「東京どぶらぶフェスタ2023」イベントレポート

10月26日の”どぶろくの日”に、どぶろくを愛でる会が「東京どぶらぶフェスタ2023」を開催しました。満員御礼だった今回は、3人のどぶろく生産者を国内外から迎えての講演、そして唎酒師のリードで10種類のどぶろくをテイスティングしました。その様子をお届けします。

メインビジュアル:「東京どぶらぶフェスタ2023」イベントレポート

主催者は「どぶろくを愛でる会(愛称:どぶらぶ)」

どぶろくを愛でる会(愛称「どぶらぶ」)は、日本の伝統酒であるどぶろくを広めようと2020年に誕生したグループで、代表の大越千賀子さんはベストセラーの『匠が教える 酒のすべて: 世界を旅するように酒を楽しむ!』(三笠書房刊)を著した酒博士です。

この会は一般メンバーを広く募集してどぶろくセミナーを開催するなどしていますが、活動をリードする6人のアンバサダーがいます。漫才師 にほんしゅのあさやんさん・北井一彰さん、アサノノリエさん、シンディさんの4人は国内でどぶろく情報を発信し、今回のイベントの運営をサポート。また、ハッセー更香さんはスペインで、ジャスティン・ポッツさんはアメリカでそれぞれ活動中です。ちなみに私はどぶろくスーパーバイザーとして、彼らをサポートしています。

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これまでどぶらぶは、10月26日のどぶろくの日にイベントを開催してきました。2021年には東京・兜町にできたばかりの平和どぶろく兜町醸造所を借り切ってどぶろくラバーの交流会を、昨年は「東京どぶらぶフェスタ2022」として20種類のどぶろく飲み比べるパーティを、そして今年はどぶろく生産者をお招きし、どぶろくを造り始めた経緯や近況を伺ったうえで、どぶろくをじっくり味わうセミナーを実施しました。

近年はどぶろくへの関心が高まっているようで、今回のイベントも参加費は5500円(税込み)と安くはないにもかかわらず、80名の定員がすぐに埋まりました。
運営に当たったどぶらぶメンバー
のぼりを掲げる漫才師 にほんしゅの2名。右端はSSI理事兼研究室長・長田卓さん。中央の女性は左から副会長の入江亮子さん、アンバサダーのアサノノリエさん、会長の大越智華子さん、アンバサダーのシンディさん。その隣が私(山田聡昭・酒文化研究所)
2023年版オリジナルTシャツ
会場では「どぶらぶ」2023年版オリジナルTシャツを販売
東京どぶらぶフェスタ2023は漫才師 にほんしゅ(あさやんさん・北井一彰さん)の進行で開幕
東京どぶらぶフェスタ2023は漫才師 にほんしゅ(あさやん・北井一彰)の進行で開幕
乾杯酒武重本家井酒造(長野県)「十二六」
乾杯酒はどぶろくを商品化したパイオニア武重本家井酒造(長野県)から協賛いただいた「十二六」。同社が「どぶろくの日(10月26日)」の制定に動いた
乾杯の発声はどぶらぶ副会長の入江亮子さん
乾杯の発声はどぶらぶ副会長の入江亮子さん。入江さんは懐石料理「温石会」を主宰し、料理と日本酒に精通する

シンガポールのどぶろくワークショップを報告

東京どぶらぶフェスタ2023は大きく3つのパートがありました。第1部は海外のどぶろく事情の紹介です。シンガポールからどぶろく造りワークショップを主催しているアレックスさんが来日し、その様子を動画とスライドで見せてくれました。

自家醸造が認められているシンガポールでは、自由にどぶろく造り楽しむことができます。自分で造ってみると座学で聞いていた麹や酵母の働き、原料の配分、発酵管理などの知識が身体に滲みこんでいきます。そして、どぶろくを造るのは容易ですが、おいしく造ることは難しく、さらに毎回おいしく造ることはとても難しいことがよくわかります。シンガポールでもほとんどの方が、ワークショップに参加して日本酒の理解が深まったと言うそうです。
アレックスさん(左)シンディさん(右)
アレックスさん(左)は自身が経営するシンガポールの日本酒バーでどぶろく造りワークショップを開催している。右はプレゼンをサポートするシンディさん
アレックスさんのプレゼン資料より①
アレックスさんのプレゼン資料より①
アレックスさんのプレゼン資料より②
アレックスさんのプレゼン資料より②
アレックスさんのプレゼン資料より③
アレックスさんのプレゼン資料より③

農家どぶろくの名杜氏「どぶろく鬼ババァー」佐藤則子さん

第2部はどぶろくを造る2人の女性杜氏のインタビューです。1人目は「どぶろく鬼ババァー」を造る佐藤則子さん(割烹さとう・京都府福知山市)です。佐藤さんは地元大江の町を活性化したいと、お酒が飲めないにもかかわらず、約10年前に特区制度を活用してどぶろくを造り始めました。

