【素晴らしきウォッカの世界】本場の飲み方やロシア式簡単おつまみも!
読めばウォッカが分かる!好きになる! 製造方法からウォッカの起源、ロシア流の飲み方やウォッカを使ったカクテルレシピ、おすすめおつまみまで。謎に包まれたウォッカというお酒の魅力と楽しみ方を専門家に聞きました。
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一方世界に目を向ければ、このお酒を国民酒とするロシアや東欧の国々ではウォッカをストレートで楽しんでいる人も多いようです。
ウォッカというお酒の魅力は一体どこにあるのか? 日本ウォッカ協会会長でロシアの酒専門ネットショップ「ヴォードチカ」店長、遠藤洋子さんにお話を聞きました。
ウォッカ案内人
遠藤 洋子さん
ウォッカとはおいしさを讃える酒ではない
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穀物などの原料を蒸留して取り出したエチルアルコールに水を加え、さらにそれを何度も濾過して雑味を除いていく。ほんの少しだけ特徴づけのために甘味や風味を加えますが、それも隠し味程度。ウイスキーなどとは異なり、基本的に熟成もさせません。だから見た目もふつうは無色透明です。
透明で純度の高いウォッカを一気にクイッとあおると喉がカーッと熱くなり、その後に何ともいえない爽やかさがやってくる。そうやって楽しむのがこのお酒の一番の醍醐味。ワインや日本酒のように舌で転がしたり、じっくり味わうお酒ではないんです。
だからロシア人がウォッカを評価するときには“うまいウォッカだ”とは言いません。“いいウォッカだ!”と言います。彼らにとって「いいウォッカ」とは、味も風味もクリアで不純物が感じられず、いくら飲んでも(限度はありますが)悪酔いしないものを指します。
【ウォッカの製法】穀物を蒸留、加水、濾過したもの
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この時点でエチルアルコールの濃度は96度くらいなので、水を加えて40度くらいにします。40度がアルコール特有のとがった風味を落ち着かせるのに最適かつ体にも良いということで、ウォッカのアルコール濃度は40度が標準となっています。
さらに純度を高めるため、加水したアルコールを濾過します。この濾過処理をはさむことが、他のスピリッツにはないウォッカ特有の工程です。濾過の方法も様々あるのですが、ロシアでは白樺の活性炭がよく使われます。炭は吸着性があって不純物を取り除いてくれますし、炭特有のほのかな香りもつき、ウォッカの風味を良くするのです。
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その後、それぞれの銘柄のオリジナリティを出すために、ほんの少し砂糖シロップやハチミツを加えて甘味をつけたり、クランベリーや柑橘類から抽出したアロマスピリッツを加えたりして風味付けをします。造り手のセンスの見せどころ、と言ってもいいでしょう。でもピュアウォッカはあくまでクリアな味と香りが大事なので、甘みや風味を付けると言っても、ほんの微かに感じる程度です。
このように、エチルアルコールの等級や加える水の質、濾過にかける手間ひま、隠し味に何をどれくらい加えるのかによって銘柄の品質や個性が決まります。
【ウォッカの歴史】起源から最近のトレンドまで
今や世界中で造られているウォッカですが、最初にいつ、どこでこのスピリッツが誕生したのか、実ははっきりとした文献や証拠が残っているわけではありません。
もともとはヨーロッパからもたらされた蒸留技術を用いて、ロシアや東欧の人たちはお酒を造って発展させてきたのですが、あまりに暮らしの一部として当たり前のように造っていたので、わざわざ記録してなかったようなんです。
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けれど1977年にポーランドが「我が国こそウォッカの生みの親である」と主張したため、ポーランドとロシアとの間で出生地をめぐって論争になりました。
それでロシア政府がパフリョプキンという歴史家に研究を依頼した結果、「15世紀半ばにモスクワにあった修道院の修道士たちがライ麦を蒸留した『穀物ワイン』を造り、それがウォッカの原型になった」という結論に至りました。ポーランドは、それより以前にウォッカを造っていたという証明ができなかったため、1982年に国際調停裁判所により「ウォッカの起源はロシアである」と認定されたのです。
修道院でウォッカを造っていたというのは、もちろんお酒自体を楽しむためもあったでしょうが、当時は医療目的としてもウォッカを使っていたようです。ウォッカ(Vodka)は、ロシア語で「水(Voda)」の愛称形で、もともと“生命の水”と呼ばれていたことに由来することからも、昔の人たちにとっては貴重な薬だったことが分かります。
■アメリカで「スミノフ」誕生
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ウラジミール・スミノフの父ピョートル・スミノフは帝政ロシア時代から「ロシアのウォッカ王」と呼ばれ、木炭による濾過技術を発明して現在のウォッカを完成させた人物です。
息子であるウラジミールは亡命先のパリでウォッカの製造を再開しましたが、その後アメリカに亡命していたロシア人ルドルフ・クネットがウラジミールから濾過技術と商標権を買い取ることになります。こうしてアメリカで「スミノフ(smirnoff)」というブランドが誕生したわけです。その後プロモーションなどもうまく行き、今や世界で一番売れているウォッカブランドとなりました。
