チーズと日本酒の至福のマリアージュ! ツウ好みの最新セレクト

チーズブームは、まだまだ盛り上がっているようです。近ごろではチーズの専門店も増えてきて、世界中の珍しいチーズが手軽に食べられるようになってきましたね。チーズといえばワインが定番ですが、イエノミスタイルがお勧めしたいのはチーズと日本酒のマリアージュ。チーズとお酒の専門家に、日本酒にあうチーズ、そしてチーズに合う日本酒のことを教わってきました。みなさんも、ぜひお試しください。

ライター:まるまる
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チーズにいちばん合わせやすいお酒は、実は日本酒

名古屋市千種区の「内山三丁目チーズバー」は珍しいチーズ、新しいチーズを発掘・用意して私たちを楽しませてくれるチーズとお酒の店。チーズと日本酒の相性の良さについては、マスターの杉浦忍さんもかねてから注目していたそうです。
「内山三丁目チーズバー」マスターの杉浦忍さん
「ウチでは、味わったことのないチーズが入ってきたら、どんな飲み物に合うのか、さまざまな種類の酒と合わせて試してみることにしています。スパークリングワイン、白、赤、ロゼ、デザートワイン、ビール、日本酒といった酒のなかで、いちばん万能なのが実は日本酒だったりするんですね。ワインだと、このチーズは赤だな、このチーズは白にしか合わないな、というのがあるんですが、日本酒に関しては、どれもハマってくるものが多いんです。ワインを飲みたいお客さまに日本酒をお勧めすることはなかなかできないものの、先にこのチーズが食べたいという希望で来店されるお客さまには、日本酒も積極的にご提案しています」(杉浦さん)

それでは、そんな杉浦さんのセレクトによる、チーズと日本酒、珠玉の組み合わせをご紹介します。
 

長期熟成コンテと純米古酒

長期熟成コンテと純米古酒
「これはウチの定番チーズ、コンテ30ヶ月熟成です。通常デパートなどで買えるコンテは熟成期間が最長で24ヶ月までが一般的で、30ヶ月まで熟成させているものというのは市場にあまり出回っていないと思います。同じチーズをスティック状にカットしたものと細かく刻んだもので、味わいの違いを楽しんでもらうようにしました。スティック状のほうは、熟成が進んでアミノ酸が結晶化し、断面に白い粒々が見えるほどになっています。強い『出汁感』があって、シャリシャリした食感とともに、まるでカツオ節を食べているような味わいです。細かくしたほうは口の中に入れると、とろけてきてまろやかな味わいを楽しめます」(杉浦さん)

なるほど、確かにカツオ節の香りさえするような気がします。これに合わせる日本酒は、古酒ですか。

「コンテはフランスのジュラ地方のチーズで、同じ産地のヴァン・ジョーヌというわざと酸化熟成させた黄色いワインと相性が抜群なんです。それと同じようなニュアンスで、酸化熟成させて少し黄色がかった日本酒の古酒を合わせてみます。これはウチではよくやっている組み合わせで、間違いなく合います。ヴァン・ジョーヌと日本酒の古酒は味わいがとても似ているんです。ご自宅で楽しむにしても、ヴァン・ジョーヌはどれも1本1万円近くしますが、日本酒の古酒なら高いものは高いけれど、2千円以下でも買えて手軽に楽しめます。これは古酒のなかでも、特徴のある生酛造りの『大七 純米古酒 不倒翁』。このボトルは醸造から10年たっています」

著名熟成士が手がけたムッファートと貴醸酒

著名熟成士が手がけたムッファートと貴醸酒
「ブルーチーズは、ムッファートというイタリアのヴェネト州のブルーチーズで、これはそのアレンジチーズです。セルジョ・モーロという熟成士が手がけたもので、ひとつの作品みたいなものです。周りにマジョラムとミントとカモミールをまぶして熟成させるという方法です。そうすることによって、ブルーチーズの独特の塩味と青カビのえぐみが若干柔らかくなって熟成が進んでいます。どなたにも受け入れられやすいブルーチーズです。食べるときは外側のハーブがかかっている部分は取り除いて、その部分は別で召し上がったほうが良いかと思います」(杉浦さん)

ヨーロッパには熟成士という人がいるんですね。

「熟成士はチーズを仕入れて様々にアレンジしながら熟成させることを専門にする、ヨーロッパではかなりメジャーな職業です。このチーズのようにハーブをまぶしたり、チョコレートでコーティングしたり、デザートワインやカシスリキュール、コーヒーなどに浸して熟成させたりとアレンジのバリエーションも多彩で、その時にしか手に入らないことも多い。そうした出会いもチーズの楽しみで、飽きません。ウチのようなところで試してみて、これはいいなと思われたら専門のチーズ屋さんに伝えて、近いものを紹介していただければと思います」

