西村まどかの目指せ!唎酒師⑥ 地元福井の酒蔵めぐり〈その2〉
タレントの西村まどかさんが「唎酒師」の資格をめざして日本酒の勉強を行う連載コラムの第6弾。前回に続き、地元・福井県の酒蔵をめぐります!
まどかの学び① 酒蔵には“日本”がたっぷり
この企画をサポートしてくれている酒文化研究所の山田聡昭さんによると、「酒蔵は規模もさまざま、目指す方向もそれぞれ。いろいろなおいしさがあるのが魅力」なのだとか。
では、『白岳仙』の安本酒造(福井市)へ。
福井市内といっても中心部から約10㎞離れたのどかな安原町にあります。一帯は戦国武将の朝倉義景公の居城があった一乗谷のおひざ元で、安本酒造の周辺にも史跡巡りをするグループがちらほら、最近はこうした観光客方が増えているみたいです。
安本酒造は1853年の創業ですが、安本家としては800年以上の歴史がある旧家です。農業、林業、両替商などを営み、江戸時代の終わりごろに酒造業を始めました。社屋だけでなく町並み全体から歴史の長さが伝わってきます。
まどかの学び② 元気な酒蔵にはチャレンジがいっぱい
『白岳仙』も最初は香り高くきれいでキレのあるお酒を目指していました。いろいろな酵母を試してみたり、評判の米を取り寄せてみたりするなかで、技術ばかりを追いかけていることに気づきます。
さらに外国のお客様から「なぜ上等な日本酒は山田錦ばかり使うのか?」と聞かれて、もっと独創的なものを目指そうと方向を転換、今は原料の酒米は「五百万石」と「吟のさと」という品種に決め、栽培は県内の農家に委託しています。
日本酒の酒蔵は古い歴史を持つ伝統産業ですが、それだけでなく新しいことに次々にチャレンジしているのでした。
まどかの学び③ 元気な酒蔵はネーミングセンスが素敵
とても素敵なネーミングですね。そう聞いて、私はピンクやオレンジが好きなので、そういう色はどんな味なんだろうと気になってしまいました。
右端の真っ黒のボトルは『濡烏』。この色は緑がかった黒髪のような、もっとも美しい黒のことです。福井県特別栽培地区「吟のさと」を100%使用した『白岳仙』の最高峰は、透明感のなかに艶っぽさがあり、エレガントな美人さんでした。やわらかくて本当に飲みやすく、アルコール度数が15度とは思えませんでした。
まどかの学び④ ゴールをイメージして酒を設計する
酒蔵の名前は「とこやま」と読みますが、お酒は「じょうざん」と読みます。読み方の違いは、酒屋だった祖父から子供の頃に教えられて知っていました。酒のことなら何でも知っている酒文化研究所の山田さんが間違えていたので、今回は私が教えてあげました。(笑)
専務の常山晋平さんが蔵を案内してくださいました。昨日から2つの酒蔵を訪ねましたが、酒蔵の中に入るのは初めてです。ふだんは見学を受け入れている酒蔵でも、酒づくりをしていない夏場は改修工事などで見られないことはよくあるそうです。
常山さんはとっても爽やかでおしゃれな方ですが、酒づくりと酒蔵経営の両方をリードする蔵元杜氏です。『白岳仙』の安本さんと同じく、蔵に戻ってきていろいろぶつかりながら、思い描く酒を目指して自分でつくると決めたのだそうです。辛口の『常山』らしい味の幹があって、次はこんな感じにしてみようと枝葉を落としたり、逆に伸ばしたりするイメージをつくり、そのため米はあれにしよう、酵母はこっちを使おうと考えるのだそうです。
まどかの学び⑤ 酒蔵のコンディションづくりに休みなし
この時期は酒づくりをしていないので動いていない設備や道具を見るだけでしたが、臭いがこもったりカビたりしないように、場所によっては扇風機をずっとまわして常に換気していました。酒づくりにいい環境を維持するためには、酒をつくっていない時でもやっておかなければいけないことがあるのですね。こうした細かい積み重ねが繊細な味の表現に繋がっていくんだなぁと感心しました。
酒づくりの工程順にひととおり見せていただいたのですが、驚いたことのひとつがこちらです。蔵の階段を登るとこんなスペースがあらわれました! 元々は物置きとして使っていたそうですが、リフォームしてイベント会場として活用しているそうです。
まどかの学び⑥ その蔵らしい味がある
試飲はこちらでもワイングラス。『白岳仙』では口が少し絞ってあるタイプでしたが、『常山』は径の大きなグラスです。どちらの蔵も試飲するお酒でグラスを軽くリンスしてから注ぎいれます。
余談ですが傍にいた山田聡昭さん(酒文化研究所)は10年前からワイングラスで日本酒を飲むスタイルを広めようと、コンテスト「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」を推進してきたひとりです。今回、訪ねた酒蔵がすべてワイングラスで試飲させていたのが感慨深かったようです。
さて、試飲ですが左のふたつ、『常山 玄達(げんたつ)』は 夏の日本海を、『常山 荒磯(あらいそ)』は冬の日本海をイメージしているそうです。大海原で飛び跳ねる、鯛が描かれていて、縁起のいいとされている書体、髭文字で書かれています!
ラベルを見ながら、また二つを比べながら飲むと本当におもしろくて、同じ日本海でも季節でこんなに違うのかと。玄達はまさにラムネのような弾ける爽快感で、荒磯は力強さとドライ感があふれていました。どちらも日本海の魚にもばっちり合いそうです。
『純米大吟醸』もさすが常山という感じで、もうこれを嫌いな人は居ないんじゃないかと思うほどでした。
お目にかかった皆さんがすばらしい方ばかりで、おいしい日本酒の裏には、技術だけではなく、関わっている方々の素敵な心があってこそなんだと感じました。教科書で見ていただけの、工程や技術などを実際目の前で体験できて、飲み比べもしてみて、百聞は一見にしかずってまさにこのことだと思いました。
最後に今回の酒蔵取材を企画からコーディネート、現地でのアテンドまですべてしてくださった酒文化研究所さんに、心から感謝を申し上げます。 この経験を活かして、試験勉強頑張ります!
※記事の情報は2020年10月12日時点のものです。
▼参考サイト
西村まどか Instagram Twitter
日本酒のソムリエ唎酒師
『さけ通信』は「元気に飲む! 愉快に遊ぶ酒マガジン」です。お酒が大好きなあなたに、酒のレパートリーを広げる遊び方、ホームパーティを盛りあげるひと工夫、出かけたくなる酒スポット、体にやさしいお酒との付き合い方などをお伝えしていきます。発行するのは酒文化研究所(1991年創業)。ハッピーなお酒のあり方を発信し続ける、独立の民間の酒専門の研究所です。
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