能作のぐい吞みに刻まれた名山に思いをはせつつ今宵もちびりちびり〈PR〉

家飲みの気分を上げてくれる錫(すず)100%の能作の酒器に出合ったのが昨年のこと。以来、我が家の酒器ローテーションに入り、晩酌の気分転換に一役買ってくれています。錫100%ならではの柔らかな光沢、指先と唇で味わうお酒の味わいは格別。すっきりとした美しいフォルムの酒器に加えて、能作ならではの山やダムをモチーフにデザインされたぐい吞みもお薦めです。3000m級の山々に思いをはせつつ、今宵も一献!

ライター:すずき あきらすずき あきら
メインビジュアル:能作のぐい吞みに刻まれた名山に思いをはせつつ今宵もちびりちびり〈PR〉
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能作の錫100%の酒器が家飲みの定番アイテムになってきて、ほかの能作の酒器も気になり始めました。能作ショップにもしばしば通うようになり、ぐい吞みの「山シリーズ」に目がとまりました。能作がシリーズとして打ち出しているわけではないのですが、「山」に関連した一連の酒器ラインナップが、見ていて楽しいのです。自分へのご褒美、パートナーにプレゼントなどで手元にあると、お酒もついつい進みますよ。

山やダムを愛でる能作の酒器

錫の酒器を手にしてみて、能作って富山県のメーカーなんだなあ、とあらためて納得するのが、その名も「立山のぐい吞」です。長野県と富山県の境に聳える立山連峰には2000m級、3000m級の山々が連なります。その連峰を高さ4cmちょっとの酒器に刻んでしまうという大胆な発想で作られたぐい吞み。
能作「立山のぐい吞」
「立山のぐい吞」は日本酒の複雑な旨味をちびりちびりと楽しむのに最適
と言われても、どこが立山連峰なのか、一般人には分からないですよね。実は購入時にはぐい吞みの底に赤いシールが貼ってあります。これをうっかりはがさないでください。立山連峰の中で最高峰である3015mの立山の位置を示しているのです。そこを目印にして、元々製品に付いてくる山の名前と標高が記されたトレーシングペーパーの説明用紙を被せるのです。
立山連峰の中で一番標高の高い立山は標高3015m
立山連峰の中で一番標高の高い立山は標高3015m
これで、表面に刻まれている個々の山々と名前が一致します。立山、浄土山(2831m)、奥大日岳(2611m)、別山(2880m)、剣岳(2999m)が望めるでしょう! ということで、繰り返しですが、底の立山の赤いシールをはがす前には、是非スマートフォンなどで記録しておいてくださいね。
トレーシングペーパーには刻まれた山の名前と標高が記されている
トレーシングペーパーには刻まれた山の名前と標高が記されている
これが登山家憧れの剣岳の頂
これが登山家憧れの剣岳の頂

能作の山のぐい吞みには標高3776mの霊峰富士もあります。その名もずばり「富士山 FUJIYAMA」。こちらもテーブルに伏せてしみじみ眺めてみると、富士山の山襞が克明に刻まれているのが分かります。
「富士山 FUJIYAMA」ぐい吞みの山襞。内側に金箔を貼ったものもあります
「富士山 FUJIYAMA」ぐい吞みの山襞。内側に金箔を貼ったものもあります
さあ、手に持って。日本酒を注いでみると、あれれ、何やら底の方に突起物が。高さ1cmほどのミニ富士山がそそり立っているではありませんか!
内側を見るとそこにはミニ富士山がそびえています
内側を見るとそこにはミニ富士山がそびえています

能作社長の洒落っ気を具現化

富山県高岡市で能作の能作克治社長にお会いする機会を得ました。1916年創業の鋳物メーカー「能作」で、2003年に世界初の「錫100%」の酒器・食器を開発して成功させたご当人です。その能作社長が、「私はおやじギャグや冗談が好きでねー」と、真面目な顔でおっしゃる。

「立山連峰のパノラマをぐるっと巻いて作ったのが「立山のぐい吞」ですが、作ってみたら社員が、これって富士山に似てませんか、と言うんです。それは面白いな、富士山も作ってしまおうかと、本当に作ったのがこの『富士山 FUJIYAMA』なんです。折しも富士山が世界遺産に登録されたタイミングでした。器の内側にはミニ富士山があります。これを見ながら飲むのを“富士見酒”と呼ぶんですよ(笑)」


