チーズと日本酒の至福のマリアージュ! ツウ好みの最新セレクト
チーズブームは、まだまだ盛り上がっているようです。近ごろではチーズの専門店も増えてきて、世界中の珍しいチーズが手軽に食べられるようになってきましたね。チーズといえばワインが定番ですが、イエノミスタイルがお勧めしたいのはチーズと日本酒のマリアージュ。チーズとお酒の専門家に、日本酒にあうチーズ、そしてチーズに合う日本酒のことを教わってきました。みなさんも、ぜひお試しください。
チーズにいちばん合わせやすいお酒は、実は日本酒
それでは、そんな杉浦さんのセレクトによる、チーズと日本酒、珠玉の組み合わせをご紹介します。
長期熟成コンテと純米古酒
なるほど、確かにカツオ節の香りさえするような気がします。これに合わせる日本酒は、古酒ですか。
「コンテはフランスのジュラ地方のチーズで、同じ産地のヴァン・ジョーヌというわざと酸化熟成させた黄色いワインと相性が抜群なんです。それと同じようなニュアンスで、酸化熟成させて少し黄色がかった日本酒の古酒を合わせてみます。これはウチではよくやっている組み合わせで、間違いなく合います。ヴァン・ジョーヌと日本酒の古酒は味わいがとても似ているんです。ご自宅で楽しむにしても、ヴァン・ジョーヌはどれも1本1万円近くしますが、日本酒の古酒なら高いものは高いけれど、2千円以下でも買えて手軽に楽しめます。これは古酒のなかでも、特徴のある生酛造りの『大七 純米古酒 不倒翁』。このボトルは醸造から10年たっています」
著名熟成士が手がけたムッファートと貴醸酒
ヨーロッパには熟成士という人がいるんですね。
「熟成士はチーズを仕入れて様々にアレンジしながら熟成させることを専門にする、ヨーロッパではかなりメジャーな職業です。このチーズのようにハーブをまぶしたり、チョコレートでコーティングしたり、デザートワインやカシスリキュール、コーヒーなどに浸して熟成させたりとアレンジのバリエーションも多彩で、その時にしか手に入らないことも多い。そうした出会いもチーズの楽しみで、飽きません。ウチのようなところで試してみて、これはいいなと思われたら専門のチーズ屋さんに伝えて、近いものを紹介していただければと思います」
このお酒はまた独特な感じですね。
「これは貴醸酒(きじょうしゅ)。水の代わりに酒を使って仕込んだお酒です。ブルーチーズは塩味を強く感じるチーズなので、貴醸酒の甘味とのコントラストを楽しめます。通常、貴醸酒は甘味が強くなりますが、この『笑四季 貴醸酒 モンスーン 玉栄』はそれほど甘くない、純米酒っぽい感じの味わいなので、やぎ乳のチーズとも合うかもしれませんね」
熟成の進んだサントモールドトゥーレーヌと純米生原酒
この表面が独特ですね。
「周りが灰色なのは、害虫を寄せ付けないようにするためにポプラの灰をまぶして置いておくからです。これは味わいを整えるという意味もあって、この状態で熟成を進ませます。ヤギ独特の風味があるんですが、ヤギ乳のチーズとしてはやさしい味わいです。よく知られたチーズですが、ここまで熟成したものはちょっとない」
これもまたいかにも日本酒が合いそうに見えます。
「このチーズは通常は同じ地域のロワールのソーヴィニヨン・ブランと合わせるのが鉄板なんですけど、今回は長野県中川村の『今錦 特別純米生原酒 おたまじゃくし』を合わせてみました。原酒なんで少しアルコール度が高めの18.5%です。美山錦を使い、すごくすっきりと洗練された味わいに仕上がっていて、白ワインにどこか通ずるところもありますが、決定的な違いは日本酒独特の甘味があるということです。チーズの塩味と日本酒の甘味。そのコントラストから入って、このチーズが乳酸発酵していて、酒が生原酒なので菌が生き生きしていて少し乳酸っぽいニュアンスもあることから、余韻のところで双方がつながってきます」
遠く離れたヨーロッパのチーズと日本酒が、良く合うのが不思議ですね。
「本当は地元同士で合わせるのが一般的ですが、ヨーロッパのものと極東の酒がなぜか合う。これを見つけたときに、発酵ということでつながるのが面白いなあ、と思いました。ウチはワインバーだと思われがちですが実は『チーズバー』なので(笑)、チーズの面白い合わせ方として、これもぜひ提案したいなと思っています」
マスカルポーネと蜂蜜、イチジク、三州三河みりん
みりんとチーズも相性がいいのでしょうか。
「この『三州三河みりん』はとてもいい。デザートワインのようで、ソムリエの試験で出てもみりんだとはなかなか思われないかも知れません。マスカルポーネは、甘めのスパークリングワインやデザートワインと合わせることが多いんですね。ですから、みりんとマスカルポーネの相性は抜群です。でも蜂蜜は要らなかったかも。それくらいみりんが甘く濃厚で、マスカルポーネのミルクのコクとよく合う。この組み合わせは今日の一番のお勧めです」
多様なチーズと日本酒、最後にはみりんまで。杉浦さんのお勧めを試してみるのもいいし、自分なりのマリアージュを探索するのもワクワクしてきます。皆さんもぜひチャレンジしてみてください。
取材ご協力いただいた杉浦さんのお店はこちら
内山三丁目チーズバー
[ 名古屋市千種区三丁目1-17水谷ビル101 ]30カ月熟成コンテのほか、他ではなかなか味わえない珍しいチーズが入れ替わりながら常時10種類以上。夜な夜なチーズ好き、ワイン好きの紳士淑女が集まってきます。「チーズって買おうとするとブロックだったりしてなかなか手が出しづらく、新しいものに出会うのが難しいですよね。チーズもお酒も、ここでしか味わえない組み合わせのものを試して、実験室みたいに使ってほしいと思っています」(杉浦さん)。
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