おでんに燗酒がおいしい理由〈燗酒ステーション「ご当地おでんに燗酒~両国駅で飲みましょう」その➀〉
寒い冬にもってこいな「おでんと燗酒」の組み合わせが最高な理由とは?
1月に「燗酒ステーション『ご当地おでんに燗酒~両国駅で飲みましょう』」が開催されます。JR両国駅まぼろしの3番線ホームで全国燗酒コンテストの入賞酒を「ご当地おでんシリーズ」(紀文食品)とお楽しみいただくイベントです。詳細が固まり次第お知らせしますが、その前に今回は燗酒とおでんがおいしい理由をご説明します。
温めておいしい日本酒
寒い時には温かいだけでうれしい燗酒ですが、なかには燗をするとおいしさがグンと増すものがあります。なぜおいしさが増すのでしょうか? 専門家を集めてさまざまな日本酒を冷酒、常温、燗で飲み比べして、燗にしておいしくなった(その酒の良さが引き立った)と感じるものを選んでみました。多くの票を集めたのは、生酛系(山廃づくり含む)の酒と熟成した酒でした。これらの酒は乳酸、コハク酸、アミノ酸が豊富です。対照的なのはフレッシュでフルーティーに仕上げた吟醸酒です。このタイプの酒にはリンゴ酸が豊富で冷やすとさわやかさが際立ちます。
燗しておいしいとされた酒に多く含まれる乳酸、コハク酸、アミノ酸は、温めるとおいしいと感じる性質があり、反対に冷やすと渋く感じたり、重く感じたりします。一方、フレッシュでフルーティーな酒は温めると味の輪郭がぼやけて締まりがないと感じます。ここから一般的なセオリーとして、温めておいしい成分が豊富なものは燗で味わいが増し、冷やしておいしい成分が豊富なものは冷酒で冴えるということができます。
おいしく燗をつけるコツ
ところで皆さんは燗をつけたことがありますか?
イエノミで燗を楽しむには上手な燗のつけ方を知っておくとよいでしょう。と言ってもまったく難しくはありません。失敗するのは火加減を間違えて沸騰させてしまうことくらいで、ぬるければもう少し加熱すればいいですし、熱すぎたと思ったら好みの温度に醒めるのを待って、温度が下がるとともに変化する味を楽しめばいいのです。
沸騰させないためのコツは、湯煎するときに火を止めてから徳利を湯に漬けることです。もとの酒の温度や量、徳利の材質にもよりますが、1分30秒くらいで45℃前後になります。電子レンジを使う時には徳利の形に注意します。容器の細くなったところが高温になる背質があるので、首の細くなったところだけ熱くなってしまいます。寸胴の徳利を使ったり、箸を1本差して滞留させるようにしたりすると、部分的に熱くなる温度ムラはなくなります。燗した酒を別の徳利に移し替えて温度ムラをなくすのも手早くできます。
うまみとうまみの相乗効果
日本酒は他のお酒と比べてアミノ酸などのうまみ成分が豊富です。また強い酸味や苦みや渋みがないので、料理との相性の幅が広いという特長があります。レストランのコース料理と違って、家庭では一度にいろいろな料理が食卓に並びます。昨日の我が家の夕飯はサラダ、お刺身、唐揚げ、キムチでした。こんな時に料理との相性の幅が広い日本酒は便利です。うまみが料理に寄り添って、何をつまみにしてもおいしくいただけるのです。
とは言うものの日本酒と料理にはベストマッチという相性があります。たとえば燗酒とおでんです。相性の善し悪しのセオリーは「似たものどうしを合わせる」というものです。燗酒に向く日本酒を探した時と同じように、専門家が日本酒とさまざまな料理の相性の善し悪しを試していくと、成分が似た日本酒と料理の組み合わせは、おいしいという評価が増えました。つまり酒と料理の成分を知っていれば、相性のよいものがわかるということです。
このセオリーで考えると、燗をしておいしさが増す温旨系タイプの酒によく合う冬の料理の筆頭は「おでん」です。濃厚な出汁の旨味成分、醤油由来の乳酸、甘味成分などがたっぷりと素材に滲み込み、それに和辛子の刺激味が加わり、温旨系のうまさが溢れています。これらは同じく温旨系の生酛・山廃づくりの日本酒とよく合います。寒ブリの照り焼きも同様。さらに刺激味があるキムチ鍋や、牛脂が強くなるすき焼きには、より温旨系の成分が豊富な熟成古酒がよく合います。お試しください。
※記事の情報は2018年12月13日時点のものです。