 能作克治社長。ご自身もデザインから鋳造まで手がけてきた

社長の洒落っ気で生まれた「山」つながりの酒器をもう一つ。鹿児島県の桜島をモチーフにした「桜島タンブラー」です。すっきりしたデザインのタンブラー。日本酒だけではなく鹿児島の芋焼酎の水割りとかにもよさそう。
すっきりとしたシェイプの「桜島タンブラー」。容量は約220cc
すっきりとしたシェイプの「桜島タンブラー」。容量は約220cc
こちらも内側の底を覗いて見てください。ちゃんと? 桜島がそびえています。これはぐい吞みよりさらに大きいタンブラーで、約220cc入ります。1合(180cc)以上入ってしまうということです。ワインやビールよりアルコール度数の高い日本酒を飲むのですから、飲み過ぎには気を付けましょうね。
はい。底を覗けば桜島が見えます
はい。底を覗けば桜島が見えます
能作社長のノリの良さが形になった製品の中で一番の傑作は、「黒部ダムのぐい吞」だと思います。長野県と富山県をケーブルカーやロープウエイや電気バスで結ぶ「立山黒部アルペンルート」。その行程の途中にあるのが富山県の黒部川最上流のアーチ式ダム、黒部ダムです。186mの高さは日本一で、50階建てのビルとほぼ同じ高さだそうです。ダム展望台から続く外階段からダム堰堤を見下ろすと、吸い込まれてしまいそうな怖さを感じるほどの大迫力。見どころは観光放水で、毎年6月下旬から10月中旬に実施され、毎秒10トン以上の水が大きなしぶきをあげながら霧状に落ちる様は圧巻です。
「黒四ダム」とも呼ばれる貯水量2憶トンの壮大な黒部ダムと迫力満載の観光放水
「黒四ダム」とも呼ばれる貯水量2憶トンの壮大な黒部ダムと迫力満載の観光放水
その雄大な景色を眺めて能作社長はこうつぶやいたそうです。

「黒部ダムに貯まった水が全部酒で飲めたらいいなー」。

そんな酒好きの社長のアイデアから生まれた「黒部ダムのぐい吞」には、小さな穴が2個並んで空いている。これはダム堰堤の観光放水用の穴ということです。指で押さえて飲まないと、せっかく注いだお酒を「放水」してしまうことになる! 山の稜線でギザギザになっている縁のどこに口をつけて飲んだものか。穴を抑えながら器の隅々まで山々を見渡すことになります。
「黒部ダムのぐい吞」
「黒部ダムのぐい吞」
「黒部ダムのぐい吞」
「黒部ダムのぐい吞」の手前がダム堰堤で観光放水の穴が。ダムの向こう側に立山連峰が縁どられている
いただくときには観光放水の穴を指で押さえて!
いただくときには観光放水の穴を指で押さえて!
指で押さえないとお酒を「放水」してしまいますよ。ほら言わんこっちゃない!
指で押さえないとお酒を「放水」してしまいますよ。ほら言わんこっちゃない!

技術力の高さが実現する優れたデザイン

能作社長のノリのよいアイデア、あるいは、腕利きのプロダクトデザイナーの優れたデザインを錫100%の製品として完成させられるのは、職人さんの確かな鋳造技術の裏付けがあってこそ。能作のアイデアとデザインと鋳造技術との連携の結晶といえる商品の一つが、自分の思い通りに曲げて使う、世界的にも評価の高い「KAGO」シリーズでしょう。
「KAGO」シリーズの「スクエア」。小野さんの故郷、仙台の七夕まつりのお飾りがモチーフ
「KAGO」シリーズの「スクエア」。小野さんの故郷、仙台の七夕まつりのお飾りがモチーフ(photo/NOUSAKU)
曲げる角度は好みのままに。やり直しをしても大丈夫
曲げる角度は好みのままに。やり直しをしても大丈夫(photo/NOUSAKU)
はい完成。こんな食材を入れるのに重宝します
はい完成。こんな食材を入れるのに重宝します(photo/NOUSAKU)
「KAGO」をデザインしたのは、プロダクトデザイナーの小野里奈さんです。「ienomistyle」の能作の酒器の記事(2020年9月15日)にご登場いただいた小泉誠さんが、曲げる食器の「Tincry(ティンクライ)」の製品化を実現させて以来、「能作の曲がる錫100%の食器」が話題になり始めた頃のことでした。

きっかけは富山県・富山市・高岡市が中心となり1990年から開催している国内最大級のデザインイベント「富山デザインウエーブ」。そのワークショップに招待されて、小野さんが錫100%の鋳造で参加したのが2007年のことでした。当時、小野さんは、山形県にある東北芸術工科大学の助手が任期満了になり、将来についてあれこれ考えている時期でした。小野さんは、若手デザイナーの登竜門として有名な、富山デザインウエーブの中核イベント「富山デザインコンペティション」で2004年にグランプリを受賞しており、その流れでワークショップに招かれたのです。