佐藤さんは酒造りを学ぶために日本酒の2大産地である兵庫県の灘(西宮市・神戸市)と伏見(京都市)の酒造技術者に指導を仰ぎ、それぞれの技法でのどぶろく造りを習得しました。百貨店の物産展や各地で開催される京都物産展にまめに出店してアピールしていくと、少しずつファンが増えていきました。

すぐに酒造りの腕も上がり、どぶろく農家のコンテスト「全国どぶろく研究大会」では、上位入賞の常連となっています。 この日は試飲用に予定していたレギュラー商品2点と、サプライズで京都のオリジナル酵母を使った新バージョンをお披露目してくれました。

ちなみに佐藤さんは、今年、自宅を改装して民泊を始めたそうです。割烹さとうのおいしいお食事とどぶろく「鬼ババァー」を思う存分楽しんで、そのまま泊まることができます。
「どぶろく鬼ババァー」を造る佐藤則子さん(中央)
「どぶろく鬼ババァー」を造る佐藤則子さん(中央)は快活でいつも笑顔だ
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼンシート① 福知山市大江町の紹介
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼンシート① 福知山市大江町の紹介
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン② かっぽう佐藤とどぶろく製造所
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン② かっぽう佐藤とどぶろく製造所
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン③ どぶろく研究大会の様子と表彰式
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン③ どぶろく研究大会の様子と表彰式
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン④ 今年始めた民泊とお食事
「どぶろく鬼ババァー」のプレゼン④ 今年始めた民泊とお食事

クラフトサケで独立を目指す

もうお一人の女性杜氏は浅草のクラフトサケブルワリー「木花之醸造所」の三代目醸造長を務める木村柚月さんです。木村さんは東京農業大学で醸造学を学び、一般企業に就職したものの酒造りをやりたくて木花之醸造所の門を叩きました。

クラフトサケブルワリーは、どぶろく製造に必要な「その他の醸造酒製造免許」で営業し、オーソドックスなどぶろくだけでなく、ホップやフルーツなどを使った酒を造っています。木村さんはオリジナルの味わいを模索して、社長と相談しながらさまざまな新作づくりに挑戦しているそう。歴代醸造長はみなさん独立してクラフトサケブルワリーを開業しました。近い将来木村さんが初の女性クラフトサケブルワーになるかもしれません。

今回用意された木村さんのどぶろくは、定番商品の「ハナグモリ」と「大人のネクター桃濁酒」の2点です。
「ハナグモリ~ THE 酸」は焼酎用の白麹を使ってしっかり酸を出したそう
「ハナグモリ~ THE 酸」は焼酎用の白麹を使ってしっかり酸を出したそう
木村さんは進行役のにほんしゅの2人の和気あいあいとしたトーク
木村さんは進行役のにほんしゅの2人とは旧知の間柄。和気あいあいとトークが進んだ
第2部の最後に3人のつくり手が再び登壇して挨拶
第2部の最後に3人のつくり手が再び登壇して挨拶

どぶろく11種類を飲み比べ、味わいはさまざま

第3部はどぶろくのテイスティングです。サンプルを専門家がわかりやすく解説しながら一緒に味を見ていきます。リードするのは唎酒師の認定団体であるSSI理事兼研究室長・長田卓さんと、どぶらぶアンバサダーで日本伝統濁酒学講師のアサノノリエさん。

乾杯の「十二六」から始まって、「どぶろく鬼ババァー」と木花之醸造所のまでで計6点、プラカップ30~40mlずつとはいえ、日本酒に換算するとちょうど1合くらいで、ほろ酔いのいい気分のところです。
試飲ではテイスティングシートにサンプルを間違えないように置いていく
試飲ではテイスティングシートにサンプルを間違えないように置いていく
試飲酒リスト
それぞれの特徴が書き添えられた試飲酒リスト
パンフレットにはこの日は提供されませんでしたが、酒造免許をもつ寺社仏閣が造るどぶろくの解説がありました。

全国に約40ヶ所あり、祭りや神事用に氏子たちが造りますが、おいしいどぶろくにするために近隣の酒蔵がサポートしていることも多いのだとか。中には1000年以上の歴史を持つものもあるそうです。
長田さんとアサノさんの軽妙な掛け合いで楽しく試飲した
長田さんとアサノさんの軽妙な掛け合いで楽しく試飲した
日本では1899年に自家醸造が禁じられて、家庭でどぶろくを造れなくなりました。公には20年前にどぶろく特区制度ができるまでほぼ100年間日の目を見ることはありませんでした。ですが最初にどぶろくがあり、そこから清酒に発展していったことは揺るぎない事実です。どぶろくを原点と位置づけることで清酒はその歴史を、より明確に語れるようになります。どぶらぶが目指すのはそんな日本の酒文化の在り方です。
閉会の挨拶をする大越智華子会長
閉会の挨拶をする大越智華子会長
どぶらぶHP

記事の情報は2023年12月7日時点のものです。

  

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