスワインを造っていましたが、現在ではドイツと同様、生産量は減少傾向にあります。

使われるぶどう品種はオーストリアを代表する白ぶどう品種「グリューナー・フェルトリーナー」が中心です。

また気候の温暖化により、通常の白ワインや赤ワインを造る条件の方が好ましくなったこともあり、かつてアイスワインを造っていた生産者の多くは辛口ワインの生産にシフトしています。

アイスワインの選び方は?

ワイン選び
アイスワインは国際登録商標のため、ドイツ、オーストリア、カナダの3カ国で生産されたものしかアイスワインと名乗れません。ただ市場には、他の諸外国や日本において同様の製法で造っているワインが多くあります。そのほとんどは、ぶどうを人工的に凍らせて醸造しているため、コストをあまりかけずに造ることができます。比較的安価で手に入れられる反面、品質は生産者によってまちまちなので注意が必要です。
 

■赤か、白かで選ぶ

アイスワインは赤も白もありますが、多くは白ぶどうでつくる白ワインタイプです。白ワインは果実味のあるフルーティーさを楽しめますし、赤ワインは果皮のニュアンスが加わるので、よりコクのある味わいに仕上がります。はじめてアイスワインを購入される場合は、白ワインタイプがおすすめです。


■生産国orぶどう品種で選ぶ

アイスワインに使われるぶどう品種は限られています。各国の代表的なぶどう品種をおさえておけば、好みに応じてセレクトできるのでチェックしてみましょう。
 

●カナダ:ヴィダル(Vidal)

主にカナダで栽培される白ぶどう品種で、耐寒性が強いのでアイスワインに最も適した品種と言えます。煮詰めた白桃やトロピカルフルーツのようなフルーティなアロマと、オレンジのようなさわやかなニュアンスが特徴です。


●ドイツ:リースリング(Riesling)

ドイツを代表する白ぶどう品種。しっかりした酸味とアロマティックな芳香が特徴です。アイスワインにも適した品種で、飲み口はやや酸味が残るのでスッキリとした後味に仕上がります。
 

●オーストリア:グリューナー・フェルトリーナー(Gruener Feltriner)

オーストリア原産の白ぶどうで、ハーブやグレープフルーツのアロマがあり、ミネラル感のある味わいが特徴です。白ワインだとすっきりした辛口になりますが、アイスワインでは甘味と酸味のバランスのとれた素晴らしい味わいになります。

アイスワインのおいしい飲み方は?

アイスワイン
アイスワインを楽しむには温度と使うグラスが重要。おいしく飲める温度を知ったうえで、「小さめのグラスに少量注ぐ」のがポイントです。


■適切な温度とグラス、保存方法は?

キンキンに冷やした状態で飲む人もいますが、温度が低すぎるとアイスワイン特有の華やかな香りが閉じてしまいます。香りも含めて適切な温度は5〜9℃前後。冷蔵庫での保管でしたらグラスに注いで5〜10分程落ち着かせてからいただくのがベストです。

また、通常のワイングラスにワインと同量注ぐのではなく、少し小ぶりのグラスに少量注ぐのがアイスワインの正しい飲み方。小ぶりのグラスを使うことで、温度変化が穏やかになり、香りがグラス内にこもるので長くゆっくりと楽しめます。小ぶりのグラスがない場合は、フルート型のシャンパーニュグラス(縦型の細長い形状)でも◎。

アイスワインはたくさん飲まなくても1〜2杯ほどで十分満足できるので、飲み残した場合はコルク栓でしっかりふたをして冷蔵庫で保存しましょう。1週間〜10日前後は持ちます。通常ワインは抜栓して3日以上経つと酸化が進んで劣化しはじめますが、アイスワインは糖度が高いため、比較的長持ちするのも嬉しいポイントです。

アイスワインに合うおすすめのおつまみは?

アイスワインは食中にはあまり向かないので、ティータイムや食後酒として楽しむのが一般的。味わいは甘口なので、フォアグラやブルーチーズといった塩味の強い食材との相性がとてもよいです。またはガトーショコラやフォンダンショコラ、フルーツタルト、ガトーフレーズといったケーキにも合うので、休日のお昼にケーキとともにいただくのもおすすめです。

アイスワインを楽しもう!

アイスワイン2
甘口ながらもさっぱりとした飲み口のアイスワイン。近年の温暖化の影響もあり、今後ますます自然に凍ったアイスワインの醸造は希少価値を生むだろうと言われています。

アイスワインを飲むと、高揚感に包まれながら優雅なひとときが過ごせます。ちょっと贅沢をしたい日や、記念日や誕生日、クリスマスといった特別なイベント事の日にゆっくり味わうのがおすすめです。一口飲むときっと虜になりますよ。ぜひお試しあれ。

※記事の情報は2021年9月17日時点のものです。
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