能作のぐい吞みに刻まれた名山に思いをはせつつ今宵もちびりちびり〈PR〉
家飲みの気分を上げてくれる錫(すず)100%の能作の酒器に出合ったのが昨年のこと。以来、我が家の酒器ローテーションに入り、晩酌の気分転換に一役買ってくれています。錫100%ならではの柔らかな光沢、指先と唇で味わうお酒の味わいは格別。すっきりとした美しいフォルムの酒器に加えて、能作ならではの山やダムをモチーフにデザインされたぐい吞みもお薦めです。3000m級の山々に思いをはせつつ、今宵も一献!
山やダムを愛でる能作の酒器
能作の山のぐい吞みには標高3776mの霊峰富士もあります。その名もずばり「富士山 FUJIYAMA」。こちらもテーブルに伏せてしみじみ眺めてみると、富士山の山襞が克明に刻まれているのが分かります。
能作社長の洒落っ気を具現化
「立山連峰のパノラマをぐるっと巻いて作ったのが「立山のぐい吞」ですが、作ってみたら社員が、これって富士山に似てませんか、と言うんです。それは面白いな、富士山も作ってしまおうかと、本当に作ったのがこの『富士山 FUJIYAMA』なんです。折しも富士山が世界遺産に登録されたタイミングでした。器の内側にはミニ富士山があります。これを見ながら飲むのを“富士見酒”と呼ぶんですよ(笑)」
能作克治社長。ご自身もデザインから鋳造まで手がけてきた
社長の洒落っ気で生まれた「山」つながりの酒器をもう一つ。鹿児島県の桜島をモチーフにした「桜島タンブラー」です。すっきりしたデザインのタンブラー。日本酒だけではなく鹿児島の芋焼酎の水割りとかにもよさそう。
「黒部ダムに貯まった水が全部酒で飲めたらいいなー」。
そんな酒好きの社長のアイデアから生まれた「黒部ダムのぐい吞」には、小さな穴が2個並んで空いている。これはダム堰堤の観光放水用の穴ということです。指で押さえて飲まないと、せっかく注いだお酒を「放水」してしまうことになる! 山の稜線でギザギザになっている縁のどこに口をつけて飲んだものか。穴を抑えながら器の隅々まで山々を見渡すことになります。
技術力の高さが実現する優れたデザイン
きっかけは富山県・富山市・高岡市が中心となり1990年から開催している国内最大級のデザインイベント「富山デザインウエーブ」。そのワークショップに招待されて、小野さんが錫100%の鋳造で参加したのが2007年のことでした。当時、小野さんは、山形県にある東北芸術工科大学の助手が任期満了になり、将来についてあれこれ考えている時期でした。小野さんは、若手デザイナーの登竜門として有名な、富山デザインウエーブの中核イベント「富山デザインコンペティション」で2004年にグランプリを受賞しており、その流れでワークショップに招かれたのです。
小野さんのアトリエ兼自宅で
ワークショップ参加のため、「KAGO」の原型となるデザイン図面を事務局に提出したところ、開催委員会のデザインセンターの技師の方々に、「これは無理無理。実現不可能!」と逆の太鼓判を押されてしまったそうです。というのも、「KAGO」は鋳造製品としては形状が入り組んでいて複雑です。一方、錫の溶ける温度(溶解温度)は約232度。鉄の1538度や銅の1085度と比べるとかなり低い。ということは、冷めるのも早いため、砂型に流し込んでいる途中で、溶かした錫が固まってしまうこともあり得えます。
通常の鋳造のやり方では製品は作れない。小野さんは、「砂型に外側の穴と中心部の穴から同時に入れて流し込めばできるかも」と思いついたそうです。技師の手も借りてトライしてみたら、見事に成功しました。とはいえ、できることとそれが商品化されることの間には壁があります。
「一人の手では同時に流し込めないし、手間がかかってしまう。これは商品化は不可能だろうなと思って山形に帰りました」(小野さん)
2007年秋に開かれた「富山デザインウエーブ」の製品発表のパーティー会場で小野さんは能作社長と立ち話をしたそうです。
「会場で初めて能作社長から声をかけてもらいました。『明日時間があれば会社においでよ。うちならできる気がしますよ』と言ってくれました。それから実際に製品化するまでに能作社長と何度も検討を重ね、量産化を実現することができました」(小野さん)
これって、優れたデザイナーと職人の技術との幸せな出合いですね。
「錫の酒器で飲むと酒の味が変わる」って本当?
小料理屋や能作ショップの店員さんからも聞いたのですが、錫100%の酒器で飲むと、酒の味が変わるよ、というのです。「味がまろやかになる」とか「口当たりが柔らかくなる」とか。本当でしょうか。じっくり確認してみました。ガラス製、陶器の酒器と、錫100%のぐい吞みとの日本酒の飲み比べ。
人それぞれに感じ方は違うでしょうが、「味の変化」は感じられるはずです。錫のイオンがお酒の成分の何かに作用しているようです。実証研究は工業試験場や研究機関で行われて、数値的にも微妙な変化が表れているとのこと。お酒の味わいが変化することも、能作の錫100%の酒器の楽しみの一つに入れていいと思います。
使い込むほどに愛着がわく錫のぐい吞み
さて、曲がりやすいのは錫100%のぐい吞みの持ち味でもありますが、つい最近、うっかり、硬い物にぶつけて、縁を曲げてしまいました。指先で逆方向に力を込めて若干修正したものの、完全には元に戻らない。あーあ、と当初はガッカリしましたが、その後、使い込んでいるうちに、その歪みがまた愛おしく感じられるようになりました。これは負け惜しみではありませんよ、はい。
※記事の情報は2020年9月25日時点のものです。
◆参考までに……
・アクティオノート「地元の人が自慢できる『ものづくり』を通して、地域に貢献したい」
(能作の能作克治社長、能作千春専務のインタビュー記事)
・能作の公式ホームページ
(美しい鋳造製品を生み出す能作の歩みと技術が分かります)
・「rinao design」
(「KAGOシリーズ」をデザインした小野里奈さんが立ち上げたオフィス「rinao design」のサイトでは小野さんの作品が見られます。)
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