このお酒はまた独特な感じですね。

「これは貴醸酒(きじょうしゅ)。水の代わりに酒を使って仕込んだお酒です。ブルーチーズは塩味を強く感じるチーズなので、貴醸酒の甘味とのコントラストを楽しめます。通常、貴醸酒は甘味が強くなりますが、この『笑四季 貴醸酒 モンスーン 玉栄』はそれほど甘くない、純米酒っぽい感じの味わいなので、やぎ乳のチーズとも合うかもしれませんね」

熟成の進んだサントモールドトゥーレーヌと純米生原酒

熟成の進んだサントモールドトゥーレーヌと純米生原酒
「サントモールドトゥーレーヌというフランスのロワール地方のヤギ乳のチーズです。サントモールドトゥーレーヌは通常はしっとりしているんですが、これはかなり熟成させていて、表面の水分が飛んでいます。塩味が前面に出て、その後にミルクの柔らかさが後を追ってきます」(杉浦さん)

この表面が独特ですね。

「周りが灰色なのは、害虫を寄せ付けないようにするためにポプラの灰をまぶして置いておくからです。これは味わいを整えるという意味もあって、この状態で熟成を進ませます。ヤギ独特の風味があるんですが、ヤギ乳のチーズとしてはやさしい味わいです。よく知られたチーズですが、ここまで熟成したものはちょっとない」

これもまたいかにも日本酒が合いそうに見えます。

「このチーズは通常は同じ地域のロワールのソーヴィニヨン・ブランと合わせるのが鉄板なんですけど、今回は長野県中川村の『今錦 特別純米生原酒 おたまじゃくし』を合わせてみました。原酒なんで少しアルコール度が高めの18.5%です。美山錦を使い、すごくすっきりと洗練された味わいに仕上がっていて、白ワインにどこか通ずるところもありますが、決定的な違いは日本酒独特の甘味があるということです。チーズの塩味と日本酒の甘味。そのコントラストから入って、このチーズが乳酸発酵していて、酒が生原酒なので菌が生き生きしていて少し乳酸っぽいニュアンスもあることから、余韻のところで双方がつながってきます」

遠く離れたヨーロッパのチーズと日本酒が、良く合うのが不思議ですね。

「本当は地元同士で合わせるのが一般的ですが、ヨーロッパのものと極東の酒がなぜか合う。これを見つけたときに、発酵ということでつながるのが面白いなあ、と思いました。ウチはワインバーだと思われがちですが実は『チーズバー』なので(笑)、チーズの面白い合わせ方として、これもぜひ提案したいなと思っています」

マスカルポーネと蜂蜜、イチジク、三州三河みりん

マスカルポーネと蜂蜜、イチジク、三州三河みりん
「イタリア北部のトレンティーノ・アルト・アディジェという地方で作られているマスカルポーネです。マスカルポーネは、乳脂肪分が通常のチーズは40%ぐらいなのに対して80%ぐらいある濃厚なチーズ。すごくミルキーで常温のアイスクリームといった味わいです。ただアイスクリームほどの甘味はないので、これにニュージーランドのクローバーの蜂蜜を少し加えました。ハチミツとマスカルポーネは相性が良くて、みりんの甘味は蜂蜜と似ている。干したイチジクの酸化熟成感はみりんに通じるものがあります。濃厚さ、甘味、酸化熟成感。この3つのマリアージュと、食感を楽しめる組み合わせです」

みりんとチーズも相性がいいのでしょうか。

「この『三州三河みりん』はとてもいい。デザートワインのようで、ソムリエの試験で出てもみりんだとはなかなか思われないかも知れません。マスカルポーネは、甘めのスパークリングワインやデザートワインと合わせることが多いんですね。ですから、みりんとマスカルポーネの相性は抜群です。でも蜂蜜は要らなかったかも。それくらいみりんが甘く濃厚で、マスカルポーネのミルクのコクとよく合う。この組み合わせは今日の一番のお勧めです」

多様なチーズと日本酒、最後にはみりんまで。杉浦さんのお勧めを試してみるのもいいし、自分なりのマリアージュを探索するのもワクワクしてきます。皆さんもぜひチャレンジしてみてください。
 

取材ご協力いただいた杉浦さんのお店はこちら

内山三丁目チーズバー

[ 名古屋市千種区三丁目1-17水谷ビル101 ]30カ月熟成コンテのほか、他ではなかなか味わえない珍しいチーズが入れ替わりながら常時10種類以上。夜な夜なチーズ好き、ワイン好きの紳士淑女が集まってきます。「チーズって買おうとするとブロックだったりしてなかなか手が出しづらく、新しいものに出会うのが難しいですよね。チーズもお酒も、ここでしか味わえない組み合わせのものを試して、実験室みたいに使ってほしいと思っています」(杉浦さん)。

内山三丁目チーズバー
※記事の情報は2018年4月20日時点のものです。
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