小野さんのアトリエ兼自宅で

ワークショップ参加のため、「KAGO」の原型となるデザイン図面を事務局に提出したところ、開催委員会のデザインセンターの技師の方々に、「これは無理無理。実現不可能!」と逆の太鼓判を押されてしまったそうです。というのも、「KAGO」は鋳造製品としては形状が入り組んでいて複雑です。一方、錫の溶ける温度(溶解温度)は約232度。鉄の1538度や銅の1085度と比べるとかなり低い。ということは、冷めるのも早いため、砂型に流し込んでいる途中で、溶かした錫が固まってしまうこともあり得えます。

通常の鋳造のやり方では製品は作れない。小野さんは、「砂型に外側の穴と中心部の穴から同時に入れて流し込めばできるかも」と思いついたそうです。技師の手も借りてトライしてみたら、見事に成功しました。とはいえ、できることとそれが商品化されることの間には壁があります。

「一人の手では同時に流し込めないし、手間がかかってしまう。これは商品化は不可能だろうなと思って山形に帰りました」(小野さん)

2007年秋に開かれた「富山デザインウエーブ」の製品発表のパーティー会場で小野さんは能作社長と立ち話をしたそうです。

「会場で初めて能作社長から声をかけてもらいました。『明日時間があれば会社においでよ。うちならできる気がしますよ』と言ってくれました。それから実際に製品化するまでに能作社長と何度も検討を重ね、量産化を実現することができました」(小野さん)

これって、優れたデザイナーと職人の技術との幸せな出合いですね。

「錫の酒器で飲むと酒の味が変わる」って本当?

能作の錫100%のぐい吞み。最初は形や風合いに惹かれて購入しましたが、使い込むにつれて、新たな錫の酒器の面白さに気づいたことがあります。

小料理屋や能作ショップの店員さんからも聞いたのですが、錫100%の酒器で飲むと、酒の味が変わるよ、というのです。「味がまろやかになる」とか「口当たりが柔らかくなる」とか。本当でしょうか。じっくり確認してみました。ガラス製、陶器の酒器と、錫100%のぐい吞みとの日本酒の飲み比べ。
ガラス製、錫100%、陶器のぐい吞みで同じ日本酒を飲み比べてみると……
ガラス製、錫100%、陶器のぐい吞みで同じ日本酒を飲み比べてみると……
実は半信半疑でした。味が変わるなんて。でも、口に含んでみてそれははっきりと分かりました。本当に微妙ですが酒の味が変化するんですよ。なんだか酒の持つ角(かど)が取れるといった感じ。酒の癖が少し削られて、口の中の滑りが良くなる感じ。

人それぞれに感じ方は違うでしょうが、「味の変化」は感じられるはずです。錫のイオンがお酒の成分の何かに作用しているようです。実証研究は工業試験場や研究機関で行われて、数値的にも微妙な変化が表れているとのこと。お酒の味わいが変化することも、能作の錫100%の酒器の楽しみの一つに入れていいと思います。

使い込むほどに愛着がわく錫のぐい吞み

使っていて分かった錫100%の酒器のメリットをもう一つ。それは手入れが簡単なこと。使用後は柔らかいスポンジを使って台所用中性洗剤で軽く洗えばOK。銀の食器のように小まめに手入れをしないと黒ずむこともない。光沢が鈍くなってきたら重曹を使ってスポンジで軽く磨いたら元の光沢が戻ってきました。
「Kuzushi - Tare(クズシ - タレ)」
お気に入りの「Kuzushi - Tare」
「Kuzushi - Yure(クズシ - ユレ)」
お気に入りの「Kuzushi - Yure」
いまお気に入りの我が家のぐい吞みその1が「Kuzushi - Tare(クズシ - タレ)」(左)。その2が「Kuzushi - Yure(クズシ - ユレ)」。いずれもデザインは、この「ienomistyle」の能作の酒器の記事(2020年9月15日)に登場いただいた小泉誠さんです。

さて、曲がりやすいのは錫100%のぐい吞みの持ち味でもありますが、つい最近、うっかり、硬い物にぶつけて、縁を曲げてしまいました。指先で逆方向に力を込めて若干修正したものの、完全には元に戻らない。あーあ、と当初はガッカリしましたが、その後、使い込んでいるうちに、その歪みがまた愛おしく感じられるようになりました。これは負け惜しみではありませんよ、はい。

※記事の情報は2020年9月25日時点のものです。

◆参考までに……
アクティオノート「地元の人が自慢できる『ものづくり』を通して、地域に貢献したい」
(能作の能作克治社長、能作千春専務のインタビュー記事)
能作の公式ホームページ
(美しい鋳造製品を生み出す能作の歩みと技術が分かります)
「rinao design」 
(「KAGOシリーズ」をデザインした小野里奈さんが立ち上げたオフィス「rinao design」のサイトでは小野さんの作品が見られます。)

 
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