たちばなかおる『そもそもウチには芝生がない』の再現レシピ《肴は本を飛び出して51》
たちばなかおる先生の『そもそもウチには芝生がない』より、青大豆料理3品を再現! 行き着く先は究極のシンプル。青大豆のうまみを存分に感じながら一献傾ければ、至福の時間が訪れます。家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。
40代ならではの喜怒哀楽に満ちた女3人の共同生活は大変だけど楽しそう!
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『そもそもウチには芝生がない』は、40代の女性3人組+その息子たちが一つ屋根の下で暮らすドタバタな日々をコミカルなタッチで描いた連載漫画。コミックスは全11巻が発売中で(2024年1月現在)、月刊誌『JOUR』(双葉社)では最新回を読むことができます。
男3兄弟をワンオペで育てる漫画家のスミ、夫は単身赴任で認知症が悪化しつつある姑と二人暮らしの恵子、水商売のベテランで年下男と同棲中のマキはかつての同級生。環境の異なる3人が40代でそれぞれに大きな転機を迎え、浮気者の夫が不在になったスミの家で同居することに。妊娠&高齢出産、年下の仕事相手からの求婚、遠距離恋愛の終焉などを経て、いろいろありつつも楽しい日々を送る3人の姿に元気をもらえる物語です。
こちらが3人の主人公。
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』1巻第1話「小野寺スミ(43)」より
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』1巻第2話「三笠マキ(43)」より
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』1巻第3話「千葉恵子(43)」より
作中には、「介護」「不妊治療」「更年期」「閉経」「未婚」「孤独死」などといった、アラフォー世代の女性ならピクッと反応せざるを得ないキーワードやエピソードが登場します。いつかは直面しないといけないけど、なるべくなら目を逸らしたい…。そんな物事に悩んだり戸惑ったりしつつも、自分なりのやり方で立ち向かっていく3人。その様子がとてもリアルで、「よし、これなら自分もやれるかも! うん、…やれるんじゃないかな?」と適度なやる気を起こさせてくれるのです。そうそう、個人的にはスミが没頭している「腸活」にも最近興味を持ち始めたところなのでとても参考になりました。
もちろんしんどいことばかりではなく、元彼との心ときめく再会や細胞が活き返るほどの推し活、意外な線からの穏やかな恋愛スタートといった、40代だからこそ(?)の楽しみや幸せに浸るシーンもあって、読みながらニヤニヤしたり膝を打ったりと忙しいこと。
私は彼女たちよりも年上のアラフィフ世代なのですが、「こんな友達が一緒にいたら、歳を取るのも悪くないよなぁ」なんて夢見てしまいます。漫画のタイトルは「隣の芝生は青く見える」から来ているのでしょうが、このお3人、「芝生がない」どころか独居中年の私からみたらどこの名門ゴルフ場よりも立派な芝生をお持ちですわ~。
『そもそもウチには芝生がない』ここを再現
料理上手な恵子がある日作った煮物に入っていた「青大豆」に大興奮するスミとマキ。
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』3巻第35話「青大豆」より
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』3巻第35話「青大豆」より
翌日は青大豆のみのひたし豆(麺つゆ、白だし、おろし生姜)を作りまたもや大好評を博すも、さらに「麺つゆと白だしもいらない」と呟くスミに恵子は「じゃあ自分でやって」と豆を託します。
その結果、試行錯誤を経てスミが行き着いた塩ゆで青大豆は、恵子とマキが吠えるほどおいしく完成!
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』3巻第35話「青大豆」より
◾お品書き
- 青大豆入り煮物
- ひたし豆
- 青大豆の塩ゆで
3品ともこの塩ゆでにした青大豆を使います。
① 乾燥した青大豆をボウルなどに入れ、たっぷりの水を加えて12時間冷蔵庫で浸水させる。
② 水ごと鍋に入れて塩(適量)を加えて火にかけ、沸騰したら火を弱めて10分煮る。
③ ざるにあけて水切りする。
『そもそもウチには芝生がない』再現レシピ①┃青大豆入り煮物
・鶏肉
・里芋
・にんじん
・油あげ
・きぬさや(水を張った耐熱容器に入れ、電子レンジで1分加熱する)
・青大豆の塩ゆで
・めんつゆ
<作り方>
① きぬさやと青大豆以外の材料を食べやすく切り、鍋で炒めてめんつゆと水適量を加え煮る。全体に火が通ったら最後に青大豆も加えて軽く煮れば完成。
② 器に盛り付け、きぬさやをあしらう。
■食べてみました
材料は作中に出てきましたが工程は描かれていなかったので超簡素化した手順で作ってみました。
筑前煮のようで筑前煮でない、きっとたちばな先生が実際にお家にあるもので作られたのではないかと推察される“おうちの味”っぽい一品です。でも、きぬさやや青大豆はわざわざ別ゆでが必要なので、この手間を厭わない上級者のレシピですね。
甘辛い煮物の中で際立つシンプルな青大豆の素朴な味わい。酒飲みなら大鉢からこれだけ摘んで食べて怒られちゃいそうです。さめてもおいしい煮物だから、まったり家飲みにもいいですね。
『そもそもウチには芝生がない』再現レシピ②┃ひたし豆
・青大豆の塩ゆで
・めんつゆ
・白だし
・おろし生姜
<作り方>
① めんつゆと白だしに適宜加水して漬け汁を作り、茹でた青大豆を浸す。
② 好みの味加減になったら、おろし生姜を添えて盛り付ける。
■食べてみました
このひたし豆は私の好きな酒場でもときどき登場するので見かけるたびに食べていたのですが、生姜を添えるのは初めて! 生姜好きにはたまらない組み合わせです。
漬け汁の味は思っていたより染み込まないので、気持ち濃いめに作るのがいいかもです。
生姜は全体に混ぜず、漬けただけの青大豆、ちょっと生姜を乗せた青大豆、多めに生姜を乗せた青大豆と交互に食べるのがいい感じでした。
これはやっぱり日本酒が一番しっくりきますね〜。
『そもそもウチには芝生がない』再現レシピ③|青大豆の塩ゆで
・青大豆の塩ゆで
■食べてみました
3人が目をかっ開いて大絶賛した、最もシンプルな塩ゆで青大豆。見た目は枝豆のようですが生の枝豆よりもどこか鄙びた味わいで、一度乾燥させているからかコリッとした噛みごたえが絶妙。たしかにこれは丼いっぱいでも食べられそう!
青大豆でゴキゲンになった3人はベランダ晩酌に移行。
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』3巻第35話「青大豆」より
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狭いベランダで膝つき合わせて青大豆晩酌を楽しむ3人。う、うらやましい。
たちばなかおる /双葉社『そもそもウチには芝生がない』3巻第35話「青大豆」より
青くなくてもいいからちょっとした芝生がウチにも生えるように、今年は少しだけ頑張ってみたくなりました。
※記事の情報は2024年1月23日時点のものです。
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