ちなみに、現在ロシアではスミノフ家の末裔が「smirnov」というウォッカを製造していますが、アメリカ生まれの「smirnoff」とは全く別ブランドです。
■現在のウォッカ事情
このように世界で飲まれるようになったウォッカですが、本国ロシアでは最近若い人を中心にウォッカ離れが進んでいます。よりアルコール度数の低いワインやビールにシフトしているようです。特にロシア産ビールの品質が高くなってきたため、ビール人気にウォッカ市場がおされているのでしょう。
一方最近のトレンドとして世界的にプレミアムウォッカやクラフトウォッカの人気が高まってきています。
プレミアムウォッカとは高価格帯のウォッカのことで、純度をどこまでも高めるため蒸留と濾過を何度も繰り返して造られます。
なかには加水の際に氷山の水を使ったり、濾過素材として銀や水晶を用いたもの、ボトルやパッケージに相当お金をかけているものもあります。
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クラフトウォッカはハンドメイドで造られる少量生産のウォッカのことで、比較的規模の大きなメーカーもあえてクラフトウォッカを造って希少価値を売りにしたりしています。
プレミアムウォッカもクラフトウォッカも、ふつうはカクテルベースとしてではなく、ウォッカそのものを味わうためストレートで飲まれます。
【ウォッカの種類】ピュアウォッカとフレーバードウォッカ
ピュアウォッカが隠し味程度に甘味や香料を加えるのに対し、フレーバードウォッカは香りや色が前面に出てきます。
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フレーバードウォッカは、柑橘類の果皮で香りづけしたものや唐辛子などスパイスの浸酒を加えたものまで様々。ストレートで飲むのはもちろん、その香りを生かしてカクテルにも使われます。
【ウォッカの飲み方①】冷やしてストレートで楽しむ
■ロシア流おいしい飲み方
ウォッカをボトルごと冷凍庫に入れて-20℃くらいに冷やしておくと、ウォッカが完全に凍らずにトロっとした感じになります。こうして飲むと口当たりがまろやかになって、のどごしスムース、芳醇なうまみが出てくるんです。
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本場では50mlくらいのショットグラスを使いますが、体質的にアルコールにあまり強くない日本人には50mlを一気にあおるのは結構ヘビーです。15ml程度の小さめグラスを使うと良いでしょう。
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ちなみにロシアの宴会では、ウォッカを飲むときには「ダ・ドゥナー(底まで)」と掛け声をかけて、みんな一斉にグラスをあげ、底まで一気に飲み干します。そして空になったグラスをカツンとテーブルに置くのがおきまりです。
ウォッカを飲むときは悪酔い防止のために、テーブルの上に水を入れたピッチャーを置き、合間にたくさん水を飲むようにしましょう。現地ではレモンスライスに砂糖を少しのせてむしゃむしゃ食べたりもします。
ストレートで飲むのにおすすめの銘柄
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「クバン」とはその昔コサック兵たちが大活躍したクバン川流域にある地域のこと。肥沃な大地に恵まれ良質なライ麦が収穫できることからコサック兵たちが古くから穀物ワイン(ウォッカの原型)を作っていて、そのおいしさはかのピョートル大帝も取り寄せるほど。「クバンスカヤ」は当時のレシピを踏襲して造られています。フレーバードウォッカに分類されるため微かに柑橘類の香りがし、清涼感あふれる口当たりです。
・ベルーガ
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ロシアを代表するプレミアムウォッカの1つ「ベルーガ」。キャビアで有名なチョウザメの名前を冠し、ボトルにもチョウザメがデザインされた見た目にも高級感あふれるウォッカです。大麦モルトと西シベリアの天然水を原料につくられていて、口当たりがとてもまろやか。ウォッカ初心者の方にも飲みやすいと思います。
・スタルカ
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これはフレーバードウォッカの代表格で、ウォッカをベースにリンゴと梨の葉の浸酒、ワイン(ポートワイン風味)、ブランデーなどをブレンドしています。香り高くコクのある深い味わいで、グラスに映える美しい琥珀色も魅力です。食中酒としてはもちろん、チョコレートなどとともに食後酒としてもおすすめです。
【ウォッカの飲み方②】家で楽しめる簡単カクテル
・ウォッカリッキー
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材料
- ウォッカ 適量
- レモン(またはライム) 1/8個
- 炭酸水 適量
- 氷 適量
作り方
- 氷を入れたグラスにレモンまたはライムを数滴搾り入れ、皮はグラスの中に落とす。
- ウォッカを適量入れ、冷やした炭酸水でグラスを満たし軽くステアする。
・モスコーミュール
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材料
- ウォッカ 45ml
- ライム 1/4個
- ジンジャービア(またはジンジャーエール) 90ml
- 氷 適量
作り方
- 氷を入れたグラスにウォッカを注ぎ、ライムを搾り入れ、皮はグラスの中に落とす。
- ジンジャービア(またはジンジャーエール)でグラスを満たし、軽くステアする。
・ブラッディメアリー
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ピリ辛でパンチのあるペルツォフカ
材料
- ウォッカ 適量
- トマトジュース 適量(ウォッカの3倍)
- 塩、タバスコ、コショウ、レモン 適量
- 氷 適量
作り方
- 氷を入れたグラスにウォッカを注ぎ、トマトジュースを入れてステアする。
- 好みで塩やタバスコ、コショウで調味したり、レモンをグラスに飾ってもよい。
・コーヒーウォッカ
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材料
- ウォッカ 1瓶(500ml)
- コーヒー豆 30~40g
作り方
- コーヒー豆を入れる分だけウォッカを減らしたボトルに好みのコーヒー豆を入れる。
- 室温で3日間寝かせる。
- その後冷凍庫に入れて冷やし、小さめのグラスで一気にあおる。
・ウォッカレモン
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フレーバードウォッカ「リモンナヤ」
材料
- ウォッカ 500ml
- レモン(防腐剤・ワックス不使用) 1個
- 砂糖 80~100g
作り方
- レモン1個をよく洗い、皮ごとすりおろす。
- すりおろしたレモンを広口瓶に入れ、砂糖を加えて混ぜ、ウォッカを注ぎ入れる。
- そのままフタをして2時間~1日冷蔵庫で寝かせる。
- ピッチャーやデカンタに移し、(皮や種が気になるなら茶漉しなどで濾して)ストレートやオンザロック、炭酸割りで飲む。
【ウォッカのおつまみ】ウォッカの合間にザクースカをたっぷり
ザクースカは魚料理や肉料理、温かいもの、冷たいものなどなんでもあり。例えば、スモークサーモン、ニシンの塩漬け、サーロと呼ばれる豚の背脂、ボルシチ、ローストビーフ、ピクルスなど。日本の家庭料理でいうと、から揚げやイカフライなどの揚げ物なんかはウォッカに合うと思います。
せっかくなので家で簡単に作れるロシア式ザクースカのレシピを3品ご紹介しましょう。
・きゅうりのロシア漬け
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材料
- きゅうり 4~5本
- にんにく 1片
- ディル 2枝
- ローリエ 1枚
- 粒こしょう 10粒
- 塩 大さじ2・1/2
- 砂糖 大さじ 1/2
- 酢(発酵を促すため) 大さじ1/2
- 水 500ml
作り方
- 煮沸した清潔なガラス瓶に、瓶のサイズに合わせて切ったきゅうり、スライスしたにんにく、ディル、ローリエ、ブラックペッパーを詰める。
- 鍋に水を沸騰させて、塩、砂糖、酢を入れて溶かす。
- ②を熱いうちに①のガラス瓶に注ぐ。
- ガラス瓶を2~3日室温に置いて発酵させる。乳酸発酵がすすみ漬け汁が白濁してきたら食べごろ。その後は冷蔵庫に入れて1~2か月保存可能。
・たらこクリームチーズのカナッペ
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材料
- たらこ(明太子でも) 1本
- クリームチーズ 50g
- 黒パンやクラッカー 適量
- レモン(好みで) 1/8個
作り方
- たらこの薄皮を取り、クリームチーズとよく混ぜる。
- 黒パンやクラッカーに載せ、好みで小さいレモンスライスを載せて食べる
・セリョートカ(ニシンの塩漬け)
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材料
- ニシン 2匹分
- 塩 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- 玉ねぎ 適量
- オリーブオイル 適量
- ディル(あれば) 適量
作り方
- ニシンのウロコ、頭、尾を取り、三枚におろす。身の部分のみ使う。
- ニシンの身に塩と砂糖を混ぜたものをまぶしてラップで包み、冷蔵庫で一晩寝かせる。
- ラップからニシンを取り出して、頭の方から皮をむく(薄皮は残ってOK)。
- ニシンを適当な大きさに切り、スライスした玉ねぎの上にのせ、オリーブオイルをかけ、あればディルを散らす。
めくるめくウォッカの世界、いかがでしたか? ウォッカが実は、家飲みにぴったりのお酒だということがお分かりいただけたかと思います。
遠藤さんいわく「ウォッカはロシアが発祥ですが、今世界にはポーランド産や欧米産をはじめ多くの品質の良いウォッカがあり、ここ日本でも造られています。ぜひ色んなウォッカと出会って、お気に入りをみつけてほしいです」とのこと。
遠藤さんが店長をお務めのロシアの酒専門ネットショップ「ヴォードチカ」では、今回ご紹介したウォッカも取り扱っています。気になる一本を冷凍庫でキンキンに冷やして、「ダ・ドゥナー!」の掛け声とともに楽しんでみてください。
この方にお聞きしました
遠藤洋子さん
株式会社プロムテック・ビズ代表取締役としてロシア産ウォッカの輸入に携わる傍ら、ロシアの酒専門のネットショップ「ヴォードチカ」を経営。2019年には「日本ウォッカ協会」を設立し代表を務める。BSA認定スピリッツアドバイザー
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※記事の情報は2020年5 月28日時点のものです。
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